事務所用賃貸物件の立ち退き交渉をスムーズに進めるための知識と方法を解説
最終更新日: 2023年11月23日
- 事務所用賃貸物件の立ち退き交渉に関する基礎知識を整理したい
- 賃貸物件の事務所における立ち退き料の相場をつかみたい
- 賃貸物件の事務所における立ち退き交渉をスムーズに行いたい
ビルの取り壊しや自己使用のために事務所として賃貸している物件から借主に立退きをしてもらいたいという場合があるでしょう。逆に、事務所として賃借している物件から立退きを求められる場合もあるでしょう。いずれにしても正しい知識がないと、無用に争いが大きくなり、長期化する可能性があります。
今回は、多くの立ち退き問題を解決に導いてきた専門弁護士が、事務所用賃貸物件の立ち退き交渉をスムーズに進めていくためのポイントを説明します。専ら貸主の立場から説明をしていますが、借主側の方にも必要な知識が書かれていますのでご覧ください。
事務所用賃貸物件の立ち退き交渉に関する基礎知識
ここでは、事務所用賃貸物件の立ち退き交渉に関する基礎知識として、以下の2つを紹介します。
- 賃貸物件からの立ち退きとは
- 立ち退きの正当事由とは
それでは、1つずつ解説します。
賃貸物件からの立ち退きとは
基礎知識の1つ目は、賃貸物件からの立ち退きについてです。
立ち退きとは、事務所のオーナーが入居者である会社や店舗に対して、物件を退去するように申し出ることです。言い換えると、賃貸借契約の終了や契約満了で更新しない旨を伝えることを指します。
賃貸借契約とは、事務所として使える物件を賃料を発生させて使用してもらい、オーナーが収益を得る契約のことです。オーナーは貸主または賃貸人、入居者は借主または賃借人と言い換えられます。
賃貸借契約のうち普通借家契約では、契約満了後は立ち退きの正当事由がない限り、基本的にオーナーは契約更新を拒否できないことになっています。そのため、立ち退きを要求するときには、正当事由をもって契約更新を拒否することを伝える必要があります。
立ち退きの正当事由とは
基礎知識の2つ目は、立ち退きの正当事由についてです。
正当事由とは、オーナーが賃貸借契約を更新しないことや解約を申し出るときに必要となる理由のことです。正当事由がないときはオーナーの立ち退きを要求は認められません。
建て替えや取り壊しなどを理由、正当事由として伝えて事務所賃貸物件からの立ち退き交渉を行っていきます。
賃貸物件の事務所における立ち退き料の相場
立ち退き交渉を行うときに、オーナーは入居者に立ち退き料を支払う義務は法律上はありません。
ただし、オーナーの都合で入居者に立ち退きを要求する場合は、立ち退き料の提示なしで明渡しが認められることは稀なので、オーナー側から立ち退き料を支払うことが通常です。ここでは、賃貸物件の事務所における立ち退き料の相場について2つ紹介します。
- 最低限の補償
- 事務所用賃貸物件に生じるその他の補償
それでは、1つずつ解説します。
最低限の補償
賃貸物件の事務所における立ち退き料の相場の1つ目は、最低限の補償です。
法律では、立ち退き料の費用や内訳について具体的に決まってはいません。一般的に内訳として含まれることが多い項目は以下の3つです。
- 移転先の賃貸借契約における初期費用
- 引越し代金
- 3年ほどを目安とした家賃の差額
事務所用賃貸物件に生じるその他の補償
賃貸物件の事務所における立ち退き料の相場の2つ目は、事務所用賃貸物件に生じるその他の補償です。
事務所移転は大がかりな作業になることも多いため、移転の期間中は休業を余儀なくされることも少なくありません。そのため、事務所の移転期間に失う利益分や従業員の給料の補償などが必要となります。
その他、事務所用賃貸物件に生じるその他の補償に含まれるものとしては、造作の買取費用、移転先での改装費用などが挙げられます。
賃貸物件の事務所における立ち退き交渉をオーナーがスムーズに行うためのポイント
ここでは、賃貸物件の事務所における立ち退き交渉をオーナーがスムーズに行うためのポイントを3つ紹介します。
- 冷静に立ち退き交渉にあたる
- 予算を十分に確保しておく
- 早期から交渉に取り掛かる
それでは、1つずつ解説します。
冷静に立ち退き交渉にあたる
事務所の立ち退き交渉をオーナーがスムーズに行うためのポイントの1つ目は、冷静に立ち退き交渉にあたることです。
立ち退き交渉を行うときに感情的になって、暴言を吐いたり高圧的な態度をとったりするとトラブルの原因になりかねません。
事務所の立ち退きはデリケートな問題になるため、冷静かつ論理的に事情を説明し、落ち着いて話し合いを進めていくことが大切です。また、話し合いが難航することも考えられるので、交渉の記録をつけておくこともおすすめします。
予算を十分に確保しておく
事務所の立ち退き交渉をオーナーがスムーズに行うためのポイントの2つ目は、予算を十分に確保しておくことです。
法律上、立ち退き料の支払いは義務付けられていません。しかし、オーナー都合の立ち退きであれば入居者に立ち退き料を支払うことになるる可能性は高いです。特に、6か月以内の急な立ち退きをお願いするときには、迷惑料を含めて立ち退き料を多めに支払うこともあります。そのため、立ち退きを要求するときには、予算を十分に確保しておくことが大切です。
また、入居者との立ち退き交渉が難航したときにも、早期の立ち退きを実現させるために立ち退き料の上乗せが必要になることもあります。
ただし、一部の入居者だけ立ち退き料を上乗せすると、他の入居者にとっては不平不満の原因となりトラブルに発展する可能性があります。そのため、一部の入居者に対して多めに立ち退き料を支払ったことについては、秘密保持条項を約束させるなどの対処が必要です。
早期から交渉に取り掛かる
事務所の立ち退き交渉をオーナーがスムーズに行うためのポイント3つ目は、早期から交渉に取り掛かることです。
入居者との立ち退き交渉には、時間も手間もかかります。入居者が多ければ多いほどそれは顕著で、立ち退き交渉が難航することもあるでしょう。そのため、スムーズに立ち退き交渉を行って建て替えを行いたい時期までに立ち退きを完了させるには、できる限り早期から交渉に臨むことが大切です。
もちろん、賃貸事務所の入居者にも、様々な事情があります。急に移転を要求されても応じられないことは十分想定されます。その点でも、早期から交渉に取り掛かることが必要です。
また、できる限りスムーズに立ち退き交渉を進めたいときは、オーナー自ら不動産会社と連携して、入居者の新居探しをサポートすることも有効です。
賃貸物件の事務所における立ち退き交渉を行うときには弁護士に依頼しよう
事務所用賃貸物件の立ち退き交渉は、多くの手間と時間がかかるのが特徴です。そのうえ精神的負担も大きく、交渉が難航すればするほどその負担は増していきます。実際に、オーナーと入居者の間でトラブルになるケースは少なくありません。
入居者が立ち退きに応じなければ、そのまま居座られてしまう可能性もあります。そうなると最終的には裁判を起こしたうえで強制執行が必要となるため、手続きはますます煩雑になるばかりです。
トラブル回避のためには、専門の弁護士に相談したうえで、立ち退き交渉において適切な対応をとっていくことをおすすめします。弁護士費用はかかりますが、スピーディーかつさまざまな負担を軽減したうえで交渉ができることを考慮すれば、メリットは大きいと考えられます。
まとめ
今回は、事務所用賃貸物件の立ち退き交渉における基礎知識や立ち退き料の相場費用、交渉を成功させる秘訣などを解説しました。
賃貸物件で立ち退き交渉を行うときには、オーナーと入居者の間で交渉がうまくいかず、結果として大きなトラブルに発展するケースもよく見られます。物件のオーナーとして立ち退き交渉をスムーズに進めていくには、前もって知識をつけておくことと、事前に専門家に相談することが大切です。
そのため、立ち退きの基礎知識や立ち退き料の相場などのポイントを理解したうえで、必要に応じて立ち退き交渉の経験が豊富な弁護士に、事務所立ち退きについて相談しましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。