不貞行為の慰謝料は二重取りできるのか

不貞行為の慰謝料は二重取りできるのか

2020年01月29日

1 はじめに

配偶者が不貞行為をした場合、不倫をされた配偶者は、配偶者と浮気相手の二人に対して慰謝料を請求することができます。

当初は浮気相手にだけ請求をしていたけれども、後に夫婦関係が悪化したので不倫配偶者に慰謝料を請求したいというケースやその逆のケースもあるでしょう。

あるいは、ひどく精神的苦痛を受けたので一方から慰謝料の支払いを受けるだけでは気が済まないという方もおられるでしょう。

そこで、今回は、不貞行為をした二人から慰謝料を二重取りすることができるのかについてご説明します。

2 不貞行為の慰謝料は双方に請求できる

不倫配偶者(不倫をした配偶者)と不倫相手は、不真正連帯債務者として連帯して慰謝料を支払う義務を負います。不真正連帯債務者というのは法律用語ですが、とりあえずは連帯債務者と同じようなものと考えていただいて差し支えありません。

この連帯して支払義務を負うというのは、不倫をされた配偶者は、不真正連帯債務者である不倫配偶者と不倫相手の双方に、慰謝料の全額を請求できることを意味します。

例えば、不倫配偶者と不倫相手が100万円の慰謝料の支払義務を負う場合、不倫をされた配偶者は、一方に100万円を請求することも、双方に100万円を請求することもできます。また、一方には20万円、他方には80万円のように双方に請求する金額も自由に決めることができます。

また、この連帯して支払義務を負うというのは、不倫配偶者と不倫相手の不真正連帯債務者の側からすると、支払うべき慰謝料金額の全額を支払い終えるまではともに支払義務を免れないということです。

例えば、不倫配偶者と不倫相手が100万円の慰謝料を支払う義務を負う場合、不倫配偶者が60万円支払ったとしても残り40万円について二人とも支払義務を負います。ですから、不倫をされた配偶者は双方に残り40万円の請求ができます。

3 不貞行為の慰謝料は二重取りできるのか

不倫をされた配偶者は、不真正連帯債務者である不倫配偶者と不倫相手の双方に慰謝料の全額を請求できると説明しました。

それでは、双方から慰謝料を二重取りすることもできるのでしょうか。例えば、適正な慰謝料が100万円のケースで、不倫配偶者と不倫相手の双方から100万円、合計200万円の慰謝料をとることはできるのでしょうか。

先に説明しましたとおり、不倫配偶者と不倫相手は、慰謝料100万円について連帯して支払義務を負っているだけであり、慰謝料200万円の支払義務を負っているわけではありません。ですから、原則として慰謝料の二重取りはできません。

そのため、二人に対して同時に裁判を提起した場合には、二人で連帯して100万円を支払えという判決が出ます。

また、別々に裁判を提起した場合にも、一方での裁判で支払った慰謝料金額については、他方の裁判でも主張されますので、他方の裁判では既に支払われた慰謝料金額分は減額された金額が認容されることになります。

4 不貞行為の慰謝料を二重取りが事実上できる場合

先に説明しましたとおり、裁判では慰謝料の二重取りはできませんが、裁判前の交渉においては事実上、二重取りが可能となるケースがあります。

まず、他方が慰謝料の請求を受け、慰謝料を支払ったという情報が不倫配偶者と不倫相手との間で共有されていないケースです。

例えば、不倫をされた配偶者が不倫相手から慰謝料100万円の支払いを受け、そのことを知らない不倫相手から更に慰謝料100万円の支払いを受けることがありえます。

このように裁判前の交渉においては事実上、慰謝料の二重取りが起こりえるのです。

また、不倫が原因で夫婦関係が破綻し、夫婦が離婚する場合にも事実上、慰謝料の二重取りが可能となるケースがあります。

不倫相手は不貞行為に関する慰謝料の支払義務だけを負いますが、不倫配偶者はそれに加えて、離婚の慰謝料の支払義務も負います。そして、不倫配偶者が支払う慰謝料は、いくらが不貞行為の慰謝料でいくらが離婚の慰謝料であるのか区別することは困難です。

また、慰謝料の金額を一律に算出する計算式はありませんので、裁判で判決を得ない限りその金額は確定されません。そのため、裁判前の段階では、不貞行為の慰謝料も離婚の慰謝料もその金額が確定しない状態にあります。

そのため、例えば、不倫をされた配偶者が不倫配偶者から慰謝料200万円の支払いを受けた場合、そのうち幾らが不貞行為の慰謝料でいくらが離婚の慰謝料かわかりません。

不倫相手としては既に200万円の支払いを受けたのだから、自分の不貞行為の慰謝料の支払義務は残っていないと主張したいところですが、その立証は困難なため、追加で慰謝料を支払うことになる可能性が高いのです。

そうすると、不倫相手が払う慰謝料は不倫配偶者が支払った慰謝料と一部重なることになり、事実上、慰謝料の二重取りが起こることになります。

なお、慰謝料100万円前後が相場のケースで、離婚時に慰謝料1000万円が払われているようなケースでは、不倫相手の慰謝料支払義務も消滅したという主張が認められる可能性は十分あるでしょう。

5 最後に

以上、不倫配偶者と浮気相手から慰謝料の二重取りはできるのかについてご説明しました。

原則として、二重取りはできませんが、事実上、二重取りが可能となるケースもあります。最大限に精神的苦痛に対する賠償を受けたいという方は、不倫案件の経験豊富な弁護士にご相談ください。

この記事を書いたのは

代表弁護士春田 藤麿
愛知県弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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