賃貸物件を建て替えたい!立ち退きのポイントを専門弁護士が解説

最終更新日: 2023年11月28日

賃貸物件を建て替えたい!立ち退きのポイントを専門弁護士が解説

  • 賃貸物件の建て替えのときの立ち退きに必要な知識は何か
  • 賃貸物件の建て替えのときの立ち退きの流れを知りたい
  • 賃貸物件の建て替えにともなう立ち退きをスムーズに行うポイントを知りたい。

賃貸物件を所有している賃貸人にとって、老朽化による建て替えは時期が来たら検討せざるを得ない事項の1つです。賃貸物件を建て替えるためには、貸借人に立ち退きを求めなければなりませんがスムーズに事が運ばないことも珍しくありません。

今回は、賃貸物件の建て替えにともなう立ち退きに必要な基礎知識やポイントなどについて解説します。

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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賃貸物件の建て替えと立ち退きに関する基礎知識

賃貸物件の建て替えと立ち退きに関する基礎知識を以下の2つの点について解説します。

  • 賃貸借契約の更新拒絶と正当事由
  • 賃貸物件建て替えのための立ち退きであっても正当事由が必要

賃貸借契約の更新拒絶と正当事由

賃貸借契約とは、賃貸人と賃借人の間で結ぶ、物件を有償で使用させることができるようになる契約を指します。賃貸借契約は一般的には2年ごとに更新され、更新することで引き続き賃貸物件に住むことができますが、賃貸借契約の更新を拒絶される場合があります。

借地借家法によって、原則として、賃貸人が一方的に更新を拒絶することはできません。賃借人保護のために、賃貸借契約を容易に終了させることのないよう、更新拒絶には正当事由が求められているからです。

賃貸物件建て替えのための立ち退きであっても正当事由が必要

賃貸物件を建て替えるための立ち退きでも正当事由が必要となります。これは、賃貸借契約を定めている借地借家法が、法的に弱い立場になりがちな賃借人を保護するために定められた法律のためです。

賃貸物件の立ち退きでは正当事由として下記のような事情が考慮されます。これらのうち一つ、あるいは複数が合わさって正当事由が認められる可能性が出てくるのです。

  • 賃貸人による建物の使用の必要が発生
  • 賃借人の債務不履行
  • 建物の老朽化による建て替え
  • 立ち退き料の支払いを行う

賃貸物件を建て替えたい!立ち退きまでの流れ

賃貸物件の建て替え計画から実際に立ち退きを告知するまでの流れについて解説します。

  • 建て替え計画の立案
  • 賃借人募集の停止
  • 賃借人への告知と説明

1つずつ見ていきましょう。

建て替え計画の立案

1つ目は、建て替え計画の立案です。

建て替え計画の立案は、建て替えを行う2~3年前より始めるとよいでしょう。物件を建て替えるには、既存の物件の取り壊しや物件の建設、立ち退き依頼などいくつもの工程が必要となるため、多くの時間を必要とします。

建て替えをスムーズに行うためにも、建て替え計画の立案は時間に余裕をもって行うことをおすすめします。

賃借人募集の停止

2つ目は、賃借人募集の停止です。

建て替え計画を進め始めるのと同時に、新しい賃借人の募集を停止する必要があります。賃借人が多ければ多いほど、立ち退き料が高額になったり、交渉の負担が増加するためです。

建て替えまでにまだ2,3年あり、その間に賃料収入を確保したい場合には契約更新のできない定期借家契約での募集にしましょう。

賃借人への告知と説明

3つ目は、賃借人への告知と説明です。

立ち退きを行うには正当事由が必要なため、どのような理由によって立ち退きを依頼するのかを説明することが大切です。

また、借地借家法上の更新拒絶通知は賃貸期間満了の1年前から6か月前までに行うことになっていますが、賃借人が余裕をもって移転を計画できるようこれとは別にもっと早い時期から立ち退きの告知を始めるべきです。

賃貸物件の建て替えにおける「立ち退き料」

賃貸物件の建て替えと立ち退き料について3つの点から解説します。

  • 立ち退き料とは
  • 正当事由と立ち退き料の関係
  • 立ち退き料を極力減らす方法

立ち退き料とは

立ち退き料とは、賃貸人が貸借人に対して物件からの立ち退きを求めるときにその補償として支払う費用です。

賃貸物件の場合、立ち退き料は概ね、移転費用、移転先の契約金、差額家賃の2,3年分を合計したものとなります。住居であれば100万円から200万円ほどが相場ですが、お店などのテナントの場合には経営状態などを考慮しますが数百万円になることは普通で、数千万円と高額になることもあります。

正当事由と立ち退き料の関係

賃貸借契約の更新を拒絶するためには、正当事由に加え、立ち退き料が必要となることが多いです。実際の裁判例を見ると多くの場合、立ち退き料を支払うことを引き換えに退去を認める判決・和解が認められています。

裁判においても、立ち退き料は正当事由との関係で金額が増減します。賃貸人側の正当事由が強く、立ち退きの正当性が大きく認められれば立ち退き料は減少し、そうでない場合は立ち退き料が増加する傾向にあります。

正当事由の中でも強い正当事由に該当するのが「賃貸人による建物の使用の必要が発生」した場合でしょう。賃貸人がやむを得ない事情でどうしてもその物件に住まなければならなくなったと認められることが多いからです。

賃貸物件の老朽化にともなう建て替えにおいての立ち退きは、老朽化の程度によって正当事由が変わってきます具体的な倒壊の危険を示すことができないのであれば、立ち退き料なしに無条件の退去は認められないでしょう。

立ち退き料を極力減らす方法

立ち退き料は、空室率に反比例しています。空室があまりない状態で建て替えをしようと思うと、賃借人が多いために立ち退き料が多くなってしまうだけでなく、交渉にも多くの時間が必要となります。賃借人が多いほど交渉が難航する可能性も高くなる傾向にあります。

一つの目安として、建て替えは空室率5割以上から検討を始め、空室率が8割以上となったところで本格的に建て替えに必要な一連の流れを開始することをおすすめします。建て替えを視野に入れているのであれば、空室率が5割以上となった時点で賃借人の募集を停止し、賃借人が自然に減っていくのを待つことも効果的です。

また、定期借家での募集を活用することも有効です。定期借家契約は一定の賃貸借期間が満了した時点で契約終了で退去することになるため、賃貸借契約のように更新の拒絶、立ち退き料の支払いをする必要がありません。そのため、結果的に立ち退き料を減らすことにもつながります。

賃貸物件の建て替えで立ち退きをスムーズにするポイント

賃貸物件の建て替えにともなう立ち退きをスムーズに行うためのポイントは以下の3つです。

  • 立案時から綿密に計画する
  • 転居先・移転先探しをサポートする
  • 弁護士に依頼する

1つずつ見ていきましょう。

立案時から綿密に計画する

1つ目は、立案時から綿密に計画することです。

建て替えにともなう立ち退きを行うにあたっては、立案時から綿密な計画を立てることがおすすめです。早めに事前通告することで、貸借人も余裕をもって引っ越しの準備を行うことができるようになるため、結果的にトラブル回避につながります。

立ち退きの告知は、書面だけでなく直接口頭でも説明するようにしておくと、貸借人に誠意が伝わりやすいと言えます。また、賃貸契約が終了するタイミングを見計らって告知をすることで、立ち退きをスムーズに行うことができるようになると言えます。

新しい住まい探しをサポートする

2つ目は、転居先・移転先探しをサポートすることです。

立ち退きによって貸借人は新たな物件を探す必要が出てくるため、しっかりと転居先・移転先を探すサポートを行うことをおすすめします。不動産会社にサポートを依頼することも効果的です。

また、引っ越しの支援も積極的に行うとよいでしょう。引っ越しの手配を賃貸人がまとめて行うことによって、引っ越しにかかる料金が割引されやすい傾向にあります。

弁護士に依頼する

3つ目は、弁護士に依頼することです。

建て替えにともなう立ち退きは、トラブルに発展する場合も少なくなく、本人同士での交渉でトラブルになった場合は問題解決までの期間も長引いてしまう可能性があります。一度トラブルに発展してしまうと、問題解決までは立ち退きも認められず貸借人が居座り続けることになります。

このような事態となってしまうと建て替え計画にも支障が出る他、裁判による明渡し請求が必要となる場合もあります。

このような問題が起こることを回避するためにも、経験値の高い弁護士に依頼することをおすすめします。弁護士に依頼することで、トラブルが発生する確率自体も低下する上に、万が一トラブルに発展してしまったとしても、解決までの道のりは円滑なものとなるでしょう。

なお、建て替えによる立ち退きにかかる解決策はケースバイケースであることから、対応に慣れた弁護士をおすすめします。

まとめ

本記事では、賃貸物件の建て替えにともなう立ち退きについて、基礎知識や具体的な流れ、スムーズに立ち退きを行うためのポイントについて解説しました。

立ち退きについての正しい知識を身につけておくことで、実際に立ち退きを行うことになった場合でも迷うことなく計画を立てることができるでしょう。立ち退きの知識を万全にして、スムーズな交渉を経て理想的な賃貸物件の建て替えを実現しましょう。

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