立退き問題を徹底解説|知っておくべき権利と対処法

2025年12月04日

立退き問題を徹底解説|知っておくべき権利と対処法

「突然、立退きを求められた」「老朽化を理由に退去をお願いされた」──
立退きに関するトラブルは、賃貸住宅や店舗を借りている人だけでなく、貸しているオーナー側にとっても深刻な問題です。

しかし、立退きは単なる「お願い」や「契約終了」ではなく、法律(借地借家法など)で厳密にルールが定められている行為です。
特に居住用物件や店舗の場合、貸主が一方的に追い出すことはできず、「正当事由」と「補償(立退き料)」が求められます。

本記事では、立退き問題に関する基本的な法律の仕組みから、貸主・借主それぞれの立場での対応方法、補償金の考え方までを総合的に解説します。

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
宅地建物取引士

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立退きとは?法律上の意味と前提

「立退き」とは、賃貸借契約に基づき建物を使用している借主に対し、貸主が「契約を終了させて退去してほしい」と求めることを指します。

ただし、借主には「居住の安定」や「営業継続の自由」があるため、貸主が自由に契約を打ち切ることはできません。
この点を定めているのが借地借家法です。

借地借家法では、貸主が契約更新を拒否したり、解約を申し入れたりする場合、正当事由」が必要とされています(同法28条)。
つまり、貸主に十分な理由がなければ、契約を終了できない仕組みになっています。

また、立退きには以下のようなケースがあります。

  • 契約期間満了による更新拒絶
  • 契約途中の解約申し入れ
  • 家賃滞納など借主側の契約違反
  • 建物の老朽化や再開発による建て替え

居住用か事業用(店舗・オフィス)かによって、補償の内容や判断基準も変わります。

立退きが発生する主なケース

立退きが求められる背景には、さまざまな事情があります。主なパターンを見てみましょう。

建物の老朽化・建て替え

耐震性や老朽化を理由に「建て替えをしたい」というケース。
この場合、立退きを求める貸主側には一定の正当性がありますが、補償金の支払いが条件となることが多いです。

家賃滞納など借主の債務不履行

家賃の未払いが続いた場合、貸主は契約解除をして明渡請求を行うことが可能です。
ただし、滞納が一時的であれば債務不履行解除が認められない可能性もあるため、状況に応じた判断が求められます。

契約期間満了と更新拒絶

契約期間が終わったからといって自動的に退去させられるわけではありません。
更新を拒否するには正当事由が必要であり、裁判でも「補償金を支払っていない」「使用目的があいまい」といった場合は、更新拒絶が認められないことがあります。

貸主自身や家族が使用する場合

「息子が住む家として使いたい」など、自己使用を理由に退去を求めるケース。
自己使用の必要性が具体的であれば正当事由として認められることもありますが、借主の生活への影響も考慮されます。

再開発・行政による立退き

都市計画や再開発事業に伴うケースでは、行政やデベロッパーが関与するため、補償金の算定や手続が複雑になる傾向があります。

貸主が立退きを求める場合のルール

貸主が借主に退去を求めるには、次の2つの条件を満たす必要があります。

  1. 正当事由があること
    建物の老朽化・自己使用・借主の契約違反などがこれにあたります。
    ただし、単に「新しい人に貸したい」「家賃を上げたい」といった理由では認められません。
  2. 補償金(立退き料)による補完
    正当事由が弱い場合でも、補償金を支払うことで「正当事由が補完」されるケースがあります。

裁判では、「貸主の必要性」「借主の生活への影響」「補償金の額」「交渉の経緯」などを総合的に判断します。

弁護士を通じて交渉すれば、法的リスクを減らし、円滑な手続きを進めることができます。

借主が立退きを求められたときの対応

借主が立退きを求められた場合、まず冷静に状況を確認することが重要です。

  1. 契約書を確認する
    更新拒絶や解約申し入れの根拠があるかをチェック。
  2. 通知書の内容を確認する
    「いつまでに退去してほしい」「理由は何か」が明確かどうかを見ます。
  3. 正当事由の有無を判断する
    老朽化や再開発など、法律上妥当な理由があるかどうか。
  4. 立退き料の提示額を検討する
    金額が相場より極端に低い場合は、交渉の余地があります。

不当な要求を受けた場合は、「応じる義務があるのか」「補償金はいくらが妥当か」を弁護士に確認し、法的な対処を進めるのが安全です。

立退き料(補償金)とは?相場と交渉の実態

立退き料とは、退去に応じてもらう代わりに貸主が支払う補償金です。
法的な定めはありませんが、裁判実務では「正当事由の補完」として重視されます。

一般的な相場

  • 居住用物件:家賃の6〜12か月分程度
  • 店舗・事業用:売上や移転費用を考慮し数百万円以上になるケースも

金額が上がる要素

  • 借主の居住期間が長い
  • 建物の立地が良い・移転が困難
  • 建て替えに貸主の都合が強く出ている

金額が下がる要素

  • 借主が家賃滞納をしている
  • 貸主の必要性が高く、事前説明も丁寧である

立退料の提示に納得できない場合は、安易に合意せず、弁護士に交渉を依頼することで適正な金額を得られる可能性があります。

店舗・事業用物件の立退き

事業用物件の立退きでは、居住用よりも交渉が複雑になります。
なぜなら、退去によって営業損失や顧客離れといった金銭的損害が発生するからです。

補償金の内容には以下のような要素が含まれることがあります。

  • 改装・移転費用
  • 営業損失補償(売上・利益減少分)
  • 顧客移転告知費用

店舗やオフィスの場合、「営業を維持できるまでの期間的余裕」も交渉ポイントになります。

立退きトラブルを防ぐためにできること

立退き問題を未然に防ぐには、契約時からの備えが大切です。

  • 契約書に「更新・解約の条件」を明確に定める
  • 通知ややり取りは書面・メールで記録する
  • 定期借家契約の場合は説明義務を守る
  • 問題が発生したら早めに弁護士へ相談する

「長年の付き合いだから」と口約束で対応してしまうと、後にトラブルが複雑化することもあります。

立退き問題を弁護士に相談すべきケース

次のような場合は、早めに弁護士への相談を検討しましょう。

  • 立退料の提示額が妥当かわからない
  • 貸主と連絡が取れない・強制的に追い出されそう
  • 交渉が長引いて精神的に負担を感じる
  • 明渡し後に原状回復費などをめぐって争いが起きた

弁護士が介入することで、法的根拠に基づく主張が可能になり、相手との交渉を有利に進めることができます。

よくある質問(FAQ)

Q. 正当事由があれば必ず退去しなければなりませんか?

いいえ。裁判所は、補償金や生活状況なども含めて総合的に判断します。

Q. 貸主が勝手に鍵を替えるのは違法?

違法です。不法侵入や器物損壊に該当する可能性があります。

Q. 店舗の場合、営業補償を請求できる?

売上減少や移転費用などを根拠に請求できる場合があります。

Q. 弁護士費用はどのくらい?

相談料無料の事務所も多く、交渉や訴訟は成果報酬制を採用していることもあります。

Q. 立退料に相場はありますか?

立退料には明確な算定式や「賃料〇か月分が相当」といった相場はありません。賃貸人側の建物使用の必要性、賃借人側の建物使用の必要性などの諸事情を総合的に考慮して算定されるので、立退料も事案ごとに異なります。

まとめ:立退きトラブルは早めの法的対応が重要

立退きは、貸主・借主のどちらにとっても大きな決断を伴います。
法的ルールを無視した対応をすると、補償を受け損ねたり、訴訟トラブルに発展するリスクもあります。

老朽化・再開発・家賃滞納など理由を問わず、まずは正当事由の有無と補償内容を専門家に確認することが重要です。
早い段階で弁護士へ相談すれば、交渉をスムーズに進め、最適な解決を目指すことができます。

 

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