ストーカー事件を再犯したらどうなるのか?減刑のポイントと必要な弁護活動も解説

最終更新日: 2023年09月25日

ストーカー事件を再犯したらどうなるのか?減刑のポイントと必要な弁護活動も解説

  • ストーカー行為の再犯は高いと聞いている、再犯したら重い罪に問われるのだろうか
  • ストーカー行為の再犯をしても減刑される方法はあるのだろうか
  • ストーカー行為の再犯をした場合、弁護士はどのような活動をするのだろう

ストーカー行為とは、特定の人に対する好意の感情または怨念の感情を抱き、つきまといやまちぶせ、押しかけや無言電話等を繰り返す行為です。

以前ストーカー行為をしていた者が、再びストーカー行為を行う可能性もあります。

ストーカー行為の再犯で有罪となれば、懲役刑が2倍になってしまうおそれもあるので注意しましょう。

そこで今回は、数多くの刑事事件に携わってきた専門弁護士が、再犯で刑罰が減刑されるポイント、再犯のストーカー事件で期待できる弁護士の役割等について詳しく解説します。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。

  • 以前と同一被害者にストーカー行為をして再犯となると、厳しい判決を受ける可能性が高い
  • 再犯を防止するため、医療機関等の継続的な粘り強い治療を行う必要がある
  • 加害者がストーカー行為を再犯しても、弁護士は減刑を目指し、最善を尽くす

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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ストーカー事件で再犯したらどうなるのか

ストーカー行為で再犯となれば、示談交渉が難しくなり、検察官に起訴される可能性が高くなります。

更に、再犯になると懲役刑が加重されてしまうおそれもあります。

同一被害者の場合

以前と同一被害者にストーカー行為をして再犯となれば、重い刑罰を受ける可能性があります。

刑法では再犯者に対して刑を加重できると規定しています。「再犯の刑は、その罪について定めた懲役の長期の2倍以下」まで可能です(刑法第57条)。

ストーカー規制法違反の場合、再犯になると次のように懲役刑が加重されてしまいます。

  • 通常:1年以下の懲役→再犯の場合:2年以下の懲役
  • 禁止命令に違反しストーカー行為をした場合:2年以下の懲役→再犯の場合:4年以下の懲役

同一被害者の場合は、その悪質性が認められ最長4年の懲役刑を受けてしまうかもしれません。たとえ3年以下の懲役刑を受けても、判決のときは執行猶予も付かず、実刑判決が言い渡される可能性が高いです。

実刑判決となれば一定の刑期が経過するまで、ずっと刑務所に収容され、自宅へ戻れなくなってしまいます。

また、被害者は再犯の加害者へ不信感が募り、示談交渉にはまず応じてもらえないことでしょう。

更に、再犯の加害者は身柄を拘束されない在宅事件とはならない可能性が高まり、そうなると捜査機関から拘束され、厳しい取り調べが行われてしまいます。

出典:刑法|e-GOV法令検索|法務省

同一被害者でない場合

同一被害者と全く関係の無い人に、ストーカー行為をして再犯となった場合は、被害者との示談成立が期待できます。

この場合は、加害者本人ではなく弁護士が被害者と交渉し、示談の条件や示談金を調整していきます。示談の成立で、検察官が不起訴処分とする可能性は高まります。

たとえ、検察官から起訴され刑事裁判になっても、裁判所は示談となった事情を考慮し、執行猶予付き判決を言い渡す可能性があります。

ただし、加害者がストーカー行為を繰り返しているなら、専門家による治療で再犯防止を目指す必要があります。

ストーカー事件の再犯で刑罰が減刑される可能性を広げるポイント

ストーカー行為の再犯となれば、懲役刑が加重され実刑判決を受けるおそれもあります。

しかし、加害者が再犯防止に努めようと医療機関等で治療を受けるならば、減刑が受けられるかもしれません。

医療機関等の継続的な受診

医療機関の中には、ストーカー加害者用の専門治療(治療プログラム)を行うところがあります。

主に次のような治療が実施されます。

  • 問題の否認、他責、思い込み等、自分の思考の歪みについて振り返る、感情をうまくコントロールする方法を考え、再犯防止のための対処行動を検討する
  • 他者との間に適切な境界線を作り、それを維持するための考え方、今後の新たな対人関係を良好にするため、コミュニケーションスキルについて学ぶ
  • 思考や感情に振り回されず、自分自身の価値を大切にした生活を築くため、具体的なスキルを学ぶ

数日・数週間の治療で、劇的に加害者の精神状態が改善されるわけではありません。半年以上をかけ加害者が自分と向き合い、徐々に感情のコントロールができるよう治療を続けます。

治療等への本人の動機・意欲を高める

加害者本人が治療への意欲を高めるように、各機関で様々な試みが実施されています。

ストーカー加害者の専門治療は、現在のところ義務ではなく、治療するかどうかは本人次第です。

警察では今まで、個別の事案ごとに加害者へ精神的な治療を受けるよう、働きかけてきました。しかし、2022年にはストーカー加害者1,149人のうち、その1割程度しか治療に応じていません。

そこで、2023年から北海道、岩手、東京等をはじめ10都道府県警察で、禁止命令を受けた加害者全員に対し、電話連絡や訪問、精神的な治療を働きかけるアプローチが開始されています。

また、都道府県警察の中には医療機関と連携し、加害者に治療を受けさせる取り組みも導入、再犯防止に力を入れているところがあります。

治療費負担の軽減

ストーカー加害者用の専門治療を受ける場合は、やはり治療費がかかってしまいます。

特に心理士等のカウンセリングは保険適用外なので、加害者本人の負担額は多くなる可能性があります。

そこで都道府県警察の中には、カウンセリング費用を5回まで公費で負担し、一人でも多くの加害者が専門治療を受けられるように配慮するところもあります。

再犯のストーカー事件で必要な弁護活動

加害者が再犯ならば、これ以上ストーカー行為を繰り返さないよう、再犯防止を行う努力が求められます。

再犯防止のためには弁護士そして家族の協力が必要不可欠です。

再犯防止プログラムの紹介

弁護士からも専門施設を紹介し、専門の治療が受けられるように対応します。

専門の医療機関では、加害者が焦らずに、自己を客観的に判断し、人格を再形成できるような心理教育プログラムを提供します。

また、不起訴処分や執行猶予付き判決が得られるよう、弁護士は加害者に治療を受ける約束をさせ、加害者が再犯防止に積極的である旨を主張します。

家族の協力依頼

弁護士は、加害者の家族の力も借りて再犯防止を図っていきます。

ストーカー行為を繰り返す加害者は、家族との関係が希薄で孤独を感じている人も多いです。

幼少期や多感な時期に家族から愛情を得られなかった、兄弟とかなり比較された、虐待を受けた等、不幸な経験が大きく影響しているかもしれません。

希薄な家族関係を見直し、愛情や信頼の回復が再犯防止になる場合もあるので、家族の協力は必要不可欠といえます。

弁護士は家族にも働きかけて、家族の絆を回復させるサポートも行います。

示談交渉

弁護士はストーカー加害者が再犯を行った場合は、再犯防止の具体的な対応を強くアピールし、被害者との示談を目指します。

加害者が以前と同一被害者にストーカー行為をして再犯となった場合、弁護士が示談交渉を行っても、被害者は示談交渉に応じないかもしれません。

しかし、弁護士は諦めず次のように主張し、被害者へ示談に応じるよう働きかけを行います。

  • 加害者が真摯に反省し、再犯防止のための治療を受ける
  • 加害者は二度と被害者に近づかない、嫌がらせをしない
  • 示談金額の提示

被害者が弁護士の申し出に応じ、示談が成立したならば、不起訴処分または執行猶予付き判決に大きく前進します。

まとめ

今回は多くの刑事事件に携わってきた専門弁護士が、ストーカー行為をして再犯になるとどうなるのか、専門的な治療の必要性、弁護士に期待できる弁護活動等を詳しく解説しました。

加害者本人もストーカー行為をやめたいが、なかなかやめられないという場合があります。そのようなときは自分の力だけでなく、医療機関の治療を受けて、再犯防止を図っていきましょう。

弁護士もストーカー行為の再犯防止に向け、諦めずに加害者をサポートしていきます。

ストーカー行為の再犯で逮捕されたら、速やかに弁護士へ相談し、今後の対応を検討してみてはいかがでしょうか。

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