発信者情報開示請求の通知や意見照会書はいつ届く?専門弁護士が解説

最終更新日: 2023年12月02日

 

発信者情報開示請求の通知はいつ届く?専門弁護士が解説

  • 誹謗中傷したら発信者情報開示請求をすると言われた
  • 投稿から半年が経つが、発信者情報開示請求の意見照会書が来ない
  • どれくらい経てば発信者情報開示請求は来ないと考えていいの?

近時、SNSでの誹謗中傷やファイル共有ソフトでの権利侵害を理由として被害者(権利者)から発信者情報開示請求がなされるケースが増えています。

発信者情報開示請求には時間も費用もかかるため、権利侵害をした場合でも必ず発信者情報開示請求がなされるとは限りません。そうすると、今日にでも発信者情報開示請求が来るのではないかと不安な日々を過ごすことになり、いつになったらその不安から解放されるのかと考える方もおられるでしょう。

そこで今回は、発信者情報開示請求はいつ届くのかについて解説します。

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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発信者情報開示請求の通知や意見照会書はいつ届く?まずは流れを確認

発信者情報開示請求の通知がいつ届くのかを理解するために、まずは発信者情報開示請求の流れについて簡単に確認しておきましょう。

  • 以前は二段階の手続きが必要だった
  • 改正法の手続き

以前は二段階の手続きが必要だった

多くのインターネット掲示板、SNSは、利用者はその氏名や住所を登録することなく利用することができます。そのため、これらのサービスの管理者に投稿者(発信者)の情報を開示するよう求めることができません。

もっとも、これらの管理者も発信者が利用したIPアドレスの情報は保有しています。このIPアドレスをもとに発信者を特定することが可能です。

そこで、まず第1段階としてサービスの管理者に対して裁判手続をしてIPアドレスの開示をさせます。

IPアドレスの開示を受けた後は、第2段階として、当該IPアドレスを保有するプロバイダに対してプロバイダの契約者情報を開示するよう求める裁判をして、発信者の氏名や住所などを開示させます。

このように以前は発信者を特定するために通常、二段階の手続きが必要でした。なお、氏名や住所を登録して利用するサービスの場合は、その管理者から発信者情報の開示を受けることができますので一段階の手続きで済みます。

改正法の手続き

このような二段階の手続きでは通常、発信者情報開示までに半年以上もの時間を要します。

この問題を解消するために2022年10月から新しい法律が施行され、先ほどの二つの手続きを一つの裁判手続の中で行えるようになり、発信者情報開示までの期間が短縮されました。

ただし、従来の二段階の手続きも今後も利用可能で、またケースによっては改正法の手続きではなく従来の手続きをとるべき場合もありますので、いずれの手続きにるべきか専門弁護士において検討が必要です。

発信者情報開示請求の通知や意見照会書はいつ届く?

さて、それではいよいよ発信者情報開示請求の通知はいつ届くのかについてご説明します。

  • 発信者情報開示請求の通知とは
  • サービス管理者への請求の場合
  • プロバイダへの請求の場合
  • 弁護士への依頼から発信者情報開示請求までの期間
  • 開示請求はいつまで待てば安心できるか

発信者情報開示請求の通知とは

発信者情報開示請求がなされた場合、サービス管理者からサービス利用者へ、プロバイダから契約者へ、発信者情報開示請求に係る意見照会書(メールのこともあります。)が届きます。発信者情報開示請求がなされたことの通知はこの意見照会書によってなされます。

意見照会書では、サービス利用者やプロバイダ契約者の氏名、住所、電話番号、メールアドレスなどの情報を請求者に対して開示しても良いかどうかを回答することが求められます。

サービス管理者への請求の場合

先ほどご説明しましたとおり、多くはありませんが氏名や住所を登録して利用する掲示板やSNSの管理者に対しては発信者情報開示請求をすることができます。

裁判手続によらずに管理者の判断で任意に開示するよう求める場合は、発信者情報開示請求がなされてから数週間後に意見照会書が届きます。他方、裁判手続で発信者情報開示請求がなされた場合は1週間ほどで意見照会書が届きます。

プロバイダへの請求の場合

先ほどご説明しました2段階目のプロバイダに対する発信者情報開示請求の場合です。

裁判手続によらずにプロバイダの判断で任意に開示するよう求める場合は、発信者情報開示請求がなされてから数週間後に意見照会書が届くこともありますが、大手のプロバイダの場合には大量の同種の請求に対処していることから半年近く経った後に意見照会書が届くこともあります。

他方、裁判手続で発信者情報開示請求がなされた場合は遅くとも1か月以内には意見照会書が届きます。

弁護士への依頼から発信者情報開示請求までの期間

このように発信者情報開示請求がなされた後に要する期間については概ね見当がつきます。しかし、問題となっている投稿などの権利侵害行為をしたら即日発信者情報開示請求がなされるものではありません。権利侵害に気が付くのは数か月後になるかもしれません。

また、権利侵害に気が付いて直ぐに弁護士に依頼をしても、弁護士において発信者情報開示請求の準備をする必要があります。その準備期間は通常は1週間から1か月ほどです。

このように被害者(権利者)が発信者情報開示請求に向けた行動に着手するまでの期間については見当を付けることが困難なため、発信者情報開示請求に係る意見照会書がいつ頃届くのかについて予測することは困難です。

開示請求はいつまで待てば安心できるか

それでは、投稿などの権利侵害をしてしまったときは、発信者情報開示請求の通知がいつ来るかわからない不安を何年も抱えて生活しなければならないのでしょうか。

結論としては、最後の権利侵害から概ね1年を経過すれば発信者情報開示請求の通知が来る可能性は低いと考えて良いでしょう。

プロバイダはアクセス記録を3か月から6か月ほどの期間しか保存していません。

保存期間が6か月のプロバイダであった場合で、その期間ぎりぎりに弁護士が発信者情報開示請求の手続きに着手したとします。そこからサービスの管理者からIPアドレスなどのアクセス記録の開示を受けるのに1か月、開示を受けた後に発信者情報開示請求訴訟を提起するのに1か月かかったとすると、訴訟提起から1か月以内にはプロバイダから意見照会書が届きます。

この場合、最後の権利侵害から約9か月後にプロバイダから意見照会書が届くこととなります。各期間が多少長くなる可能性はありますので余裕を見て最後の権利侵害から概ね1年を経過すれば発信者情報開示請求の通知が来る可能性は低いといえます。

ただし、前記のとおり、プロバイダに対して任意の発信者情報開示を求めた場合には意見照会書が届くまでに半年以上を要することもありますので、その点も考慮すると最後の権利侵害から1年半ほど経過すれば一層発信者情報開示請求の通知が来る可能性は低いといえます。

発信者情報開示請求の意見照会書が届いた後の対応

最後に、発信者情報開示請求に係る意見照会書が届いた場合の対応やその後の法的責任の追及についても確認しておきましょう。

  • 開示に同意した場合
  • 開示に不同意とした場合
  • 回答書を返送しない場合
  • 法的責任の追及

開示に同意した場合

発信者情報開示に同意する回答書を返送した場合、プロバイダは請求者に対して発信者情報を開示します。

開示に不同意とした場合

他方、発信者情報開示に同意しない回答書を返送した場合、プロバイダはその理由も踏まえて発信者情報開示を開示するかどうか判断します。

ただし、安易に開示すればプロバイダは契約者から責任追及される恐れがありますので、よほど権利侵害が明白でない限り、開示はしません。

そのため、被害者(権利者)は裁判で発信者情報開示を求めていきます。そして裁判所は権利侵害を認めれば、発信者情報開示をプロバイダに命じます。

回答書を返送しない場合

発信者情報開示請求に係る意見照会書を受け取った方の中には、どうすれば良いのかわからず放置してしまったという方や、責任を逃れたい一心で無視してしまったという方もしばしばおられます。

この場合、プロバイダは契約者には特に言い分はないものとみなして、発信者情報を開示するかどうか判断します。この場合もプロバイダが安易に開示することはありませんので、その後に裁判で開示の可否が決定します。この点では開示に不同意とした場合とさほど変わりません。

しかし、もし裁判で権利侵害が認められた場合、回答しなかった不誠実な態度ゆえにその後の和解交渉が難航します。また、しっかりと法的反論を回答書に記載しておけば発信者情報開示を回避できたのにそれをしなかったので発信者情報が開示されてしまうということもあります。

したがって、回答書を返送しないという対応にはデメリットしかありませんので、きちんと対応するようにしましょう。

法的責任の追及

さて、そもそも発信者情報開示請求は民事、刑事の責任追及をするために行われていますので、発信者情報の開示を得た後は、被害者(権利者)は法的責任追及をしてきます。

まず民事では慰謝料その他の損害賠償を請求されます。慰謝料は10万円から50万円ほどが通常ですが、発信者情報開示請求に要した弁護士費用として50~100万円ほども合わせて請求されます。

また、著作権侵害の場合には数百万円から数千万円の損害賠償を請求されることが多いです。

他方、刑事責任の追及をされる場合には、警察に被害届提出、刑事告訴がなされ、その後に起訴されると刑事罰を受け前科がつきます。場合によっては逮捕、勾留され20日以上の期間、身柄拘束される可能性もあります。

このように重い法的責任の追及がなされますので、権利侵害が事実であれば早期に被害者(権利者)と和解することを目指すことが得策です。

まとめ

以上、発信者情報開示請求の通知、意見照会書はいつ届くのかについてご説明しました。

発信者情報開示請求は損害賠償金よりも高額な弁護士費用がかかることも多いため、誹謗中傷などの権利侵害行為があれば必ず相手が発信者情報開示請求をしてくるわけではありません。

しかし、いつ届くかわからない不安から早く解放されたいという方で、相手に連絡が取れるような場合には、発信者情報開示請求の通知を待たず、弁護士に依頼をして示談することも一つです。

他方、発信者情報開示請求に係る意見照会書が届いたときは、正しい対応をしなければ大事に発展しますので、速やかに弁護士にご相談ください。

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