「立退き」を求められたら?取るべき行動と弁護士に相談するメリット

2025年11月13日

「立退き」を求められたら?取るべき行動と弁護士に相談するメリット

「突然、大家さんから立退きを求められた…どうすればいいのだろう?」

このような状況に置かれ、不安を感じている方も少なくないでしょう。住み慣れた家や、事業を営んできた大切な場所を失うかもしれない――立退き問題は、単なる引っ越しではなく、生活や仕事の基盤に関わる重要な問題です。

立退きを求められた場合でも、慌ててサインをしたり、提示された条件をそのまま受け入れたりする必要はありません。
日本の法律(借地借家法)は、賃借人の権利をしっかりと保護しています。

ただし、立退きの「正当事由」や「適正な立退き料」の判断は、個人で行うには難しい場合が多いものです。
本記事では、立退きを請求された際に知っておくべき基本と、専門家に相談する意義について解説します。

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
宅地建物取引士

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立退き請求があっても、すぐに退去しなくていい理由

「正当事由」がなければ立退きは認められない

大家側が契約の更新を拒んだり、解約を申し入れたりするには、「正当事由」が必要です。
建物の老朽化や自己使用の必要性などが考慮されますが、裁判所はこれらを厳格に判断します。

主な判断要素:

  • 建物の使用を必要とする事情(貸主・借主双方の事情)
  • 賃貸借の経過や利用状況
  • 提示された立退き料の金額

単に「古くなったから」という理由だけでは、正当事由が認められないケースもあります。
ご自身の状況がこれに該当するかは、法的な観点から慎重に確認することが大切です。

立退き料は交渉次第で大きく変わる

立退き料は、正当事由を補う要素として支払われ、引っ越しや営業損失などの負担を補填するためのものです。
一律の基準はなく、個々の事情や交渉の進め方によって金額は大きく異なります。

目安として:

  • 居住用物件:家賃6〜12か月分程度
  • 事業用物件:より高額になる場合が多い

提示された金額が必ずしも妥当とは限らないため、冷静な判断が必要です。

弁護士に相談するメリット

立退き交渉は、法律知識だけでなく、交渉力と冷静な判断が求められます。弁護士に相談することで、次のような利点があります。

メリット:法的根拠に基づく適正な主張ができる

弁護士は、大家側の主張する「正当事由」の妥当性を法的に精査し、過去の裁判例などを踏まえて交渉を進めます。

感情的な対立を避けつつ、法的根拠に基づき、立ち退き料の大幅な増額や、立ち退き自体を拒否するなど有利な条件を引き出すことが可能になります。

メリット:煩雑な手続きを任せられる

書面の作成や、大家・代理人との交渉など、手続きは複雑で心理的負担も大きいものです。
弁護士が窓口となることで、当事者自身の負担を大きく減らすことができます。

メリット:将来の裁判にも備えた対応ができる

交渉がまとまらず、調停や訴訟に発展することもあります。弁護士は、交渉の初期段階から、万が一裁判になった場合を想定し、必要な証拠の収集や法的準備を的確に行います。

初期対応の遅れや間違いが、後の交渉や裁判で不利に働くリスクを防ぐため、早めの相談が望まれます。

費用面の不安について

「弁護士に依頼するのは費用が高そう…」と心配されている方もいらっしゃるかもしれません。

相談料・着手金・成功報酬などの費用体系は事務所ごとに異なりますが、初回相談を無料としているところもあります。まずは自身の状況を整理し、具体的な見積もりを確認することから始めると良いでしょう。

費用対効果の観点からも、早期の相談が有益です。

よくある質問(FAQ)

Q:大家さんから口頭で「出ていってほしい」と言われました。これは法的に有効な立退き請求になりますか?

A:口頭での請求だけでは、法的に有効な立退き通知とは認められない可能性が高いです。

借地借家法では、契約の更新拒否や解約の通知は「書面」で行うことが原則です。特に、期間のある契約では、契約期間満了の1年前から6か月前までの間に通知する必要があります。

Q:立ち退き理由が「建物の老朽化」だと言われました。この理由だけで正当事由として認められてしまうのでしょうか?

A:「老朽化」は正当事由の一つですが、それだけで立退きが認められるとは限りません。

裁判所は、

  • 建物の老朽化の程度
  • 大家さんが建物を使う必要性
  • 借主(あなた)が住み続ける必要性

などを総合的に判断します。

また、立退き料の提示なども重要な判断材料になります。
単に「古いから」というだけでは不十分で、危険性や耐震性などの具体的な証拠が求められます。

Q:大家さんが提示してきた立退き料が相場より大幅に低いと感じています。拒否し続けても問題ありませんか?

A:はい、提示された立退き料に納得がいかない場合は、拒否し、増額交渉を行う権利があります。

立ち退き料には法律上の決まった金額はなく、個別の事情や交渉で決まるものです。

一般的な目安は、

  • 居住用:家賃の6〜12か月分程度
  • 事業用:より高額になることが多い

安易に低い金額で合意してしまうと、後から変更することはできません。

Q:立ち退き料の交渉中に、家賃を支払う必要はあるのでしょうか?支払いを止めると不利になりますか?

A:はい、交渉中でも家賃は必ず支払う必要があります。

家賃を滞納すると、借主の債務不履行となり、大家さん側の立ち退き請求を有利にしてしまう可能性があります。

仮に家賃を3か月以上滞納した場合、債務不履行を理由に契約解除が認められる可能性が高く、その場合は立退料は必要ありません。立ち退き交渉を有利に進めるためにも、家賃は期限どおりに支払い続けましょう。

Q:引っ越し先が見つかっていません。立ち退き期限を延長してもらうことはできますか?

A:はい、立ち退き期限(明渡期限)の延長も交渉で求めることができます。

正当事由をめぐる交渉では、「いつ退去するか」も重要なポイントです。
特に、借主側に落ち度がない場合は、新しい住まいを探すための期間を考慮してもらえることがあります。

弁護士が交渉に入ることで、「合理的な引っ越し準備期間」を法的根拠に基づいて主張できるため、期限の延長を認めてもらえるケースもあります。

期限が迫っている場合でも、早めに相談すれば選択肢が広がります。

まとめ

大家から立退きを求められたとき、焦って行動するのは避けましょう。

賃借人の権利は法律で守られています。専門家の助言を得ながら、冷静に対応することが、安心して次の一歩を踏み出すための近道です。

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