労災の休業補償はいつからいつまで?具体例で早わかり!

最終更新日: 2026年04月01日

労災休業補償はいつからいつまでもらえるの?手続や流れを徹底解説!

仕事中の怪我や通勤中の病気で、やむを得ず休業せざるを得なくなったとき、収入の不安は計り知れません。

特に、ご家族を支える立場にある方にとっては、「いつまで給料がない状態が続くのか」「補償はいくらもらえるのか」といった疑問が、療養への大きな負担となることでしょう。

このページでは、労災による休業補償が「いつからいつまで」支給されるのか「いくら」もらえるのか、そしてその申請手続きは「どうすればいいのか」といった、休業中の生活に関するあらゆる疑問に対し、具体例を交えながら専門家がわかりやすく解説します。

本記事を最後までお読みいただくことで、休業中の経済的な見通しをしっかりと立て、安心して療養に専念するための具体的な道筋が見えてくるはずです。

あなたの不安を少しでも軽減し、一日も早い社会復帰をサポートできるよう、最新の情報と実践的なアドバイスを提供してまいります。

目次

労災の休業補償はいつからいつまで?支給期間の全体像

労災による休業補償の全体像を、まずは視覚的に理解できるようご紹介します。

いつ怪我や病気が発生し、そこからいつ休業補償の給付が始まり、どのようなケースで支給が終わるのか。

以下の図解と合わせて、支給期間の全体的な流れを把握することで、ご自身の状況と照らし合わせながら、この記事を読み進める上での基礎情報としてご活用ください。

労災の休業補償は、業務上または通勤中の傷病により休業を開始した日から数えて、最初の3日間は待機期間となり、給付の対象外です。

給付が開始されるのは、休業4日目からとなります。

その後、原則として治癒(症状固定)するまで、または傷病(補償)年金への移行といった特定の条件を満たすまで支給が継続されます。

支給期間に明確な上限はありませんが、状態の変化に応じて給付内容が変わる可能性がある点も重要です。

そもそも労災の休業補償(休業給付)とは?

労災の休業補償(休業給付)とは、仕事中や通勤中に怪我や病気に見舞われ、その療養のために働けなくなり、賃金を受け取れなくなった労働者の生活を国が保障する制度です。

この制度の大きな目的は、単に金銭的な補償をするだけでなく、被災した労働者の方が安心して治療に専念し、一日も早く社会復帰できるように支援することにあります。

たとえば、建設現場で資材の運搬中に転倒して骨折し、医師から数週間の休業が必要と診断されたとします。

この場合、休業補償(休業給付)は、あなたが働けない期間の収入を補い、生活の不安を軽減するためのものです。

正式名称としては、次のように呼び分けられます。

  • 業務中の怪我や病気(業務災害)の場合:「休業補償給付」
  • 通勤中の怪我や病気(通勤災害)の場合:「休業給付」

ただし、一般的にはどちらも「休業補償」という言葉で認識されています。

休業補償が支給されるための3つの要件

労災の休業補償(休業給付)を受け取るためには、次の3つの要件をすべて満たしている必要があります。

ご自身の状況と照らし合わせながら確認してみてください。

  • 1. 業務上の事由または通勤による傷病の療養のためであること
    仕事中や通勤中に発生した怪我や病気であることが大前提です。たとえば、現場で足場から誤って転落して骨折し、その治療のために休業する場合などがこれにあたります。プライベートでの怪我や病気は対象外です。
  • 2. その療養のために労働することができないこと(「労働不能」の状態)
    医師の診断に基づいて、怪我や病気の治療のために働くことができない状態であると認められる必要があります。「労働不能」とは、単に休んでいるだけでなく、医学的な観点から労働が難しいと判断される状態を指します。たとえば、骨折の治療のためにギプスを装着しており、通常の業務を行うことが困難な場合などが該当します。
  • 3. 労働することができないために賃金を受けていないこと
    怪我や病気で働けない期間中に、会社から給料(賃金)を受け取っていないことが条件となります。もし会社から休業期間中も給料が支払われている場合は、休業補償の対象外となります。ただし、給料の一部のみが支払われている場合は、休業補償の対象となるケースもあります。

これらの要件をすべて満たしているかを確認し、ご自身の状況と照らし合わせてみることが大切です。

休業補償はいくらもらえる?給付額の計算方法をわかりやすく解説

仕事中の怪我や通勤中の事故で働けなくなり、休業を余儀なくされたとき、最も気になるのは「休業中の収入がどれくらいになるのか」という点ではないでしょうか。

給付額が生活に直結するため、具体的な計算方法を早めに知りたいと考えるのは当然のことです。

このセクションでは、労災の休業補償の給付額について、ステップバイステップで詳しく解説していきます。

給付額の計算は少し複雑に感じるかもしれませんが、順を追って説明しますので、どなたでもご自身の給付額を概算できるようになります。

計算の仕組みを理解することで、休業中の生活設計を立てる上での不安を軽減し、安心して療養に専念するための第一歩を踏み出しましょう。

給付額は給与の約8割!休業(補償)給付と休業特別支給金

労災による休業期間中に支給される金額は、実は次の2種類の給付から構成されています。

  • 休業(補償)給付
  • 休業特別支給金

これらが合算されることで、休業前の賃金に対して手厚い補償が受けられる仕組みです。

具体的には、次のような内訳です。

  • 休業(補償)給付:給付基礎日額(平均賃金)の60%
  • 休業特別支給金:給付基礎日額の20%

この2つを合わせると、合計で給付基礎日額の80%、つまり休業前の賃金の約8割が補償されることになります。

この「約8割」という数字は、休業中の生活を維持する上で非常に重要な目安となります。

さらに、労災保険給付の大きなメリットとして、これらの給付金は「非課税」であるという点が挙げられます。

所得税や住民税がかからないため、額面上の約8割という数字以上に、実際に手元に残る金額が多くなります。

これにより、休業中の実質的な手取り収入の減少を抑え、生活の安定に大きく貢献する重要な情報となります。

計算の基礎となる「給付基礎日額」とは?

休業補償の給付額を計算する上で、最も基本となるのが「給付基礎日額」です。

この給付基礎日額は、皆さんの給付額を算出するための「1日あたりの基礎となる賃金」と理解してください。

給付基礎日額は、原則として労働基準法に定められている「平均賃金」に相当する額が用いられます。

具体的には、業務上の負傷や疾病が発生した日、あるいは診断によって疾病の発生が確定した日(これを「算定事由発生日」と呼びます)の直前3か月間に、会社から支払われた賃金の総額を、その期間の暦日数で割って算出されます。

例えば、算定事由発生日の直前3か月が90日間で、その期間に受け取った賃金総額が90万円だった場合、給付基礎日額は1万円(90万円 ÷ 90日)となります。

ただし、ボーナス(賞与)や臨時的に支払われた賃金は、この給付基礎日額の計算には含まれません。

あくまで通常の労働の対価として毎月支払われる賃金が対象となります。

【具体例】月収30万円の場合のシミュレーション

それでは、具体的なケースで休業補償の給付額をシミュレーションしてみましょう。

例えば、「月収30万円(賞与なし)、所定労働日数20日」の労働者が労災で休業した場合を想定します。

まず、給付基礎日額を計算します。

  • 直前3か月間の賃金総額:30万円 × 3か月 = 90万円
  • 直前3か月の暦日数:仮に92日
  • 給付基礎日額:90万円 ÷ 92日 ≒ 9,783円

次に、この給付基礎日額をもとに、1日あたりの支給額を算出します。

前述したように、休業(補償)給付と休業特別支給金を合わせると給付基礎日額の80%が支給されるため、1日あたりの支給額は次のとおりです。

9,783円 × 80% = 7,826円

最後に、1か月(30日)あたりの支給額の目安を見てみましょう。

7,826円 × 30日 = 約234,780円

これが、月収30万円だった方が休業中に受け取れる給付金の目安となります。

ご自身の給与明細を参考に、同様の計算を試していただくことで、より具体的な生活の見通しを立てることができるでしょう。

労災の休業補償の支給期間|開始と終了のタイミング

労災による休業補償は、どれくらいの期間にわたって支給されるのか、またどのような場合に終了するのかは、被災された方にとって生活設計を立てる上で最も重要な情報の一つです。

このセクションでは、休業補償が「いつから」支給が始まり、「いつまで」続くのかについて、具体的なタイミングと終了するケースを詳しく解説します。

支給の開始から終了までの見通しを明確にすることで、読者の皆様が安心して療養に専念し、将来の計画を立てられるよう、具体的なポイントをわかりやすく説明していきます。

支給開始はいつから?|休業4日目から

休業(補償)給付は、怪我や病気で仕事を休んだ日から数えて「4日目」から支給が開始されます。

これは、労災保険制度における明確なルールとして定められています。

つまり、休業の最初の3日間については労災保険からの給付の対象外となります。

この最初の3日間は「待機期間」と呼ばれ、労働者が業務外で病気や怪我をして休む際の健康保険の傷病手当金と同様の考え方で設けられています。

なぜ4日目からなのかと疑問に思われるかもしれませんが、これは労働基準法で定められた事業主の休業手当支払義務との関連で規定されています。

この制度により、労働者は4日目以降の休業に対して、労災保険から一定の補償を受けられるようになっています。

最初の3日間(待機期間)はどうなる?

休業(補償)給付の対象外となる最初の3日間、つまり「待機期間」中の賃金の取り扱いについては、いくつかのパターンが考えられます。

この期間の収入がないと生活に困る方もいらっしゃるかと思いますので、ご自身の状況に合わせて確認しておくことが大切です。

  • 会社の就業規則や労働協約によって補償されるケース
    会社がこの待機期間中の賃金を補償してくれるケースがあります。これは会社が福利厚生の一環として、労働者の生活を保障するために独自に定めているものです。ご自身の会社の規定を確認してみると良いでしょう。
  • 業務災害の場合の休業手当
    業務災害の場合、労働基準法に基づき事業主が平均賃金の60%の休業手当を支払う義務があります。これは会社の過失の有無に関わらず発生する義務であり、事業主が当然に支払うべきものです。ただし、通勤災害の場合は、事業主にこの休業手当の支払義務はありませんので注意が必要です。
  • 年次有給休暇を利用する方法
    会社からの補償がない場合や不足する場合でも、労働者自身が年次有給休暇を利用するという選択肢があります。年次有給休暇を活用することで、待機期間中の収入を確保し、生活の不安を一時的に解消することができます。

ご自身の有給休暇の残日数などを考慮し、検討してみてください。

支給終了はいつまで?|打ち切りになる3つのケース

休業(補償)給付がいつまで支給されるのかという疑問は、給付額と並んで、被災された方にとって大きな関心事です。

原則として休業補償の支給期間に上限はありませんが、特定の条件を満たすと支給が終了したり、別の給付に切り替わったりすることがあります。

このセクションでは、休業(補償)給付が「打ち切りになる」主な3つのケースについて、その概要をご説明します。

ご自身の状況を照らし合わせながら、補償の見通しを立てるための参考にしてください。

ケース1:怪我や病気が「治癒(症状固定)」したとき

休業(補償)給付の支給が終了する最も一般的な理由は、怪我や病気が「治癒」したと判断された場合です。

ここでいう「治癒」とは、医学的に見て完全に元の健康な状態に戻ったことを指すだけではありません。

労災保険における「治癒」とは、治療を続けてもこれ以上の改善が見込めないと医師が判断した状態、いわゆる「症状固定」を指します。

症状固定と判断された場合、それ以降は休業(補償)給付の支給は終了となります。

しかし、もし症状固定後にも後遺障害が残ってしまった場合には、その障害の程度に応じて「障害(補償)給付」という別の労災保険給付に切り替わる可能性があります。

この制度により、治癒後の生活についても適切なサポートが継続されるよう配慮されていますので、ご安心ください。

ケース2:「傷病(補償)年金」に切り替わるとき

労災による療養が長期化し、治療開始から1年6か月を経過しても怪我や病気が「治癒(症状固定)」せず、かつその障害の程度が労災保険法で定められた「傷病等級」の第1級から第3級のいずれかに該当する場合には、休業(補償)給付から「傷病(補償)年金」に自動的に切り替わります。

この傷病(補償)年金は、より重篤な状態にある労働者に対して、長期的な生活保障を提供するための制度です。

休業(補償)給付が一方的に打ち切られるわけではなく、別の手厚い給付に移行する形となるため、療養が長期にわたる場合でも大きな不安を感じる必要はありません。

労働者の生活を継続的に支えるための重要な制度として位置づけられています。

ケース3:職場に復帰して賃金を受け取ったとき

休業(補償)給付は、あくまで「業務上の傷病の療養のために労働することができず、賃金を受けられない」ことが支給の要件となっています。

そのため、怪我や病気が回復し、職場に復帰して会社から賃金の支払いを受けるようになった時点で、休業(補償)給付の支給は終了します。

これは、給付の目的である「賃金を受けられない期間の所得保障」が達成されたためです。

ただし、完全に元の状態に戻って復帰するのではなく、リハビリ出勤などで部分的に職場へ復帰し、得られる賃金が休業前の水準に満たないケースもあるかと思います。

そのような場合は、全額支給が停止されるのではなく、減額された賃金と休業前の賃金との差額分が支給される可能性があります。

これは、労働者の円滑な社会復帰を支援するための柔軟な対応として設けられていますので、不安な場合は労働基準監督署や専門家にご相談ください。

労災の休業補償を申請する手続きの流れを4ステップで解説

仕事中の怪我や病気で療養を余儀なくされ、収入の不安を抱える中で、休業(補償)給付の申請手続きは複雑に感じられるかもしれません。

しかし、ご安心ください。

ここでは、実際に給付を申請するための具体的な流れを、誰でも理解できるよう4つのステップに分けて詳しく解説していきます。

それぞれのステップを順番に確認していけば、ご自身の給付額を算定するのと同様に、手続きもスムーズに進めることができます。

会社に協力を得ながら進めるのが基本ですが、万が一会社が非協力的な場合の対処法についても後ほど触れますので、ぜひこのガイドを参考に、安心して申請を進めてください。

Step1:会社に労災発生を報告し、医療機関を受診する

労災が発生した際に最初に行うべき最も重要な行動は、どのような些細な事故であっても、必ず会社(上司や労務担当部署)にその事実を報告することです。

報告を怠ると、労災と認められなかったり、手続きが大幅に遅れたりする原因となる可能性があります。

事故の状況や怪我の状態を正確に伝え、記録に残してもらうようにしましょう。

次に、速やかに医療機関を受診し、医師の診察を受けてください。

この際、可能な限り「労災保険指定医療機関」を選ぶことを強くおすすめします。

労災保険指定医療機関であれば、窓口で治療費を一時的に支払う必要がなく、病院側が直接、労働基準監督署に治療費を請求してくれるため、ご自身の金銭的・手続き的負担を大幅に軽減できます。

非指定医療機関を受診した場合は、一旦ご自身で治療費を立て替える必要がありますが、後日労働基準監督署に請求すれば、払い戻しを受けることができます。

Step2:申請書類「休業補償給付支給請求書」を準備する

休業(補償)給付の申請には、所定の「休業補償給付支給請求書」(業務災害の場合は様式第8号、通勤災害の場合は様式第16号の6)を準備する必要があります。

この書類は、次の場所で入手できます。

  • 厚生労働省のウェブサイト
  • 会社の労務担当部署
  • 管轄の労働基準監督署

請求書には、被災した労働者ご自身が記入する項目(氏名、住所、災害発生状況など)に加えて、重要な証明欄が二つあります。

  • 「事業主の証明」欄
    会社が休業の事実、賃金の支払い状況などを証明するものです。
  • 「医師の証明」欄
    医師が療養期間や労働不能の状態であることを証明します。

これらの証明は、給付が適正に行われるための重要な要素となりますので、会社や受診した医療機関に速やかに記入を依頼しましょう。

Step3:労働基準監督署に書類を提出する

必要な書類がすべて準備できたら、原則として会社を経由して、会社の所在地を管轄する労働基準監督署に提出します。

多くの企業では、労災申請の手続きを労務担当者が代行してくれるため、会社に提出を依頼するのが一般的です。

ただし、会社が手続きに非協力的な場合や、ご自身で手続きを進めたい場合は、直接労働基準監督署に提出することも可能です。

休業(補償)給付は、一般的に休業した日数分をまとめて請求する形になります。

療養期間が長期にわたる場合は、1回きりの請求ではなく、1〜2か月ごとなど療養期間に応じて定期的に請求を行うのが通常です。

提出漏れがないように、毎回書類の内容を確認してから提出するようにしましょう。

なお、会社が申請に協力してくれない場合の具体的な対処法については、この後のセクションで詳しく解説します。

Step4:審査後、指定口座に給付金が振り込まれる

提出された休業(補償)給付支給請求書に基づき、労働基準監督署は給付の要件を満たしているかどうかの審査を行います。

審査には、提出書類の確認のほか、必要に応じて会社や医療機関への照会が含まれることもあります。

審査の結果、支給が決定されると、請求書に記載したご自身の指定金融機関口座へ給付金が振り込まれます。

初回の給付金の振り込みまでには、請求からおよそ1か月程度が目安とされています。

ただし、事案の内容や労働基準監督署の混雑状況によっては、さらに時間がかかる場合もあります。

給付金の振り込みが確認できるまで、通帳をこまめに確認するなどして、ご自身の給付状況を把握しておくようにしましょう。

もし、振り込みが遅れていると感じる場合は、管轄の労働基準監督署に問い合わせてみてもよいでしょう。

会社が労災申請に協力してくれない場合の対処法

万が一、会社が労災申請に協力してくれない、あるいは「労災隠し」をしようとしていると感じた場合でも、決して諦める必要はありません。

労災保険の給付は労働者の権利であり、会社が非協力的であっても、労働者ご自身で直接手続きを進めることが可能です。

労働基準監督署に提出する請求書には事業主の証明欄がありますが、会社が証明を拒否した場合でも、その旨を記載した書面を添付して提出すれば、受理してもらえます。

また、ご自身だけで対応することに不安がある場合は、迷わず労働基準監督署に相談してください。

労働基準監督署は、会社に対して労災手続きを進めるよう指導を行うことができます。

会社の非協力的な態度や労災隠しは違法行為にあたる場合もあり、労働基準監督署が介入することで、状況が改善される可能性も十分にあります。

一人で抱え込まず、公的な機関を頼ることが、安心して療養に専念するための第一歩となります。

労災の休業補償に関するよくある質問(Q&A)

休業(補償)給付は、怪我や病気で仕事ができなくなった労働者にとって、生活を支える大切な制度です。

ここまでの解説で、制度の全体像や申請手続きについてご理解いただけたかと思います。

しかし、個別の状況においては、さらに細かい疑問や不安が残ることもあるでしょう。

このセクションでは、休業(補償)給付に関して多くの方から寄せられる質問をQ&A形式でまとめました。

退職後の補償の有無や、パート・アルバイトの方への適用、そしてリハビリ中の給付についてなど、具体的な疑問を解消し、皆さんが抱えるさらなる不安を解消することを目指します。

ぜひご自身の状況と照らし合わせながら、読み進めてみてください。

Q. 退職した後も休業補償はもらえますか?

はい、退職した後も休業補償をもらうことは可能です。

労災保険の給付を受ける権利は、被災した労働者個人の権利として法律で定められています。

そのため、労災によって休業中に会社を退職したとしても、その権利が消滅することはありません。

労災による傷病の療養のために労働することができず、賃金を受けられないという支給要件を満たしている限り、治癒(症状固定)するまで休業(補償)給付を受け続けることができます。

「退職したからもう申請できない」「給付が打ち切られてしまうのではないか」といった不安から、申請を諦める必要は一切ありませんのでご安心ください。

Q. パートやアルバイトでも休業補償の対象になりますか?

はい、パートやアルバイトの方も休業補償の対象になります。

労災保険制度は、正社員、契約社員、パートタイマー、アルバイトなど、雇用形態に関わらず「労働者」として働くすべての方に適用される保険です。

したがって、業務中や通勤中に怪我や病気に見舞われ、それが原因で休業せざるを得なくなった場合、雇用形態に関わらず休業(補償)給付を受ける権利があります。

「自分は非正規雇用だから対象外かもしれない」と誤解せず、もしもの時はためらわずに申請を検討してください。

労働者としての権利は等しく保障されています。

Q. 土日や祝日、会社の公休日も支給対象に含まれますか?

はい、土日や祝日、会社の公休日も休業補償の支給対象に含まれます。

休業(補償)給付は、「業務上の傷病の療養のため労働することができない期間」に対して支給されるものです。

そのため、実際に会社で働いている日だけでなく、その休業期間中に含まれる土日祝日や会社の公休日も「労働できない日」としてカウントされ、支給の対象となります。

休業日数の計算は、カレンダー上の日数で数えるのが原則です。

例えば、月曜日から金曜日まで働く方が労災で休業した場合、土日も休業日数として計算され、給付の対象となりますのでご安心ください。

Q. リハビリのために短時間勤務した場合、補償は打ち切られますか?

いいえ、必ずしも補償が打ち切られるわけではありません。

労災による傷病の回復過程で、リハビリテーションを兼ねて短時間勤務や部分的な就労を始めるケースは少なくありません。

このような場合、休業(補償)給付は、職場復帰後の賃金状況に応じて調整されることになります。

具体的には、1日の労働で得た賃金額が、給付基礎日額よりも少ない場合に、その差額が支給される可能性があります。

計算式としては、次のとおりです。

(給付基礎日額の80%) – (労働に対して支払われた賃金)

この差額が支給されることになります。

完全に仕事に戻れなくても、賃金が減った分を補填してもらえる可能性があるため、焦らず段階的に復帰を目指すことが大切です。

Q. 申請を忘れていました。時効はありますか?

はい、休業(補償)給付には時効があります。

休業(補償)給付を請求する権利は、賃金を受けなかった日ごとに発生し、その翌日から起算して「2年」で時効により消滅します。

例えば、2024年4月10日に労災で休業し、その日の分の賃金を受け取らなかった場合、その日の休業(補償)給付の請求権は2026年4月11日に時効を迎えることになります。

時効期間は決して短いものではありませんが、月日が経つと当時の状況を証明する書類の準備が難しくなることもあります。

そのため、労災が発生し、休業せざるを得なくなった場合は、できるだけ早めに申請手続きを進めるようにしましょう。

Q. 休業期間中に解雇される可能性はありますか?

原則として、労災による休業期間中に解雇されることはありません。

労働基準法第19条には、労働者が業務上の傷病により療養のために休業する期間、およびその後30日間は、その労働者を解雇してはならないという規定があります。

これは、労災で負傷した労働者の生活と雇用を守るための、非常に強力な保護措置です。

もし、労災による休業を理由に会社から解雇を言い渡された場合は、不当解雇にあたる可能性が高いです。

ただし、療養開始後3年を経過しても治癒せず、会社が「打切補償」を支払った場合など、ごく一部の例外規定も存在します。

万が一、不当な解雇通告を受けた場合は、一人で悩まずに労働基準監督署や弁護士などの専門機関に相談するようにしてください。

休業補償だけでは不十分?会社への損害賠償請求も検討しよう

労災保険からの休業(補償)給付は、仕事中の怪我や病気で働けない期間の生活を支える大切な制度ですが、実は被災した方が受けた損害のすべてをカバーできるわけではありません。

特に、労災の原因が会社側の不手際や安全管理の不備にあった場合、労災保険の給付だけでは不十分なケースが多くあります。

このような場合、労災保険とは別に、会社に対して損害賠償を請求できる可能性があります。

このセクションでは、労災保険では補償されない損害とは具体的にどのようなものか、そして会社に損害賠償請求ができるのはどのような状況なのかを詳しく解説します。

精神的な苦痛に対する慰謝料や、労災給付でカバーされない賃金の差額など、知っておくべき重要な情報を提供することで、皆さんが自身の権利を正しく理解し、休業中の生活だけでなく、将来にわたる不安を解消するための一助となれば幸いです。

労災保険では補償されない損害とは

労災保険は、被災した労働者の迅速な保護を目的とした公的な制度ですが、その補償範囲は法律で定められており、必ずしも被ったすべての損害をカバーするものではありません。

特に以下の2つの項目については、労災保険から給付されることはなく、会社側に法的な責任がある場合に別途請求する必要があります。

  • 慰謝料
    労災による怪我や病気によって、肉体的・精神的な苦痛を被ることは少なくありません。しかし、労災保険の給付には、このような精神的苦痛に対する慰謝料の概念が存在しないため、労災保険から慰謝料が支払われることは一切ありません。これは、労災保険が「損害を補填する」というよりも「生活保障」という側面の強い制度であるためです。
  • 休業損害の差額
    労災の休業(補償)給付は、休業前の賃金の約80%(休業(補償)給付60%+休業特別支給金20%)が支給されます。しかし、これは休業前の賃金全額が補償されるわけではなく、残りの約20%は被災した労働者の負担となります。この20%の差額分や、本来であれば得られるはずだった昇給の機会損失なども、労災保険では補填されません。

会社に法的な責任がある場合には、これらの「補償されない損害」についても会社に対して請求を検討する必要があります。

会社に損害賠償請求できるケース

労災保険ではカバーしきれない損害について、会社に損害賠償を請求するためには、会社に「安全配慮義務違反」があったことが主な根拠となります。

労働契約法第5条では、会社は労働者が安全に働けるよう配慮する義務があると明確に定められています。

この義務に違反し、会社が安全を怠った結果として労災が発生した場合、会社は被災した労働者に対して損害賠償責任を負うことになります。

具体的にどのようなケースが安全配慮義務違反にあたるのか、いくつか例を挙げます。

  • 危険な機械に安全装置が設置されていなかった、または適切に機能していなかった場合
  • 作業員に危険な作業手順を指示したり、十分な安全教育や危険予知トレーニングが行われていなかったりしたために事故が起きた場合
  • 過重労働によって精神疾患を発症した場合
  • 職場のハラスメントが原因で心身に不調をきたした場合

このように、労災の原因が単なる不注意だけでなく、会社の安全管理体制や職場環境に問題があったと認められる場合、会社は労災保険給付だけでは補いきれない損害について、その責任を負うことになります。

自身の労災が会社の過失によって引き起こされた可能性がないか、一度立ち止まって考えてみることが重要です。

労災問題で困ったら弁護士に相談するメリット

労災に遭われた方が、休業補償の手続きや会社への損害賠償請求といった複雑な問題に直面した際、大きな助けとなるのが弁護士への相談です。

特に、会社が非協力的であったり、労災の原因が会社の安全配慮義務違反にあると思われる場合など、個人で対応するには限界があります。

弁護士に相談するメリットは多岐にわたります。

  • 会社との交渉をすべて任せられる
    労災後の心身ともに辛い時期に、会社とのやり取りでさらなる精神的負担を抱えることは避けたいものです。弁護士が代理人となることで、書類作成、情報収集、交渉、さらには裁判まで一貫して対応してくれるため、ご自身は療養に専念できる環境を整えることができます。
  • 安全配慮義務違反の立証を進めてもらえる
    弁護士は法律の専門家として、会社の安全配慮義務違反を立証するために必要な証拠収集や、法的な主張を的確に行ってくれます。
  • 正当な賠償額を算定してもらえる
    労災保険では補償されない慰謝料や、休業損害の差額など、正当な賠償額を算定し、適切な金額を獲得できる可能性が格段に高まります。
  • 精神的な安心につながる
    会社に直接言いにくいと感じている方にとって、弁護士はまさに強力な味方となり、安心して未来へ進むための道しるべとなってくれます。

まとめ

労災による休業は、働く方にとって大きな不安を伴うものです。

しかし、労災保険の休業(補償)給付は、そうした不安を軽減し、安心して療養に専念するための大切な制度です。

この記事では、休業(補償)給付がいつからいつまで支給されるのか、その全体像から具体的な計算方法、申請手続き、そしてよくある疑問まで詳しく解説してきました。

主なポイントは、次の通りです。

  • 休業(補償)給付は、休業4日目から支給される
    傷病が治癒するか、傷病(補償)年金などの別の給付に切り替わるまで支給されます。
  • 給付額は、休業前の賃金の約8割が目安
    しかも、所得税などがかからない非課税です。
  • 申請手続きは、会社経由が基本
    ただし、万が一会社が非協力的な場合でも、労働者ご自身で直接、労働基準監督署に申請することができます。
  • 会社に損害賠償請求できる可能性がある
    もし会社の安全配慮義務違反などが原因で労災が発生した場合は、労災保険の給付だけでは補償されない慰謝料などの損害について、会社に対して損害賠償請求を検討することも大切です。

仕事中の怪我や病気で収入が途絶えることは、ご本人だけでなく、ご家族にとっても大きな打撃となりかねません。

まずは利用できる制度をしっかりと活用し、ご自身の体と心の回復に専念してください。

もし手続きや会社との交渉などで困った際は、労働基準監督署や弁護士などの専門機関に相談することも視野に入れ、一人で抱え込まずにサポートを求めるようにしましょう。

皆様の順調な回復と社会復帰を心から願っています。

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