発信者情報開示請求を著作権侵害で受けた!?流れと対処法を専門弁護士が徹底解説!
最終更新日: 2023年12月02日
- 著作権侵害を理由に発信者情報開示請求を受けた
- 意見照会書にはどのように対応すれば良いの?
- 著作権を侵害したらどのような責任を問われるの?
近年、BitTorrentやその互換ソフトを始めとするP2P方式のファイル共有ソフトを利用して著作権侵害をしてしまった方に、著作権者が法的措置をとることが増えています。著作権法違反で逮捕されたというニュースや、多額の損害賠償を命じる判決が出たというニュースを見聞したことがある方もおられるでしょう。
軽い気持ちでアダルト動画や漫画・アニメをダウンロードして楽しんでいたところ、ある日突然、発信者情報開示請求を受けると背筋が凍る思いをします。
今回は、著作権侵害をしてしまって発信者情報開示請求受けた場合について、その流れや対処法について専門弁護士が徹底解説します。
発信者情報開示請求を著作権侵害で受ける理由
まずは、BitTorrentなどのファイル共有ソフトを使用するとなぜ著作権侵害となってしまうのか、発信者情報開示請求とはどのようなものなのかについてご説明します。
なぜ著作権侵害になるのか
著作権者には公衆送信権(送信可能化権、著作権法23条)、つまり不特定多数の人に自信の著作物を発信する、発信可能な状態に置く権利があります。そのため、無断でインターネット上に他人の著作物を送信可能な状態に置くと、著作権を侵害することになります
BitTorrentなどのP2P方式のファイル共有ソフトは、ファイルをダウンロードすると自身もそのファイルを他のユーザーにアップロードする主体となります。そのため、AVやアニメなど著作権で保護された作品をダウンロードすると、その作品をアップロードもすることになり、著作権を侵害してしまうのです。
なお、アップロードだけでなくダウンロードすること自体も著作権侵害になることがあります。
(公衆送信権等)
第二十三条 著作権者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。
2 著作権者は、公衆送信されるその著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利を専有する。
発信者情報開示請求とは?
著作権を侵害されたことを知った著作権者は、加害者に対して刑事告訴や損害賠償請求などの法的措置をとることができます。法的措置をとるには、加害者の氏名や住所などを特定する必要があります。
この加害者特定のための手続きとして、著作権者は、発信者情報開示請求を行います。
著作権者は、「P2PFINDER」などのネットワークの監視システムを利用して、加害者が使用したIPアドレスを特定します。そして、そのIPアドレスを保有するプロバイダに対して、そのIPアドレスを使用した契約者の氏名や住所などの情報を開示するよう求めます。これが発信者情報開示請求というものです。
このように、発信者情報開示請求は、その後に続く刑事告訴や損害賠償請求の準備行為です。そのため、発信者情報開示請求をされたときは、その後に法的措置を取られることを想定した対応が必要となります。
発信者情報開示請求を著作権侵害で受けたら?
発信者情報開示請求を受けたことを知るのは、プロバイダから「発信者情報開示請求に係る意見照会書」を受領したときです。著作権を侵害して、プロバイダから「発信者情報開示に係る意見照会書」が届いたらどのように対処すれば良いのでしょうか。
ここでは、発信者情報開示請求を受けたときの流れや法的責任、対処法についてご説明します。
- P2Pファイル共有ソフトで発信者情報開示請求を受けた後の流れ
- 複数回の発信者情報開示請求が来ることも
- 民事責任の追及
- 刑事責任の追及
- 発信者情報開示請求に対する対応
発信者情報開示請求を受けた後の流れ
著作権者がプロバイダに対して発信者情報開示請求をすると、プロバイダは、開示を求められている氏名、住所等の情報を開示しても良いかどうか意見を確認する「発信者情報開示に係る意見照会書」を契約者に送ります(プロバイダ責任制限法第4条2項)。
契約者が発信者情報開示に同意すればプロバイダから請求者に発信者情報が開示されます。他方、発信者情報開示に同意しなければ、プロバイダは同意しない理由も踏まえて開示するかどうか判断します。
プロバイダが発信者情報の開示をしなかった場合、著作権者は発信者情報開示を求めて訴訟を提起します。BitTorrentの場合、ほとんどの場合、裁判所は発信者情報開示を認めます。
また、P2PFINDERなどの信頼性のあるP2Pネットワークの監視システムで権利侵害とIPアドレスの特定がなされている場合には、契約者が発信者情報開示に同意しなくても、プロバイダは自身の判断で発信者情報を開示することもあります。
プロバイダ責任制限法第4条2項
開示関係役務提供者は、前項の規定による開示の請求を受けたときは、当該開示の請求に係る侵害情報の発信者と連絡することができない場合その他特別の事情がある場合を除き、開示するかどうかについて当該発信者の意見を聴かなければならない。
複数回の発信者情報開示請求が来ることも
株式会社ケイ・エム・プロデュースや株式会社Exstudioなどが著作権を有するAVをダウンロード、アップロードし、発信者情報開示請求を行うケースは多くあります。
BitTorrentのユーザーは、多数の作品をダウンロード(アップロード)し、多数の著作権侵害を犯してしまっていることが通常です。
そのため、多数の著作権侵害を犯してしまっていることから、ある著作権者と和解が成立してもその後、他の作品について発信者情報開示請求を受けることがあります。そのため、当該著作権者の作品全てを対象とした示談を検討すべき場合もあります。
民事責任の追及
発信者情報開示請求によって加害者が特定されると、民事手続で損害賠償請求がなされます。著作権侵害による損害額の計算方法について法律の規定があります(著作権法第114条1項)
著作権者は、ダウンロード回数×販売利益(又は販売価格)という計算式によって数百万円、数千万円という高額な損害賠償請求がなされます。このような計算になることから人気作品ほど損害賠償金額は高くなってしまいます。
刑事責任の追及
また、民事責任だけでなく、捜査機関に捜査いて刑事罰を科すことを求める刑事告訴がなされることもあります。逮捕されると20日間以上もの長期にわたって身柄拘束される可能性があります。
そして、起訴されると10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金又はこれを併科され前科がつきます(著作権法第119条1項)。
発信者情報開示請求に対する対応
それでは、「発信者情報開示請求に係る意見照会書」を受領したら、どのように対処したらよいのでしょうか。
先ほどご説明しましたとおり、BitTorrentのケースについては、発信者情報開示不同意としても結局は発信者情報開示がなされてしまいます。そして、ご自身がダウンロード(アップロード)したのではないことを証明できない限りは高額な損害賠償を課されてしまいますし、逮捕・起訴される恐れもあります。
そこで、BitTorrentのケースについては、発信者情報開示に同意をした上で、できる限り穏便に著作権者と示談できるよう交渉していくことが得策といえます。
なお、「発信者情報開示に係る意見照会書」を受領した際に、驚いて直ぐにBitTorrentを削除してしまう方もおられますが、ご自身に有利な証拠が残っている可能性がありますので、BitTorrentを起動させないよう注意しつつ、削除はしないようにしましょう。
AVの著作権侵害による発信者情報開示請求
ここ数年、AVメーカーによる発信者情報開示請求が増えています。ビットトレントなどのファイル共有ソフトでAV(アダルトビデオ)を違法にダウンロードしている方が多いようで、AVメーカーが対策として、損害賠償請求や刑事告訴のために発信者情報開示請求をするようになったのです。
なお、このように発信者情報開示請求をしているのはAVメーカーに限らず、アニメや漫画の作者も同様の対策をとっています。
AVメーカーの対応
先ほども例にあげましたケイ・エム・プロデュースやEXstudioなどのAVメーカー各社は、外部の調査会社に依頼をして自社の作品について著作権侵害がなされていないか継続的に監視しています。そして、著作権侵害の調査結果が上がってくると、顧問弁護士が発信者情報開示請求をする流れとなっています。
この調査結果は信頼性が高いので、裁判所はほぼ全件で発信者情報開示を命じる決定を出しています。
ところで、AVメーカーから発信者情報開示請求を受けた方の中には、AVメーカーによる請求だから怪しい、何かの詐欺ではないかと考える方もおられるようですが上記のとおり正当な、適法な請求です。
怪しいから放っておこうと考えて放置したり、開示に同意しない回答をしたところ、刑事告訴をされて、後日、警察が著作権侵害の容疑で家宅捜索に来たというケースもしばしばあります。このような事態にならないよう、しっかりと対応していく必要があります。
正しい対応は?
上記のとおり著作権侵害は成立し、裁判所は発信者情報開示請求を認めてしまいますから、意見照会書には同意の回答をして自主的に発信者情報開示に応じた方がその後がスムーズです。
ただし、AVメーカーからの請求の中には著作権侵害ではなく、肖像権侵害やパブリシティ権侵害とあるケースもあり、その場合は権利侵害が成立しないケースもありますので、同意の回答をすべきかどうかは専門弁護士に確認をしてください。
回答書を送ったままにしておくと民事裁判や刑事告訴に進む恐れがありますので、それと並行して弁護士に依頼をして、AVメーカーとの示談交渉を進めていきます。概ね1か月前後で示談が成立することが多いです。
なお、示談成立後に追加で複数の発信者情報開示請求が届くこともありますから、そのような事態も考慮して示談をします。
発信者情報開示請求を著作権侵害を理由に受けた事例
最後に、BitTorrentを利用して著作権侵害を理由に発信者情報開示請求を受けた事例を3つご紹介します。
- P2Pファイルソフトで音楽をダウンロードした事例
- P2PファイルソフトでAVをダウンロードした事例
- P2Pファイルソフトでアニメなどをダウンロードした事例
P2Pファイルソフトで音楽をダウンロードした事例
A様はBittorrentを利用して楽曲をダウンロードし、アップロードした罪で著作権者から刑事告訴され、50万円の罰金刑を受けました。その後、著作権者から損害賠償請求を受けたことから当事務所に依頼をしました。
数百曲の楽曲をアップロードしていたことから、訴訟になったときには相当高額な損害賠償を命じられることが懸念されました。そこで、穏便に示談を成立させるよう著作権者と交渉を重ねた結果、最終的に、50万円を下回るの示談金にて示談が成立しました。
この事例のように刑事責任が確定しても、民事責任も追及されることがあります。その逆も然りです。示談交渉を通じて民事責任と刑事責任の両方を一度に解決することを目指すべきです
P2PファイルソフトでAVをダウンロードした事例
B様はBittorrentを利用してAVを多数ダウンロードして視聴していました。するとある日、プロバイダから「発信者情報開示請求に係る意見照会書」が届き、その後のことが不安で当事務所に依頼しました。
AVのダウンロード歴は長く、その間に多数の著作権侵害をしていたことから、高額な賠償金額になることが懸念されましたので、できる限り低額で著作権者と示談することを目指しました。
著作権者と交渉を重ねた結果、
P2Pファイルソフトでアニメなどをダウンロードした事例
C様は、Bittorrentを利用してアニメや漫画作品を多数、ダウンロードしていたところ、プロバイダから「発信者情報開示請求に係る意見照会書」を受け取り、慌てて当事務所に依頼しました。
著作権者からは数千万円の損害賠償請求をされました。そして、刑事告訴も辞さないという態度を示されたことから、それを回避すべく速やかに示談を成立させることが必須でした。
示談交渉は難航しましたが、最終的には100万円以下の示談金で示談が成立しました。
まとめ
以上、著作権侵害をしてしまって発信者情報開示請求受けた場合について、その流れや対処法について解説しました。
発信者情報開示を受けたということは、その後に損害賠償請求や刑事告訴をされるということです。
発信者情報開示請求の手続きが進むにつれて、権利者に支払う金額も高額になっていく可能性が高いため、早期に最善の対応をすることが重要です。
Bittorrentなどのファイル共有ソフトを使用してプロバイダから発信者情報開示請求の意見照会書が届いたという方は、回答期限が迫っていますので、一日も早く、当事務所の専門弁護士に無料相談をしましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。