借金も離婚時の財産分与の対象になるのか

借金も離婚時の財産分与の対象になるのか

2019年12月26日

1 はじめに

財産分与とは、離婚の際に、夫婦共同生活の中で形成された財産について、それぞれの財産形成に対する寄与度を考慮して公平に分配するものです。

民法は財産分与の方法について、「当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。」(768条2項)と抽象的に定めるのみで、具体的な方法について規定していません。

夫婦の財産関係には、現預金や不動産などの資産だけでなく、借金など負債もあります。そこで、このような負債は財産分与においてどのように扱われるのかについて今回はご説明します。

2 夫婦の一方が負担した借金は離婚時の財産分与の「対象」になるのか

財産分与は財産を清算する制度ですから、実務上、借金などの債務それ自体は財産分与の対象とはならないとされています。

よって、借金はその名義人となっている夫婦の一方が負担し、他方はそれを負担しません。

もっとも、債務は財産分与の対象とはならないとはいえ、財産分与において考慮されることがあります。以下、財産分与において考慮される債務についてみていきましょう。

3 離婚時の財産分与において「考慮」される借金

夫婦の借金は、概ね、①積極財産を取得するための借金、②家計を維持するための借金、③個人的な借金に分けられるかと思います。

⑴ 積極財産を取得するための借金

積極財産を取得するために生じた借金は財産分与において考慮されます。住宅ローンが代表例ですが、投資用財産を取得するための借金もこれにあたります。

⑵ 家計を維持するための借金

家計を維持するために生じた借金も財産分与において考慮されます。生活費が不足したことによる消費者金融からの借金や、子供の教育ローンなどが典型例です。

民法761条は日常家事の債務について夫婦の連帯債務としていますが、ここでの借金は日常家事債務に限られません。

もっとも、生活費に充てるために借金をしたからといって夫婦で平等に負担することになるとは限りません。

例えば、夫の浪費のために家計をやりくりするのが難しく妻が借金を重ねたとしても、家計を維持するために借金を強いられていることを説明するなどして夫に家計に協力することを求めず、漫然と借金を重ねたというケースで、妻が7割を負担すべきと判断した例もあります(東京家審昭和61年6月13日)。

⑶ 個人的な借金

例えばギャンブルや自分の趣味のために生じた個人的な借金は財産分与においては考慮もされません。原則どおり、借金をした名義人だけがそれを負担します。

ただし、このような個人的な借金を夫婦が協力して返済した場合、それを返済することで借金をした配偶者の特有財産の形成に寄与したといえます。

このような場合、その返済への寄与度に応じて財産分与でその返済を考慮することができます。例えば、妻の借金200万円を夫婦が協力して返済した場合、妻から夫への100万円の財産分与を認めることもできるでしょう。

4 離婚時の財産分与における借金の「考慮」方法

このように財産分与において考慮される夫婦の借金がありますが、具体的にどのように考慮されるのでしょうか。

⑴ 積極財産への寄与割合と債務の負担割合が同じ場合

資産形成への寄与度は通常は1/2ですが、負債への寄与度についても通常は同じく1/2とされます。この場合、以下の計算を行います。

夫婦の全体財産=(夫の資産-負債)+(妻の資産-負債)
夫から妻への財産分与=全体財産の1/2-(妻の資産-負債)

【事例】
夫:預貯金300万円、借金200万円
妻:資産・負債なし
夫から妻への財産分与=(300万円-200万円)÷2=50万円

⑵ 積極財産への寄与割合と債務の負担割合が異なる場合

他方、資産形成への寄与度と、負債への寄与度が異なる場合があります。この場合には、以下の計算を行います。

A:(夫の資産+妻の資産)×寄与割合
B:(夫の負債+妻の負債)×寄与割合
夫から妻への財産分与=A-B-(妻の資産-負債)

【事例】
夫:預貯金300万円
妻:借金200万円
妻は生活費に充てるために夫に無断で借金を重ねたという場合で、借金について妻が負担すべき割合は5分の3と評価される場合
夫から妻への財産分与=300万円×1/2-200万円×3/5=30万円

⑶ オーバーローンの場合

夫婦の全体財産がマイナスの場合には、財産分与はありません。
以下の事例1、事例2いずれも債務超過ですから財産の分与は行われないこととなります。

【事例1】
夫:不動産2000万円、負債3000万円
妻:資産、負債なし
【事例2】
夫:負債500万円
妻:資産、負債なし

もっとも、例えば、事例2がオーバーローンの自宅を売却した結果、夫が500万円の負債を背負ったという場合、その負債は夫婦共同の負債というべきものですから、妻にもその半分の負債を負担させるのが公平とも思えます。しかし、現在の実務ではそのような処理はなされていません。

5 最後に

以上、離婚時の財産分与における借金の扱いについてご説明しました。とりわけ財産分与における住宅ローンの処理方法はケースごとに様々な工夫が考えられるところです。

財産分与における借金の扱いについては、離婚事件の経験豊富な弁護士にご相談ください。

この記事を書いたのは

代表弁護士春田 藤麿
愛知県弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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