発信者情報開示請求はいつ時効になる?専門弁護士が解説

最終更新日: 2023年06月05日

発信者情報開示請求はいつ時効になる?専門弁護士が解説

  • 発信者情報開示請求の不安からいつになったら解放されるの?
  • 発信者情報開示請求には時効はあるの?
  • 損害賠償請求や刑事告訴に時効はあるの?

インターネット上での投稿やファイル共有ソフトの違法利用によって他人の権利を侵害してしまい、発信者情報開示請求を受け、法的責任を問われるのではないかと不安に思っている方もおられるかもしれません。

今回は、発信者情報開示請求から解放される時効について専門弁護士が解説します。

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
愛知県弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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発信者情報開示請求の技術的な「時効」?

後ほど法律上定められている時効についてご説明しますが、その前に、発信者情報開示請求における技術的理由による「時効」についてご説明します。

  • 発信者情報開示請求の流れ
  • 加害者特定までに要する時間
  • 特定から賠償請求までに要する時間
  • アクセスログの保管期限

発信者情報開示請求の流れ

技術的な「時効」を理解するために、発信者情報開示請求の流れを簡単に確認しておきましょう。

発信者情報開示請求は、通常、以下の二段階の手続きで行われます。

第一段階で、権利侵害の現場となったSNSや掲示板などのサービス管理者に対し、裁判手続によって加害者が使用したIPアドレスの開示を受けます。

そして第二段階では、そのIPアドレスを保有するプロバイダに対し、裁判手続によってそのIPアドレスを使用したプロバイダ契約者の氏名や住所などの発信者情報の開示を受けます。

加害者特定までに要する時間

以上の発信者情報開示請求に要する時間ですが、第1段階のIPアドレスの開示のために1か月から3か月の期間を要します。そして、第2段階で発信者情報の開示を受けるために3か月から半年ほどの期間を要します。

そのため、発信者情報開示請求の手続きに着手してから加害者の氏名などを特定するまでにスムーズに進んでも4か月ほど要しますし、通常は半年以上の時間を要します。

なお、2020年10月以降に施行される改正法では二段階の手続きを一つの手続きにまとめますが、それでも加害者特定までに3か月ほどは要するだろうと言われています。

特定から賠償請求までに要する時間

発信者情報開示を受けた後は、加害者に対して損害賠償請求がなされます。内容証明郵便にて通知書が送られてくることもありますが、最初から民事訴訟を起こされることもあります。

いずれにしても、損害賠償請求のための書面を作成するなどの準備が必要ですから、発信者情報開示を受けた後に1か月ほどは要します。

アクセスログの保管期限

上記のように最終的に発信者情報開示を受けるまでに数か月を要します。ところが、誰がそのIPアドレスを使用したのかに関する情報(アクセスログ)について、ほとんどのプロバイダは3か月から半年しか保存していません。

そのため、弁護士は、第一段階でIPアドレスの開示を受けると即座に、プロバイダに対してアクセスログの保全を求めます。しかし、この時点で既にアクセスログの保存期間を経過していた場合には、もはや発信者情報開示を受けることができなくなるのです。

このように発信者情報開示請求には技術的な「時効」が存在します。

発信者情報開示請求における賠償責任の時効

発信者情報が開示されると、次に損害賠償請求がなされます。この損害賠償請求には民法上の時効があり、損害及び加害者を知ったときから3年で時効となります(民法第724条1号)。

損害については通常、投稿などの権利侵害行為を知ったときに知りますので、発信者情報開示を受けて加害者を知ったときが起算点となり、そこから3年が経過すると損害賠償請求はできなくなります。

ただし、発信者情報開示請求で開示されるのはプロバイダの契約者情報です。例えば、契約者の家族が加害者である場合などプロバイダの契約者と加害者が一致しないケースがあります。この場合、時効の起算点は、発信者情報開示を受けた時点ではなく、加害者を知ったときとなります。

なお、権利侵害から20年の時効もありますが、これほど時間が経ってからの発信者情報開示請求がなされることは想定し難いため説明は割愛します。

発信者情報開示請求における刑事責任の時効

発信者情報開示請求の後に追及される法的責任は、損害賠償請求のみならず、名誉毀損罪、侮辱罪などの刑事責任の追及もありえます。

これらの刑事責任についても時効などの期間制限がありますので、以下ご説明します。

  • 刑事責任の時効
  • 告訴期限による制限

刑事責任の時効

犯罪には公訴時効というものがあります。犯罪行為が終わったときから一定期間を経過するとその犯罪について公訴する、つまり裁判にかけて罪を問うことができなくなるのです。

SNSなどへの投稿であれば投稿をした時から、ファイル共有ソフトでの著作権侵害であればダウンロード又はアップロードをした時から時効が進行します。

発信者情報開示請求でよく問題となる犯罪について、時効となるまでの期間は以下の表のとおりです。なお、侮辱罪はこれまでは時効期間は1年でしたが令和4年の法改正で厳罰化されたことによって時効期間は3年となりました。

犯罪 時効期間
名誉毀損罪 3年
侮辱罪 3年
著作権法違反 7年

告訴期限による制限

また、時効ではありませんが、刑事責任においては告訴期限というものがあります。告訴とは、捜査機関に犯罪被害を申告して加害者の起訴を求める行為です。

一部の犯罪には、親告罪という、被害者の告訴がなければ起訴することができない犯罪があります。上記の名誉毀損罪や侮辱罪はこの親告罪ですし、著作権法違反も一部に親告罪があります。

この告訴には期間制限があり、犯人を知ってから6か月を経過すると告訴はできなくなります。そのため、発信者情報開示を受けて加害者を知ったときから6か月を経過すると、告訴することができず罪に問うことができなくなります。

まとめ

以上、発信者情報開示請求に関わる時効について解説しました。

時効までの期間は年単位ですが、プロバイダによるアクセスログの保存期間との関係で、権利侵害をしてしまってから概ね1年から1年半の間にプロバイダから連絡がなければ、発信者情報開示請求はなされないと考えて良いでしょう。

一方、プロバイダから発信者情報開示請求があったとの連絡を受けたときは、正しい対応をしなければ大事になりますので、一日も早く専門の弁護士にご相談ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。ご不明な点があるときやもっと詳しく知りたいときは、下にある「LINEで無料相談」のボタンを押していただき、メッセージをお送りください。弁護士が無料でご相談をお受けします。

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