【弁護士監修】不倫されても離婚しないと決めた方へ|慰謝料請求成功のための実践的ガイド

最終更新日: 2025年11月21日

不倫慰謝料は離婚しない場合も請求できる!?弁護士が解説

パートナーの不倫が発覚した時、胸をえぐられるような裏切りに、深い絶望と怒りを感じる方もいらっしゃるでしょう。しかし、様々な理由から「離婚しない」という選択をされることも少なくありません。

「離婚しないなら慰謝料は請求できないのでは?」 「今後の夫婦関係はどうなるのだろう?」

多くの疑問と不安を抱えていることと存じます。ご安心ください。不倫という裏切りに深く傷つきながらも、さまざまな理由で離婚しないという決断をされた方へ。その決断は決して間違いではございません。たとえ離婚しない道を選んだとしても、不倫による精神的苦痛に対して、慰謝料を請求する権利は正当に存在します。

この記事では、不倫慰謝料問題を数多く解決してきた弁護士が、「不倫されても離婚しないと決めた方」のために、慰謝料請求を成功させるための全知識と実践的なステップを徹底解説いたします。

法的根拠から、気になる慰謝料の相場、確実な証拠の集め方、そして慰謝料請求後の夫婦関係の再構築まで、読者様の疑問と不安を解消し、より良い選択をするためのロードマップを提供いたします。

この記事をお読みいただければ、以下のことがお分かりいただけます。

  • 離婚しない場合の不倫慰謝料請求の法的根拠と対象
  • 慰謝料の相場と、金額を左右する具体的な要素・メカニズム
  • 慰謝料請求に必要な証拠の種類、合法的な集め方、そして違法な証拠収集のリスク
  • 慰謝料請求ができない・困難なケース
  • 賢く交渉を進めるための具体的なステップ、示談書の重要性、そして弁護士の役割
  • 離婚しない選択をした後の、慰謝料請求が夫婦関係に与える影響と、関係再構築のためのヒント

ご自身の心の平穏を取り戻し、新たな一歩を踏み出すために、ぜひ最後までお読みください。

不倫慰謝料に詳しい弁護士はこちら

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
宅地建物取引士

詳しくはこちら

目次

そもそも不倫慰謝料とは?離婚しない場合でも請求できる法的根拠

「慰謝料」と聞くと、離婚とセットで考える方が多いかもしれません。しかし、不倫慰謝料は、離婚の有無にかかわらず請求できるものです。

不倫慰謝料とは「不法行為」に対する損害賠償

不倫慰謝料とは、配偶者の不貞行為(不倫)によって受けた精神的苦痛に対する損害賠償です。法的には、民法第709条が定める「不法行為」に該当します。

民法第709条(不法行為による損害賠償) : 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

不貞行為は、夫婦がお互いに貞操義務を負い、平穏な共同生活を送るという「法律上保護される利益(権利)」を侵害する行為とされます。したがって、不倫をした配偶者と不倫相手は、共同してこの利益を侵害した「共同不法行為者」となり、精神的苦痛を受けた配偶者に対して慰謝料を支払う義務を負います。

離婚の有無は慰謝料請求の要件ではない

最も重要なポイントは、この権利が「離婚するかどうか」とは直接関係なく発生するという点です。

  • 「婚姻共同生活の平穏」の侵害: 
    不貞行為によって侵害されるのは、「夫婦の平穏な共同生活を送る権利」です。この権利は、たとえ離婚しなくても侵害された事実に変わりはございません。
  • 精神的苦痛の発生: 
    不倫によって受けた精神的苦痛は、離婚しなくても存在するものです。

そのため、皆さまが離婚しない決断をされたとしても、不倫による精神的苦痛は慰謝料として請求できる正当な理由となります。

慰謝料を請求できるのは誰?

不倫慰謝料は、以下の両方または一方に請求できます。

  • 不倫相手: 不貞行為の相手方。最も一般的です。
  • 不倫をした配偶者: 不貞行為をしたご自身の夫または妻。

ただし、両方から二重取りはできない点に注意が必要です。例えば、慰謝料の総額が100万円とされた場合、不倫相手から100万円、配偶者からも100万円の合計200万円を受け取ることはできません。最終的に受け取る慰謝料の合計額が100万円になるように調整されます。

【詳細解説】離婚しない場合の不倫慰謝料の相場と金額が決まるメカニズム

不倫慰謝料の金額は、ケースによって大きく異なります。「ご自身のケースではいくらもらえるの?」という疑問は、当然のことでしょう。

離婚しない場合の不倫慰謝料の一般的な相場は、50万円から200万円程度とされています。これは、離婚する場合の相場(100万円~300万円程度)と比較すると低い傾向にございます。

この相場に差があるのは、離婚しない場合は「婚姻共同生活が継続する」という点で、精神的苦痛の程度が「婚姻共同生活が破壊される」離婚の場合よりも低いと判断されがちだからです。しかし、これはあくまで目安であり、個別の事情によって金額は大きく変動します。ここでは、慰謝料の金額を左右する主な要素と具体例を見ていきましょう。

慰謝料の金額を左右する主な要素

慰謝料の金額は、以下の要素を総合的に考慮して判断されます。

  • 不貞行為の期間と回数:
    関係が長期間(数ヶ月~数年)にわたる、または頻繁な関係(週に複数回など)があった場合、精神的苦痛が大きいと判断され、慰謝料は高くなる傾向があります。単発的な関係や短期間の不倫は、比較的低額になる可能性があります。
  • 不倫の悪質性・計画性:
    既婚者であることを隠して接近した、性的な関係を強要した、夫婦の自宅に侵入した、計画的に夫婦関係を壊そうとしたなど、悪質な態様の場合に増額要因となります。一方、酔った勢いでの一度きりの過ちや、誘惑に負けただけというようなケースは、悪質性が低いと判断されることがございます。
  • 婚姻期間の長さ:
    婚姻期間が長い(10年以上など)ほど、夫婦の共同生活が築き上げられているとみなされ、その侵害による精神的苦痛も大きいと判断されることがございます。短い婚姻期間では、慰謝料が低くなる傾向があります。
  • 夫婦関係の状況:
    不倫発覚時点で夫婦関係が円満であったほど、精神的苦痛が大きいと判断されやすくなります。すでに夫婦関係が冷え切っていた、家庭内別居中、あるいは別居が長期間にわたっていた場合は、慰謝料が減額されることがございます。ただし、単なる夫婦喧嘩が多い程度では「夫婦関係が破綻していた」とは認められにくいです。
  • 未成年の子どもの有無:
    未成年の子どもがいる場合、不倫行為が子どもに与える悪影響も考慮され、増額要因となることがございます。特に、不倫相手が妊娠・出産した場合は、高額な慰謝料が認められるケースもあります。
  • 精神的苦痛の程度:
    不倫によって精神科や心療内科を受診し、うつ病、適応障害などの診断書がある場合、精神的苦痛が大きいと客観的に判断され、増額要因となります。診断書がない場合でも、具体的な症状(不眠、食欲不振など)を詳細に説明できることが重要です。
  • 不倫発覚後の態度:
    不倫相手や配偶者が不倫発覚後、反省の態度を見せず、逆ギレしたり、夫婦関係の修復努力を拒否したりする場合、さらに精神的苦痛が増大したとみなされ、増額要因となることがございます。
評価項目増額要因(例)減額要因(例)
不貞行為の期間・回数長期間(1年以上)、頻繁(週に複数回)、継続的短期間(数ヶ月)、単発、一度きり
不倫の悪質性既婚隠し、強要、自宅での行為、計画的酔った勢い、誘惑に負けた、偶発的
婚姻期間長い(10年以上)、円満な夫婦生活短い(数年以内)、すでに冷え切った関係
夫婦関係の状況円満な関係、破綻の兆候なし冷え切った関係、家庭内別居中、別居
未成年の子どもの有無いる(子どもへの影響が大きい場合)、不倫相手との間に子がいるいない
精神的苦痛の程度精神科の診断書あり(うつ病など)、通院治療中軽度の精神的ダメージ、診断書なし
不倫発覚後の態度反省なし、逆ギレ、責任転嫁

謝罪、反省の態度、関係修復への努力

 

 

離婚しない場合の慰謝料具体例

以下に、離婚しないケースにおける慰謝料請求の具体例を示します。

不倫相手に慰謝料100万円を支払わせた事例

夫が出会い系サイトで知り合った女性と約1年にわたり不倫をしていたことが発覚し、奥さんは不倫相手に不倫慰謝料を請求するために弁護士に依頼をしました。

離婚しない場合で不倫期間は約1年でしたから相場は100万円ほどですが、請求金額は高めに設定し200万円としました。

ダブル不倫のケースで不倫相手には夫がいました。不倫相手の夫に不倫がばれてしまうと、こちらの夫も不倫慰謝料を請求されることになるため、自宅に内容証明を送るのではなく、弁護士から不倫相手に電話をして交渉を始めました。

当初不倫相手は200万円の支払いには難色を示していたものの、夫に知られる前に早期に解決することを希望したため、最終的には150万円を6回に分割して支払う内容にて和解が成立しました。

150万円を支払ってもらった後に、こちらの夫に75万円の求償請求をされては困りますので、求償権も放棄することも和解条件としました。

別居中の配偶者に慰謝料150万円を支払わせた事例

妻の里帰り出産中に夫が不倫をしていたことが発覚し、子どもと一緒に実家に戻って別居を始めて3か月が経ちました。

不倫相手についてはSNSのアカウントしかわからないため、不倫慰謝料を請求することができません。実家暮らしとはいえお金が要ることから、夫に対して婚姻費用の請求と慰謝料の請求をするために弁護士に依頼をしました。

婚姻費用については家庭裁判所の計算方法に従い毎月13万円と決まりました。

不倫慰謝料の相場は120万円、130万円ほどでした。早期解決を希望していたことから、相場とさほど変わらない150万円を請求したところ夫は争うことなく150万円を支払うことで合意しました。

150万円は一括で支払いを受け、婚姻費用について支払いが滞った場合に備えて公正証書を作成しました。

慰謝料請求の成否を分ける:【絶対NGあり】不倫の証拠収集徹底ガイド

慰謝料請求を成功させる上で、最も重要となるのが「不倫の証拠」です。証拠がなければ、相手に不倫を否定され、請求が困難になるばかりか、ご自身の主張が聞き入れられない可能性もございます。

ここでは、有効な証拠の種類と判断基準、合法的な収集方法、そして絶対に避けるべき違法な行為について解説いたします。

不倫慰謝料請求で有効な証拠の種類と判断基準

証拠は大きく分けて、不貞行為を直接示す「直接的な証拠」と、不貞行為を推認させる「間接的な証拠」があります。裁判では、これらの証拠を総合的に判断し、肉体関係の有無が認定されます。

【直接的な証拠】 肉体関係があったことを明確に証明できる証拠です。これがあれば、相手が不倫を認めざるを得なくなる可能性が非常に高まります。

  • 肉体関係中の写真や動画: 最も強力な証拠です。顔がはっきりと写っている、場所が特定できるなど、明確なものが有効です。
  • 不貞行為を認めた発言の録音・録画: 不倫相手や配偶者が肉体関係を認める発言をしている音声や動画データ。
  • ラブホテルや不倫相手の自宅への出入りがわかる写真・動画: 特に、深夜の出入りや長時間滞在を示すもの。複数回記録されているとより有力です。
  • 不倫相手との性交渉に関する自白: 書面(念書など)や、SNS上のやり取り、メールなどで具体的に性交渉の事実が明記されているもの。
  • 性病の診断書: 不倫相手との関係で性病に感染した場合、その事実を証明する診断書。

【間接的な証拠】 単独では決定打とならないこともありますが、複数組み合わせることで不貞行為があったことを強く推認させる証拠です。

  • LINE、メール、SNSのやり取り:
     「愛してる」「会いたい」「キスしたい」「一緒に過ごしたい」など、恋愛感情や性的な関係を匂わせるメッセージや、ホテルや旅行の計画、性的な内容の示唆、または性交渉後のやり取り(「昨日はありがとう」など)。
  • デートの記録:
    二人きりでの旅行写真、食事のレシート、映画のチケットなど、頻繁な密会を示すもの。SNSでの投稿や、同僚・友人からの証言(二人きりでの行動を目撃した証言)。
  • クレジットカードの利用明細:
    ラブホテルや不倫相手宅付近での利用履歴や不倫相手へのプレゼント購入履歴。
  • GPSによる位置情報:
    配偶者の行動パターンが不倫相手の自宅やホテルと一致する記録。
  • 探偵の調査報告書:
    プロの調査員が尾行・張り込みで得た客観的な証拠(写真、動画、行動記録など)。裁判でも非常に有力な証拠として扱われます。
  • 日記やメモ:
    不倫の事実や状況を詳細に記録したもの。ただし、日記はあくまでご本人の主観的な記録であるため、他の客観的証拠と合わせて提出されることが多いです。

証拠の種類

有効性

収集方法例

注意点

肉体関係中の写真・動画

専門家(探偵)に依頼

プライバシー侵害に注意

ラブホテル出入りの写真

専門家(探偵)に依頼、ご自身で撮影(状況判断)

特定のホテルへの単独出入りでは弱い

不貞行為を認めた録音

会話の録音

相手の同意なく盗聴すると違法になる場合も

LINE・メール

中〜高

配偶者のスマホ(同意の上で確認)

許可なく閲覧すると不正アクセス罪になる恐れ

探偵の調査報告書

探偵事務所に依頼

費用がかかる。信頼できる探偵を選ぶ

クレジットカード明細

低〜中

クレジットカード会社から取得

特定の店舗利用だけでは不倫の証拠としては弱い

合法的な証拠収集方法

証拠集めは、必ず合法的な方法で行ってください。 ご自身でできることと、専門家に依頼すべきことを見極めましょう。

ご自身でできること:

  • 配偶者のスマホやPCに、ご本人の同意を得てアクセスし、メッセージ履歴や写真を確認する。
  • ご自宅に届く郵便物や明細書(クレジットカード、ホテル宿泊履歴など)を確認する。
  • 配偶者の車に同乗した際に、ダッシュボードや座席の下に落ちているレシートなどを確認する。
  • 配偶者や不倫相手が自らSNSやブログに不倫を匂わせる投稿をしている場合、スクリーンショットで保存する。
  • 配偶者との話し合いの中で、不倫の事実や肉体関係について自白させる発言を引き出し、録音する(ご自身の会話を録音することは原則として合法です)

探偵への依頼:
ご自身での証拠収集が困難な場合、探偵事務所に依頼して客観的な証拠(写真、動画、行動記録など)を収集してもらうのが最も確実で安全な方法です。探偵の調査報告書は、裁判でも強力な証拠となります。費用はかかりますが、その後の慰謝料請求の成功率を大きく高めます。

【絶対NG】違法な証拠収集とリスク

証拠を集めたいお気持ちは痛いほど分かりますが、違法な手段での証拠収集は絶対に避けてください。 証拠として認められないだけでなく、ご自身が刑事罰の対象となったり、損害賠償請求をされたりするリスクがございます。

  • 盗聴・盗撮: 配偶者や不倫相手の許可なく行うと、プライバシー侵害や住居侵入罪などに問われる可能性がございます。
  • GPSの無断設置: 相手の承諾なく車両や持ち物にGPS機器を設置すると、プライバシー侵害やストーカー規制法に抵触する可能性がございます。
  • スマホの無断閲覧・不正アクセス: 配偶者のスマホを許可なく覗いたり、パスワードを不正に入手して閲覧したりすると、不正アクセス禁止法に問われる可能性がございます。特に、PCやクラウドサービスへの不正アクセスも同様です。
  • 脅迫・恐喝: 証拠を突き付けて「不倫の事実をばらすぞ」と脅迫したり、無理やり自白させたりすることは、恐喝罪などに問われます。
  • 住居侵入: 不倫相手のご自宅に無断で侵入し、証拠を収集する行為。

違法行為は、ご自身を不利にするだけでなく、刑事罰や損害賠償の対象となる可能性がございます。必ず弁護士にご相談の上、適切な方法で証拠を収集しましょう。

弁護士に相談するタイミング

証拠集めは、不倫発覚の早い段階から弁護士にご相談いただくことをおすすめします。 どの証拠が有効か、どうすれば合法的に集められるかなど、専門家のアドバイスを受けることで、効率的かつ安全に手続きを進められます。 また、弁護士はプロバイダに対して情報開示請求を行うことで、不倫相手の氏名や住所を特定できる可能性もございます。

不倫慰謝料請求ができない・困難なケース

離婚しない場合でも慰謝料請求は可能ですが、全てのケースで請求できるわけではございません。以下のような場合は、慰謝料請求ができない、または困難になる可能性がございます。

  • 不倫相手が特定できない場合:
    慰謝料を請求するには、不倫相手の氏名と住所(または勤務先)が必要です。これらの情報が一切不明な場合、請求は極めて困難です。ただし、携帯電話番号が判明していれば、弁護士照会制度を利用して情報開示を求めることが可能な場合もございます。
  • 不倫相手が既婚者と知らなかった場合(過失もない場合):
    不貞行為は「故意または過失」によって他者の権利を侵害した場合に成立します。不倫相手が、ご自身の配偶者が既婚者であることを全く知らず、また知り得なかった(独身と信じるに足る理由があった)と証明できた場合、慰謝料請求はできません。ただし、既婚者ではないかと疑うべき状況があったにも関わらず、漫然と独身だと信じていた場合には「過失」が認められ、請求できる可能性がございます。
  • 夫婦関係がすでに破綻していた場合:
    不倫慰謝料は「婚姻共同生活の平穏」を侵害されたことに対する賠償です。不倫発覚時点で夫婦関係がすでに冷え切り、修復不可能な状態(=破綻)であったと認められる場合、侵害されるべき「平穏」が存在しないため、慰謝料請求はできません。ただし、単なる夫婦喧嘩が多い、会話が少ないといった程度では「破綻」とは認められにくく、数年間の別居期間があるなどの明確な事実が必要となります。
  • 時効が完成している場合:
    不倫慰謝料の請求権には時効がございます。
    ・不倫の事実と不倫相手を知ってから3年
    ・不倫のときから20年

     これらのいずれか早い方が経過すると、時効が完成し、原則として請求できなくなります。不倫発覚当初は請求を考えていなかったけれども、数年後にやはり責任を取らせたいと思って不倫慰謝料を請求したところ、既に時効が完成していたというケースはしばしばございますので注意が必要です。

不倫慰謝料の交渉術:成功に導くためのステップと弁護士活用のポイント

証拠が揃い、いよいよ慰謝料請求。ここからが「交渉」のフェーズです。感情的になりやすい場面ですが、賢く冷静に進めることが成功の鍵となります。

交渉の基本ステップ

交渉開始前の準備

慰謝料請求の目的の明確化: 金額だけでなく、不倫相手との関係解消、二度と連絡を取らないこと、謝罪など、何をもって解決としたいのかを具体的に設定いたしましょう。
感情的な準備: 相手との交渉は精神的に大きな負担を伴います。冷静さを保つための心構えをしておきましょう。感情的になると、交渉が不利に進むこともございます。
求償権に関する知識の再確認: 離婚しない場合、特に重要となる求償権(後述)について理解を深めておきましょう。

請求通知書の送付

不倫相手に対し、不貞行為の事実と慰謝料請求の意思を明確に伝える書面を送付いたします。内容証明郵便を利用することで、相手に心理的プレッシャーを与え、本気度を伝える効果がございます。これは弁護士にご依頼いただくことで、より効果的な内容にできます。

直接交渉・弁護士を介した交渉

相手が交渉に応じた場合、直接話し合いを行います。しかし、感情的になりやすく、口頭での約束はトラブルになりがちです。
より有利な条件を引き出したい場合や、直接交渉が困難な場合は、弁護士に交渉をご依頼いただくことが最も効果的です。弁護士は法的な根拠に基づき、冷静かつ的確に交渉を進めます。

裁判所を介さない解決手続き

弁護士を介した交渉でも合意に至らない場合、調停やあっせんといった裁判所を介さない解決手続きを利用することも可能です。

訴訟提起

上記全ての段階で合意が得られない場合、最終手段として裁判所に訴訟を提起いたします。裁判は時間と費用がかかりますが、裁判所の判断によって慰謝料額が確定いたします。

示談書の重要性:後々のトラブルを防ぐために

交渉がまとまったら、必ず「示談書(和解契約書)」を作成いたしましょう。示談書は、将来的なトラブルを防ぐための非常に重要な法的書面です。口約束ではなく、書面に残すことが何よりも大切です。

示談書には、少なくとも以下の項目を明確に記載する必要がございます。

  • 慰謝料の金額と支払方法: 
    一括払いか分割払いか、振込先、支払い期限など。
  • 清算条項: 
    今回の不貞行為に関する一切の請求を相互に放棄する旨。これにより、後から追加で請求されるリスクを防ぎます。
  • 接触禁止条項: 
    不倫相手がご自身の配偶者と今後一切接触しないこと、連絡を取らないこと、近づかないことなどを具体的に記載いたします。
  • 求償権放棄特約:
     不倫相手が配偶者に対して求償権を行使しないこと(離婚しない場合は特に重要)。

 

求償権とは何か? 

不倫慰謝料は、不倫相手と不倫をした配偶者が「共同不法行為者」として連帯責任を負います。そのため、不倫相手が慰謝料の全額を支払った場合、その一部を共同不法行為者であるご自身の配偶者に対して請求する権利(求償権)が発生いたします。 例えば、不倫相手が慰謝料100万円を支払った後、ご自身の配偶者に対して「自分は全額払ったのだから、半分(50万円)を負担してほしい」と求償請求する可能性があるのです。 皆さまが離婚しない場合、結局ご自身の家計からお金が動くだけになり、実質的な慰謝料の受け取り額が減ってしまうことになります。そのため、談書で不倫相手に求償権の放棄を明確に約束させることが非常に重要です。

 

  • 秘密保持条項: 
    不倫の事実や示談の内容を第三者に口外しないこと。
  • 違約金条項: 
    示談書の内容に違反した場合(例えば接触禁止に違反した場合など)のペナルティ(違約金)を定めます。

示談書の作成は専門的な知識が必要です。弁護士にご依頼いただくことで、法的効力のある適切な示談書を作成できます。

弁護士に依頼するメリット

不倫慰謝料請求は、法的知識、交渉術、そして精神的な負担が伴います。弁護士にご依頼いただくことで、以下のようなメリットが得られます。

  • 冷静かつ的確な交渉: 
    感情的にならず、法的な根拠に基づいた交渉を進められます。相手からの不当な反論や嫌がらせにもプロとして冷静に対応いたします。
  • 有利な条件の獲得: 
    専門知識と交渉経験に基づき、より適切な慰謝料額や条件(求償権放棄、接触禁止など)を引き出すことが期待できます。
  • 煩雑な手続きからの解放: 
    書類作成や相手とのやり取りなど、時間と労力がかかる手続きを全て任せられます。
  • 精神的負担の軽減: 
    不倫相手との直接交渉によるストレスから解放され、ご自身の心の回復に専念できます。
  • 求償権放棄など、専門的な対応: 
    離婚しない場合に特に重要な「求償権放棄」などの交渉も確実に進められます。
  • 違法な証拠収集の回避: 
    合法的な証拠収集方法についてアドバイスし、ご自身の法的リスクを回避いたします。
  • 訴訟に発展した場合の強力なサポート: 交渉が決裂し、訴訟に移行した場合も、一貫して皆さまの代理人として裁判手続きを進めます。
 弁護士に依頼するメリット弁護士に依頼しないデメリット
交渉の質法的根拠に基づく的確な交渉、有利な条件を引き出す感情的になりやすく、不利な合意に繋がりやすい、交渉決裂リスク
慰謝料額適正額、増額の可能性、求償権放棄の確保低額で合意してしまう、求償権放棄を見落とす
手続きの負担全て任せられる、時間と労力を節約精神的・時間的負担が大きい、手続きミスによる不利益
法的リスク違法行為を回避できる、相手からの訴訟リスクを軽減違法な証拠収集や脅迫のリスク、不当な請求を受けるリスク
精神的負担ストレスから解放され、心の回復に専念できる相手との直接交渉による精神的苦痛が続く

慰謝料請求後の夫婦関係:離婚しない選択をした方へ

慰謝料請求は、不倫問題の一つの解決策ですが、離婚しない選択をしたかtあにとっては、その後の夫婦関係がどうなるかという大きな課題が残ります。

慰謝料請求が夫婦関係に与える影響

慰謝料請求は、夫婦関係に様々な影響を与えます。

  • 関係修復のきっかけ: 
    不倫をした配偶者が事態の重大さを認識し、反省を深めることで、関係修復の第一歩となることがございます。特に不倫相手への慰謝料請求は、配偶者にとって不倫の結果を直視する機会となり得ます。
  • 感情的なしこり: 
    慰謝料請求によって一時的に問題が解決しても、信頼が失われたことによる感情的なしこりは残りやすいものです。特に、請求のプロセスで夫婦間の溝が深まる可能性もございます。
  • 夫婦間のパワーバランスの変化:
     慰謝料請求を通じて、一方的な力関係が生じる可能性もございます。これが関係修復にプラスに働く場合もあれば、新たな火種となる可能性もございます。
  • 子どもへの影響: 
    未成年の子どもがいる場合、ご両親の不和や不倫問題が与える影響は避けられません。慰謝料請求の過程で子どもを巻き込まない配慮が重要です。

夫婦関係を再構築するためのステップ

慰謝料請求後に関係を再構築するためには、以下の点に意識的に取り組むことが重要です。

  • 夫婦間の対話の重要性:
    不倫について徹底的に話し合い、お互いの気持ちを正直に伝え合う場を設けることが不可欠です。なぜ不倫が起きたのか、配偶者が何を反省しているのか、今後どうしたいのかを共有いたしましょう。相手の不倫に関する詳細な情報(いつ、どこで、どんな行為があったかなど)は、話し合わない方が良い場合もございます。深く掘り下げすぎると、精神的な苦痛が増大し、関係修復を困難にするからです。
  • 専門家(カウンセラーなど)の活用:
    夫婦だけで話し合うのが難しい場合や、感情の整理がつかない場合は、夫婦カウンセリングなど専門家のサポートを受けることも有効です。第三者の視点が入ることで、冷静な対話が可能になり、関係修復に向けた具体的なアドバイスを得られます。
  • 具体的なルール作りと再発防止策:
    「今後二度と不倫をしない」「不倫相手との連絡先を全て削除する」「怪しい行動をしない」「特定の時間や曜日は家族の時間とする」など、具体的な約束事を決めましょう。
    場合によっては、これらの約束事を誓約書や公正証書として文書化することもご検討ください。これは再発防止だけでなく、万が一再発した場合の証拠にもなり得ます。
  • 時間をかける覚悟:
    一度失われた信頼は、一朝一夕には回復しません。関係修復には長い時間と努力が必要であることを覚悟し、焦らずに取り組むことが大切です。互いの努力を認め合い、小さな進歩を大切にいたしましょう。
  • 自己ケアの重要性:
    不倫によって最も傷ついているのはご自身です。ご自身の心身の健康を最優先し、趣味や友人との時間を持つ、休息を取るなどして、心の安定を保つことも忘れないでください。ご自身が元気でいらっしゃることが、関係修復の第一歩となります。
  •  

慰謝料請求を「しない」という選択肢も

慰謝料請求は正当な権利ですが、あえて請求しないという選択も考えられます。

  • 請求しないメリット:
    不倫相手や配偶者との関係をこれ以上悪化させずに済む。
    交渉による精神的ストレスや時間的負担を避けられる。
    関係修復を最優先する場合、夫婦間の溝を深くせずに済む可能性。
  • 請求しないデメリット:
    精神的苦痛に対する賠償が得られない。
    相手が不倫の責任を十分に感じない可能性。
    割り切れない感情が残り続け、将来的な後悔につながる可能性。

どちらの選択をされるにしても、ご自身の気持ちと、その後の人生をどうされたいのかを熟慮することが重要です。弁護士は、請求しないという選択肢も含め、皆さまの最善の道を一緒に考えます。

まとめ:離婚しない選択でも、ご自身の権利を守るために

不倫はご自身にとって計り知れない苦痛をもたらすものです。しかし「離婚しない」という選択をしたとしても、その苦痛に対する慰謝料を請求する権利はございます。

この記事では、離婚しない場合の不倫慰謝料について、以下の点を解説いたしました。

  • 不倫慰謝料は、民法に基づく不法行為であり、離婚の有無に関わらず請求が可能です。不倫は「夫婦の平穏な共同生活」を侵害する行為だからです。
  • 慰謝料の相場は50万円~200万円程度ですが、不倫の期間・悪質性、夫婦関係の状況、精神的苦痛の程度など、様々な要素で大きく変動いたします。
  • 慰謝料請求には「客観的な証拠」が不可欠ですが、違法な方法での収集は絶対に避けましょう。法的に有効な証拠を、合法的な方法で集めることが重要です。
  • 請求が困難なケース(不倫相手が不明、夫婦関係の破綻、時効など)や、求償権のリスクにも注意が必要です。
  • 交渉は冷静に進め、示談書には求償権放棄特約を含めることが、離婚しない場合には特に重要です。
  • 弁護士に依頼することで、皆さまの精神的負担を軽減し、より有利で確実な解決に導くことができます。
  • 慰謝料請求後も、夫婦関係をどうするか、対話と時間をかけて向き合うことが大切です。カウンセリングなどの専門家のサポートも有効です。

離婚しないけれども、不倫相手には責任を取ってほしい。高額な慰謝料を請求されて不安。どのような状況であっても、最善の解決をするためには、不倫問題に強い実績ある弁護士にご相談ください。

ご自身の権利を守り、心の平穏を取り戻し、新たな一歩を踏み出すために、私たち弁護士が全力でサポートいたします。

 

 

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