発信者情報開示請求の示談金や賠償金はどれくらい?示談交渉についても弁護士が解説
最終更新日: 2024年11月07日
- 発信者情報開示請求の示談金や賠償金はいくらになる?
- 発信者情報開示請求にかかった弁護士費用も賠償金になるの?
- 賠償金を減額する示談交渉はできるの?
インターネット上の匿名性ゆえに安易にしてしまった名誉毀損やプライバシー侵害、著作権侵害について発信者情報開示請求がなされるケースが非常に増えています。
ほとんどの方が、発信者情報開示請求を経験するのは初めてですから、一体どれほどの賠償金になるのか、示談の余地はあるのかと疑問に思うのは当然です。
今回は、発信者情報開示請求における賠償金の相場や示談による減額の可能性について専門弁護士が解説します。
専門弁護士による発信者情報開示請求の賠償金相場
発信者情報開示請求におけるその他の賠償金について見ていきましょう。発信者情報開示請求の理由としては、名誉毀損やプライバシー侵害、著作権侵害が多いので、ここではこれらの賠償金についてご説明します。
名誉毀損やプライバシー侵害の慰謝料
名誉毀損やプライバシー侵害があった場合、賠償金として慰謝料を支払うことになります。
海外の裁判では莫大な金額の慰謝料が認められることがありますが、日本の裁判所が認める慰謝料の金額はさほど高額ではありません。
被害者が個人の場合、10万円から50万円程が慰謝料の相場です。ただし、非常に悪質な場合には100万円ほどの慰謝料が認められることもあります。
被害者が会社や、個人事業主の場合は、事業に与える影響が大きかった場合には50万円から100万円程の慰謝料が相場となります。
著作権侵害
ファイル共有ソフトを利用した違法ダウンロード、違法アップロードによる著作権侵害のケースは多くあります。
著作権法114条1項に著作権侵害による損害賠償金額の推定規定があります。これによれば、販売利益×ダウンロード回数という計算式によって賠償金の金額が算定され、賠償金は、数百万円から数千万円となることもあります。
みんなやってるからバレないだろうと安易にファイル共有ソフトで著作権侵害をしてしまう方は多いのですが、バレたときの賠償金はこのように莫大となる恐れがあります。
発信者情報開示請求で賠償金は減額できる?
このように発信者情報開示請求を受けた場合の賠償金は、著作権侵害であれば非常に高額となりますし、名誉毀損やプライバシー侵害であっても弁護士費用の賠償金も含めると100万円を超える可能性は十分あります。
このような賠償金を減額するためには、当初から発信者情報の開示に協力して、被害者に対して誠実に謝罪し、示談交渉をする必要があります。
減額をしてもらうための交渉には様々なポイントがあります。賠償金の減額をするためには、示談交渉に慣れている弁護士に依頼しましょう。
発信者情報開示請求で賠償金が確定する前に示談は可能?
発信者開示請求の事件では必ず裁判になるわけではなく示談をすることも可能です。
請求を受けた側でしたら、プロバイダから発信者開示請求に係る意見照会を受けた時点で、権利侵害の事実を認め、被害者と示談交渉をすることが可能です。
被害者である発信者開示請求の請求側でしたら、発信者の氏名や住所などの情報開示を受けた場合、必ず損害賠償を求めて民事訴訟を起こさなければいけないわけではありません。民事訴訟には費用と時間がかかりますので示談で解決することを希望する方もおられるでしょう。
裁判ではなく示談で解決することを目指すのでしたら、開示情報に基づき発信者に連絡をして示談を持ち掛けることが可能です。
発信者情報開示請求で専門弁護士が賠償金を減額した事例
最後に、発信者情報開示請求を受け、その後に賠償金の支払いを求められたケースでの減額事例について見ておきましょう。
転職サイトに悪評を投稿した事例
Aさんは、退職した会社の元上司について、部下に暴言や暴力を振るっている、社内不倫をしていると転職サイトに虚偽の投稿をしました。
その数か月後のある日、プロバイダから「発信者情報開示請求に係る意見照会書」が届き、元上司から発信者情報開示請求をされたことを知り、直ぐに弁護士に依頼をしました。
違法な権利侵害に該当することは明白でしたので、発信者情報は開示され、Aさんが投稿者であると特定されることは確実でした。そこで、開示には同意して、直ぐに元上司に謝罪し、示談を申し入れる方針としました。
当然ながら元上司は強く怒っており刑事告訴も辞さないという姿勢で、当初は賠償金として300万円の支払いを請求されました。しかし、交渉を重ねた結果、最終的には50万円の示談金で示談が成立しました。
ファイル共有ソフトで著作権侵害をした事例
Bさんは、ファイル共有ソフトを利用して多数のAVをダウンロードしていました。するとある日、プロバイダから書類が届き、AVメーカーから著作権侵害を理由に発信者情報開示請求を受けたことを知り、弁護士に依頼をしました。
違法な権利侵害であることは明白で、発信者情報開示が認められることは確実でしたから、開示には同意をした上で、AVメーカーと示談を目指す方針となりました。
民事訴訟となった場合には数百万円などの高額な賠償金となることが想定されましたが、Bさんにはそこまでの資力はありませんでした。相手弁護士と協議を重ねた結果、最終的には100万円以下の示談金で示談が成立しました。
発信者情報開示請求の弁護士費用も賠償金に?
発信者情報開示請求に要する弁護士費用は、50万円から100万円ほどが相場です。発信者情報開示請求がなされた後、このような弁護士費用の全額を賠償金として加害者が支払うことになるのでしょうか。
多くの民事訴訟では、弁護士に依頼をしたとしてもその弁護士費用の全額が賠償金として裁判所が認めることはなく、ほとんどの場合、認められた賠償金の金額の1割だけが弁護士費用の賠償金として認められるのみです。
例えば、不倫の慰謝料として100万円が認められた場合、弁護士費用として認められる賠償金は10万円のみです。
このように弁護士費用について低額な賠償金しか認められない理由は、簡単ではないとはいえ、弁護士に依頼しなくとも自分で裁判所に訴状を提出して裁判をすることができなくはないからです。
しかし、発信者情報開示請求の手続きは専門性が高く、弁護士に依頼しなければ利用することが困難な手続きです。そのため、発信者情報開示請求に要した弁護士費用の全額を賠償金として認めた裁判例もあります。
もちろん、常に弁護士費用の全額が賠償金として認められるとは限りませんが、このような裁判例があるように弁護士費用の全額を賠償金として支払いを命じられる可能性があります。
まとめ
以上、発信者情報開示請求における賠償金の相場や減額の可能性、減額事例などについて解説しました。
発信者情報開示請求をした後に加害者に高額な賠償金を支払わせられるケースがありますし、請求を受けた側としては賠償金を支払わずに済むケースもあります。
発信者情報開示請求の当事者となったときは、一日も早く専門の弁護士相談し、適切な対応をするようにしましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。