子連れでの再婚のリスクや離婚時の親権などを専門弁護士が解説
最終更新日: 2024年01月24日
- 子どものいる人と親密になり結婚したが、その子どもと折り合いが悪く離婚を検討している
- 子連れ再婚をしたものの離婚したい。離婚条件の話し合いが複雑化しないか不安だ
- 配偶者の連れ子と養子縁組をしたが、離婚した場合は養育費は私が払うのだろうか?
子どもを連れた人と親しくなり結婚した、または子どもを連れて離婚後に親しくなった相手と再婚した、という方も多いでしょう。
しかし、再婚後に何らかの理由で、離婚する事態になるケースもあります。
そのようなときは、配偶者の連れ子に養育費を支払う必要があるのか、親権はどうなるのか、対応に悩んでしまう場合もあるでしょう。
そこで今回は、多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、子連れ再婚後の離婚で親権者を選ぶ方法、子連れ再婚した後の離婚の手順等について詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 配偶者の連れ子とは当初仲良くしていても、配偶者との間に実子が生まれれば、急速に連れ子への愛情が薄れる可能性がある
- 連れ子と折り合いが悪く離婚する場合は、必ずしも連れ子の養育費を支払う義務はない
- 子連れ再婚後の離婚も、基本的に協議、調停、裁判という手順で進めていく
子連れ再婚は離婚リスクがなぜ高いのか
子連れ再婚をした夫婦が離婚してしまう可能性は、初婚の夫婦よりも高いといわれています。
理由はいろいろ考えられますが、こちらでは連れ子との関係性に絞り、離婚に至る理由を説明しましょう。
連れ子との関係
子どものいる人と親密になり結婚した場合、夫婦関係は良好でも、次のような理由で離婚を決意するケースがあります。
- 配偶者の連れ子に愛情がわかない
- 連れ子がいるので自分の安らげる場所を見つけられない
- 連れ子と仲良くしたいが、なかなか心を開いてもらえない
- (専業主婦の場合)夫の連れ子の育児をしなければならないのが苦痛
子どもは実親と離れた喪失感、孤独感がなかなか癒されない可能性もあります。
そのような連れ子との信頼関係が思うように築けず、苦悩する再婚相手も多いでしょう。
実の子との愛情の差
連れ子と何とか良好な関係を築けても、配偶者との間に実子ができると、愛情に差が生じてしまう場合があります。
次第に実子だけに愛情が偏り、連れ子との関係がギクシャクしてしまうかもしれません。
連れ子との関係が悪化してしまうと、離婚に発展してしまう可能性もあるでしょう。
子連れ再婚後の離婚で親権はどうなる?
離婚を決意した場合、配偶者の連れ子の親権がどうなるかは、ケースによって変わってきます。
こちらでは養子縁組をしている場合、していない場合、それぞれのケースをみてみましょう。
養子縁組をしている場合
養子縁組とは、血縁関係にない者同士が法律上の親子関係を結ぶ制度です。
つまり、養子縁組をした場合、自分と配偶者の連れ子は法律上の親子となります。そのため、離婚するときはどちらが親権者になるのか決めなければなりません。
裁判離婚ではほとんどの場合、母親が親権者になります。しかし、いろいろな事情を考慮し、自分が養子(連れ子)の親権者になる可能性もあります。
ただし、配偶者との離婚と共に養子とも離縁(養子縁組の解消)したときは、子どもを連れてきた配偶者が元通り親権者となります。
養子縁組をしていない場合
そもそも連れ子と養子縁組をしていなかった場合は、子どもを連れてきた配偶者が親権者です。離婚するときに、どちらが親権者になるのか決める必要はありません。
子連れ再婚後の離婚で養育費はどうなる?
離婚するときに、配偶者の連れ子の養育費をどうするかもケースによって対応の仕方が変わります。
養子縁組をしている場合
養子縁組したときは自分と配偶者の連れ子は法律上の親子になるので、離婚して親権者とならなかった場合は、養育費の支払いに応じる必要があります。
ただし、離婚するときに養子とも離縁したのであれば、親子関係が解消されるので、子どもの扶養義務もなくなります。よって、連れ子の養育費を支払う必要はありません。
養子縁組をしていない場合
連れ子と養子縁組をしていなかった場合は、子どもの扶養義務はないので、養育費の支払いは不要です。
親権者は養育費をどうすればよいか悩むかもしれませんが、このケースでは前に離婚した相手(子どもの実親)へ養育費の支払いを請求できます。
子連れ再婚後の離婚で決めるべきこと
離婚する場合に連れ子と離縁するかどうかは、慎重に検討する必要があります。
養親となっていた場合は、養子の行く末を案じる人も多いでしょう。
養子を離縁せずに養育費を支払うと決めた場合、様々な事情(例:実子の誕生等)も含めて適正な金額を話し合う必要があります。
こちらでは、裁判所が公表している「養育費・婚姻費用算定表」を参考に、各ケースに応じた養育費の金額の目安を算定してみましょう。
実子がいない場合
養子(連れ子)の養育費のみを検討すればよい場合の養育費の金額は、次の通りです。
(例)
- 養育費を支払う側:夫(会社員年収800万円)
- 養育費を受け取る側:妻(パート従業員年収180万円)
- 養子1人:10歳(小学生)
算定表を用いると、離婚時の養育費は毎月約8万2,000円が目安です。各家庭の事情によっては、養育費をさらに増額する必要もあるでしょう。
実子がいる場合
実子をどちらが養育するかによって養育費の支払額は異なってきます。
(例)
- 養育費を支払う側:夫(会社員年収800万円)
- 養育費を受け取る側:妻(パート従業員年収180万円)
- 養子1人:10歳(小学生)
- 夫の実子:5歳(保育園児)
ケース1:妻が連れ子と夫の実子の親権者となる場合
算定表を用いると、養育費の金額は毎月約11万8,000円が目安です。
ケース2:妻が連れ子の親権者となり、夫が実子の親権者となる場合
算定表を用いると、養育費の金額は毎月約5万9,000円が目安です。
夫が実子の親権者となった場合でも、所得の低い妻に毎月養育費の支払いを行う必要があります。
子連れ再婚後の離婚の流れ
子連れ再婚をした夫婦の離婚も、基本的に協議、調停、裁判という形で進められます。
それぞれの方法についてみてみましょう。
協議
まずは夫婦で話し合いを行います。主に次のような内容を取り決めます。
- 養子縁組をしている場合は解消するかどうか
- 離縁しない場合は、親権をどうするか
- 離縁しない場合は、養育費の支払い方法、金額をどうするか
- 夫婦のどちらかが離婚原因をつくった場合は慰謝料
- 夫婦で婚姻中に得た財産の分与
話し合いで合意できた場合は、夫婦間で「離婚契約書(協議書)」を作成するか、公証人に「離婚公正証書」を作成してもらい、取り決めを書面化します。
調停
夫婦の話し合いがまとまらなかった場合は、「夫婦関係調整調停(離婚)」で解決を図ります。
相手方の住所地または当事者が合意で決めた家庭裁判所に申立てをします。調停は非公開で行われ、基本的に夫婦双方の出席が必要です。
調停時には家庭裁判所から選ばれた調停委員(2名)が夫婦の間に入り、夫婦の主張を聴いたうえで、助言や解決案を提示し、合意を目指します。
夫婦が合意すれば、裁判所は「調停調書」を作成します。
裁判
調停離婚が不成立になったときは、家庭裁判所に訴えて解決を図ります。
離婚訴訟が提起されれば、訴訟を提起した側が原告、訴えられた側を被告として、公開の法廷で互いの主張と証拠の提示を行わなければなりません。
裁判官は互いの主張と提出された証拠、その他一切の事情を考慮し、判決を下します。
ただし、裁判離婚を行うためには、次の条件のいずれかに合致している必要があります(民法第770条)。
- 配偶者に不貞行為があった
- 配偶者から悪意で遺棄された
- 配偶者の生死が3年以上明らかでない
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない
- その他婚姻を継続し難い重大な事由がある
なお、離婚訴訟の場合、有責配偶者(離婚する原因をつくった配偶者)からの離婚請求は原則として認められません。
まとめ
今回は多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、子連れ再婚した後の離婚で子どもの親権や養育費がどうなるのか等について詳しく解説しました。
離婚条件を取り決めるときは、子どもの精神面も考慮し、慎重に手続きを進めていきましょう。
子どもの親権や養育費について悩むときは、早く弁護士と相談し、有益なアドバイスを受けましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。