【弁護士監修】不倫されても離婚しないと決めた方へ|慰謝料請求成功のための実践的ガイド

最終更新日: 2026年02月05日

不倫慰謝料は離婚しない場合も請求できる!?弁護士が解説

パートナーの不倫が発覚した時、胸をえぐられるような裏切りに、深い絶望と怒りを感じる方もいらっしゃるでしょう。しかし、様々な理由から「離婚しない」という選択をされることも少なくありません。

「離婚しないなら慰謝料は請求できないのでは?」 「今後の夫婦関係はどうなるのだろう?」

多くの疑問と不安を抱えていることと存じます。ご安心ください。不倫という裏切りに深く傷つきながらも、さまざまな理由で離婚しないという決断をされた方へ。その決断は決して間違いではございません。たとえ離婚しない道を選んだとしても、不倫による精神的苦痛に対して、慰謝料を請求する権利は正当に存在します。

この記事では、不倫慰謝料問題を数多く解決してきた弁護士が、「不倫されても離婚しないと決めた方」のために、慰謝料請求を成功させるための全知識と実践的なステップを徹底解説いたします。

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
宅地建物取引士

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そもそも不倫慰謝料とは?離婚しない場合でも請求できる法的根拠

「慰謝料」と聞くと、離婚とセットで考える方が多いかもしれません。しかし、不倫慰謝料は、離婚の有無にかかわらず請求できるものです。

不倫慰謝料とは「不法行為」に対する損害賠償

不倫慰謝料とは、配偶者の不貞行為(不倫)によって受けた精神的苦痛に対する損害賠償です。法的には、民法第709条が定める「不法行為」に該当します。

民法第709条(不法行為による損害賠償) : 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

不貞行為は、夫婦がお互いに貞操義務を負い、平穏な共同生活を送るという「法律上保護される利益(権利)」を侵害する行為とされます。したがって、不倫をした配偶者と不倫相手は、共同してこの利益を侵害した「共同不法行為者」となり、精神的苦痛を受けた配偶者に対して慰謝料を支払う義務を負います。

離婚の有無は慰謝料請求の要件ではない

最も重要なポイントは、この権利が「離婚するかどうか」とは直接関係なく発生するという点です。

  • 「婚姻共同生活の平穏」の侵害: 
    不貞行為によって侵害されるのは、「夫婦の平穏な共同生活を送る権利」です。この権利は、たとえ離婚しなくても侵害された事実に変わりはございません。
  • 精神的苦痛の発生: 
    不倫によって受けた精神的苦痛は、離婚しなくても存在するものです。

そのため、皆さまが離婚しない決断をされたとしても、不倫による精神的苦痛は慰謝料として請求できる正当な理由となります。

慰謝料を請求できるのは誰?

不倫慰謝料は、以下の両方または一方に請求できます。

  • 不倫相手: 不貞行為の相手方。最も一般的です。
  • 不倫をした配偶者: 不貞行為をしたご自身の夫または妻。

ただし、両方から二重取りはできない点に注意が必要です。例えば、慰謝料の総額が100万円とされた場合、不倫相手から100万円、配偶者からも100万円の合計200万円を受け取ることはできません。最終的に受け取る慰謝料の合計額が100万円になるように調整されます。

離婚しない場合の不倫慰謝料の相場と事例

不倫慰謝料の金額は、ケースによって大きく異なります。「ご自身のケースではいくらもらえるの?」という疑問は、当然のことでしょう。

離婚しない場合の不倫慰謝料の一般的な相場は、50万円から200万円程度とされています。これは、離婚する場合の相場(100万円~300万円程度)と比較すると低い傾向にございます。

この相場に差があるのは、離婚しない場合は「婚姻共同生活が継続する」という点で、精神的苦痛の程度が「婚姻共同生活が破壊される」離婚の場合よりも低いと判断されがちだからです。しかし、これはあくまで目安であり、個別の事情によって金額は大きく変動します。

慰謝料の金額を左右する要素については、以下の記事で詳しく解説しています。

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離婚しない場合の慰謝料具体例

以下に、離婚しないケースにおける慰謝料請求の具体例を示します。

不倫相手に慰謝料100万円を支払わせた事例

夫が出会い系サイトで知り合った女性と約1年にわたり不倫をしていたことが発覚し、奥さんは不倫相手に不倫慰謝料を請求するために弁護士に依頼をしました。

離婚しない場合で不倫期間は約1年でしたから相場は100万円ほどですが、請求金額は高めに設定し200万円としました。

ダブル不倫のケースで不倫相手には夫がいました。不倫相手の夫に不倫がばれてしまうと、こちらの夫も不倫慰謝料を請求されることになるため、自宅に内容証明を送るのではなく、弁護士から不倫相手に電話をして交渉を始めました。

当初不倫相手は200万円の支払いには難色を示していたものの、夫に知られる前に早期に解決することを希望したため、最終的には150万円を6回に分割して支払う内容にて和解が成立しました。

150万円を支払ってもらった後に、こちらの夫に75万円の求償請求をされては困りますので、求償権も放棄することも和解条件としました。

別居中の配偶者に慰謝料150万円を支払わせた事例

妻の里帰り出産中に夫が不倫をしていたことが発覚し、子どもと一緒に実家に戻って別居を始めて3か月が経ちました。

不倫相手についてはSNSのアカウントしかわからないため、不倫慰謝料を請求することができません。実家暮らしとはいえお金が要ることから、夫に対して婚姻費用の請求と慰謝料の請求をするために弁護士に依頼をしました。

婚姻費用については家庭裁判所の計算方法に従い毎月13万円と決まりました。

不倫慰謝料の相場は120万円、130万円ほどでした。早期解決を希望していたことから、相場とさほど変わらない150万円を請求したところ夫は争うことなく150万円を支払うことで合意しました。

150万円は一括で支払いを受け、婚姻費用について支払いが滞った場合に備えて公正証書を作成しました。

慰謝料請求の成否を分ける不倫の証拠

慰謝料請求を成功させる上で、最も重要となるのが「不倫の証拠」です。証拠がなければ、相手に不倫を否定され、請求が困難になるばかりか、ご自身の主張が聞き入れられない可能性もございます。

法的に有効な証拠については、以下の記事で詳しく解説しています。

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不倫慰謝料請求ができない・困難なケース

離婚しない場合でも慰謝料請求は可能ですが、全てのケースで請求できるわけではございません。以下のような場合は、慰謝料請求ができない、または困難になる可能性がございます。

  • 不倫相手が特定できない場合:
    慰謝料を請求するには、不倫相手の氏名と住所(または勤務先)が必要です。これらの情報が一切不明な場合、請求は極めて困難です。ただし、携帯電話番号が判明していれば、弁護士照会制度を利用して情報開示を求めることが可能な場合もございます。
  • 不倫相手が既婚者と知らなかった場合(過失もない場合):
    不貞行為は「故意または過失」によって他者の権利を侵害した場合に成立します。不倫相手が、ご自身の配偶者が既婚者であることを全く知らず、また知り得なかった(独身と信じるに足る理由があった)と証明できた場合、慰謝料請求はできません。ただし、既婚者ではないかと疑うべき状況があったにも関わらず、漫然と独身だと信じていた場合には「過失」が認められ、請求できる可能性がございます。
  • 夫婦関係がすでに破綻していた場合:
    不倫慰謝料は「婚姻共同生活の平穏」を侵害されたことに対する賠償です。不倫発覚時点で夫婦関係がすでに冷え切り、修復不可能な状態(=破綻)であったと認められる場合、侵害されるべき「平穏」が存在しないため、慰謝料請求はできません。ただし、単なる夫婦喧嘩が多い、会話が少ないといった程度では「破綻」とは認められにくく、数年間の別居期間があるなどの明確な事実が必要となります。
  • 時効が完成している場合:
    不倫慰謝料の請求権には時効がございます。
    ・不倫の事実と不倫相手を知ってから3年
    ・不倫のときから20年

     これらのいずれか早い方が経過すると、時効が完成し、原則として請求できなくなります。不倫発覚当初は請求を考えていなかったけれども、数年後にやはり責任を取らせたいと思って不倫慰謝料を請求したところ、既に時効が完成していたというケースはしばしばございますので注意が必要です。

不倫慰謝料の交渉術:成功に導くためのステップと弁護士活用のポイント

証拠が揃い、いよいよ慰謝料請求。ここからが「交渉」のフェーズです。感情的になりやすい場面ですが、賢く冷静に進めることが成功の鍵となります。

交渉の基本ステップ

交渉開始前の準備

慰謝料請求の目的の明確化: 金額だけでなく、不倫相手との関係解消、二度と連絡を取らないこと、謝罪など、何をもって解決としたいのかを具体的に設定いたしましょう。
感情的な準備: 相手との交渉は精神的に大きな負担を伴います。冷静さを保つための心構えをしておきましょう。感情的になると、交渉が不利に進むこともございます。
求償権に関する知識の再確認: 離婚しない場合、特に重要となる求償権(後述)について理解を深めておきましょう。

請求通知書の送付

不倫相手に対し、不貞行為の事実と慰謝料請求の意思を明確に伝える書面を送付いたします。内容証明郵便を利用することで、相手に心理的プレッシャーを与え、本気度を伝える効果がございます。これは弁護士にご依頼いただくことで、より効果的な内容にできます。

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直接交渉・弁護士を介した交渉

相手が交渉に応じた場合、直接話し合いを行います。しかし、感情的になりやすく、口頭での約束はトラブルになりがちです。
より有利な条件を引き出したい場合や、直接交渉が困難な場合は、弁護士に交渉をご依頼いただくことが最も効果的です。弁護士は法的な根拠に基づき、冷静かつ的確に交渉を進めます。

裁判所を介さない解決手続き

弁護士を介した交渉でも合意に至らない場合、調停やあっせんといった裁判所を介さない解決手続きを利用することも可能です。

訴訟提起

上記全ての段階で合意が得られない場合、最終手段として裁判所に訴訟を提起いたします。裁判は時間と費用がかかりますが、裁判所の判断によって慰謝料額が確定いたします。

示談書の重要性:後々のトラブルを防ぐために

交渉がまとまったら、必ず「示談書(和解契約書)」を作成いたしましょう。示談書は、将来的なトラブルを防ぐための非常に重要な法的書面です。口約束ではなく、書面に残すことが何よりも大切です。

不倫の示談書については、以下の記事で詳しく解説しています。

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慰謝料請求後の夫婦関係:離婚しない選択をした方へ

慰謝料請求は、不倫問題の一つの解決策ですが、離婚しない選択をしたかtあにとっては、その後の夫婦関係がどうなるかという大きな課題が残ります。

慰謝料請求が夫婦関係に与える影響

慰謝料請求は、夫婦関係に様々な影響を与えます。

  • 関係修復のきっかけ: 
    不倫をした配偶者が事態の重大さを認識し、反省を深めることで、関係修復の第一歩となることがございます。特に不倫相手への慰謝料請求は、配偶者にとって不倫の結果を直視する機会となり得ます。
  • 感情的なしこり: 
    慰謝料請求によって一時的に問題が解決しても、信頼が失われたことによる感情的なしこりは残りやすいものです。特に、請求のプロセスで夫婦間の溝が深まる可能性もございます。
  • 夫婦間のパワーバランスの変化:
     慰謝料請求を通じて、一方的な力関係が生じる可能性もございます。これが関係修復にプラスに働く場合もあれば、新たな火種となる可能性もございます。
  • 子どもへの影響: 
    未成年の子どもがいる場合、ご両親の不和や不倫問題が与える影響は避けられません。慰謝料請求の過程で子どもを巻き込まない配慮が重要です。

夫婦関係を再構築するためのステップ

慰謝料請求後に関係を再構築するためには、以下の点に意識的に取り組むことが重要です。

  • 夫婦間の対話の重要性:
    不倫について徹底的に話し合い、お互いの気持ちを正直に伝え合う場を設けることが不可欠です。なぜ不倫が起きたのか、配偶者が何を反省しているのか、今後どうしたいのかを共有いたしましょう。相手の不倫に関する詳細な情報(いつ、どこで、どんな行為があったかなど)は、話し合わない方が良い場合もございます。深く掘り下げすぎると、精神的な苦痛が増大し、関係修復を困難にするからです。
  • 専門家(カウンセラーなど)の活用:
    夫婦だけで話し合うのが難しい場合や、感情の整理がつかない場合は、夫婦カウンセリングなど専門家のサポートを受けることも有効です。第三者の視点が入ることで、冷静な対話が可能になり、関係修復に向けた具体的なアドバイスを得られます。
  • 具体的なルール作りと再発防止策:
    「今後二度と不倫をしない」「不倫相手との連絡先を全て削除する」「怪しい行動をしない」「特定の時間や曜日は家族の時間とする」など、具体的な約束事を決めましょう。
    場合によっては、これらの約束事を誓約書や公正証書として文書化することもご検討ください。これは再発防止だけでなく、万が一再発した場合の証拠にもなり得ます。
  • 時間をかける覚悟:
    一度失われた信頼は、一朝一夕には回復しません。関係修復には長い時間と努力が必要であることを覚悟し、焦らずに取り組むことが大切です。互いの努力を認め合い、小さな進歩を大切にいたしましょう。
  • 自己ケアの重要性:
    不倫によって最も傷ついているのはご自身です。ご自身の心身の健康を最優先し、趣味や友人との時間を持つ、休息を取るなどして、心の安定を保つことも忘れないでください。ご自身が元気でいらっしゃることが、関係修復の第一歩となります。

慰謝料請求を「しない」という選択肢も

慰謝料請求は正当な権利ですが、あえて請求しないという選択も考えられます。

  • 請求しないメリット:
    不倫相手や配偶者との関係をこれ以上悪化させずに済む。
    交渉による精神的ストレスや時間的負担を避けられる。
    関係修復を最優先する場合、夫婦間の溝を深くせずに済む可能性。
  • 請求しないデメリット:
    精神的苦痛に対する賠償が得られない。
    相手が不倫の責任を十分に感じない可能性。
    割り切れない感情が残り続け、将来的な後悔につながる可能性。

どちらの選択をされるにしても、ご自身の気持ちと、その後の人生をどうされたいのかを熟慮することが重要です。弁護士は、請求しないという選択肢も含め、皆さまの最善の道を一緒に考えます。

まとめ:離婚しない選択でも、ご自身の権利を守るために

不倫はご自身にとって計り知れない苦痛をもたらすものです。しかし「離婚しない」という選択をしたとしても、その苦痛に対する慰謝料を請求する権利はございます。

この記事では、離婚しない場合の不倫慰謝料について、以下の点を解説いたしました。

  • 不倫慰謝料は、民法に基づく不法行為であり、離婚の有無に関わらず請求が可能です。不倫は「夫婦の平穏な共同生活」を侵害する行為だからです。
  • 慰謝料の相場は50万円~200万円程度ですが、不倫の期間・悪質性、夫婦関係の状況、精神的苦痛の程度など、様々な要素で大きく変動いたします。
  • 慰謝料請求には「客観的な証拠」が不可欠ですが、違法な方法での収集は絶対に避けましょう。法的に有効な証拠を、合法的な方法で集めることが重要です。
  • 請求が困難なケース(不倫相手が不明、夫婦関係の破綻、時効など)や、求償権のリスクにも注意が必要です。
  • 交渉は冷静に進め、示談書には求償権放棄特約を含めることが、離婚しない場合には特に重要です。
  • 弁護士に依頼することで、皆さまの精神的負担を軽減し、より有利で確実な解決に導くことができます。
  • 慰謝料請求後も、夫婦関係をどうするか、対話と時間をかけて向き合うことが大切です。カウンセリングなどの専門家のサポートも有効です。

離婚しないけれども、不倫相手には責任を取ってほしい。高額な慰謝料を請求されて不安。どのような状況であっても、最善の解決をするためには、不倫問題に強い実績ある弁護士にご相談ください。

ご自身の権利を守り、心の平穏を取り戻し、新たな一歩を踏み出すために、私たち弁護士が全力でサポートいたします。

 

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