倉庫・工場の立ち退き料の相場とは?専門弁護士が解説
最終更新日: 2023年12月03日
- 倉庫・工場における立ち退き料の相場について基礎知識を整理したい
- 倉庫・工場における立ち退き料の相場の決め方と内訳を知りたい
- 倉庫・工場における立ち退き料の相場を知りたいときに気をつけるべきポイントとは
倉庫・工場から立ち退きを求められても、保管してある大量の商品や、機械を運ぶにも多額の費用を要しますし、代わりの倉庫・工場をすぐに見つけられるものではありません。このような倉庫・工場の立ち退き事案において、どの程度の立ち退き料であれば、双方が納得して合意に至るのでしょうか。
今回は、立ち退き問題を専門とする弁護士が倉庫・工場における立ち退き料について解説します。
倉庫・工場の立ち退き料の相場を理解するための基礎知識
倉庫・工場における立ち退き料の相場について解説する前に、基礎知識として以下の2つを紹介します。
- 立ち退き料の意味
- 法律上立ち退き料の支払い義務はあるのか?
立ち退き料の意味
知っておくべき基礎知識の1つ目は、立ち退き料の意味です。
端的に言えば、立ち退き料は賃貸人が賃借人に支払う補償です。その内容としては、移転費用、休業補償、迷惑料、移転先で家賃が上がる場合の差額賃料の補償などが含まれています。
法律上立ち退き料の支払い義務はあるのか?
知っておくべき基礎知識の2つ目は、法律上立ち退き料の支払い義務はあるのか?ということです。結論から言うと、法律上は賃貸人が賃借人に立ち退き料を支払う義務はありません。逆に言えば、賃借人が賃貸人に対して立ち退き料を請求する権利はないということです。
このように立ち退き料を支払う権利も義務もないのですが、現実には大半の立ち退き事案において立ち退き料が支払われています。
借地借家法では、賃借人を保護するために、賃貸借契約を終了させるためにはそのための正当事由が必要とされています。この正当事由は、賃貸人と賃借人それぞれの物件使用の必要性、従前の賃貸借の経緯、物件の現況などの事情を考慮して判断されます。しかし、これらの事情だけで正当事由が認められるケースは少なく、大半のケースではこれらの事情に加えて立ち退き料の支払いによる補完があって初めて正当事由が認められているのです。
このように立ち退き料の支払いがなければ正当事由が認められず賃貸借契約を終了させることができないことから、権利でも義務でもない立退き料の支払いが大半のケースで必要となっているのです。
倉庫・工場における立ち退き料の決め方と相場
次に、倉庫・工場における立ち退き料の決め方と相場を解説します。
基本的な考え方としては、立ち退きによって賃借人に発生する損失を積算し、それに迷惑料などを加算して金額を調整します。
倉庫や工場の場合、保管している物や大きな機械を移すのに多額の費用がかかります。また新たに不動産を借りる、施設を建設するためにも費用がかかりますし、工場を停止することによる損害もあるでしょう。
賃借人においてこれらの金額を見積もった上で合意可能な立退き料の金額を定め、賃貸人と交渉して最終的な立退き料の金額を決定します。
倉庫・工場における立ち退き料の相場を知るためのポイント
ここでは、倉庫・工場における立ち退き料の相場を知るためのポイントを3つ紹介します。
- 過去の判例を確認する
- 倉庫・工場は居住者の生活を予定していない
- 弁護士に相談する
過去の判例を確認する
倉庫・工場における立ち退き料の相場を知るためのポイントの1つ目は、過去の判例を確認することです。
立ち退き料の相場の目安を知りたいとき、過去に類似の判例があれば参考にできます。また、「正当事由」がどこまで認められるかも確認できます。
たとえば、倉庫賃貸借の解約について、賃貸人側のほうが建物を使用する必要性が大きいとして、約3年分の賃料にあたる100万円を立ち退き料とすることで正当事由が認められた事例があります(大阪地判昭和59年11月12日判例タイムズ546号176頁)。
ただし、倉庫・工場の規模や当時の状況、裁判官の判断により立ち退き料の相場は大きく変動します。過去の判例だけでは立ち退き料の相場を決められないので、裁判ではどのような事情が考慮要素となっているのかなど、あくまでも参考程度に考えておく方が無難でしょう。
倉庫・工場は居住者の生活を予定していない
倉庫・工場における立ち退き料の相場を知るためのポイントの2つ目は、倉庫・工場は居住者の生活を予定していないということです。
基本的に、倉庫・工場は居住者の生活を予定していません。そのため、立ち退きによって生活空間が奪われることはありませんし、代替物件の提供も比較的容易である場合も考えられます。そのため、倉庫・工場の立ち退きは、比較的正当事由が認められやすい傾向にあります。
ただし、倉庫・工場からの立ち退きによって賃借人の業務に損失が出るとき(たとえば、高額の移転費を要する什器類の搬出など)は、その損失を考慮して立ち退き料を上乗せすることが必要となる場合もありますので、交渉の工夫次第で立ち退き料の増額を狙うことも可能でしょう。
弁護士に相談する
倉庫・工場における立ち退き料の相場を知るためのポイントの3つ目は、弁護士に相談することです。
判例を調べて立ち退き料の相場を知るのにも専門的な知識が必要となりますし、専門の弁護士であればより早く的確な検討を行うことが可能です。
当事務所のように無料相談の対応をしている法律事務所もありますので、まずは専門の弁護士に相談してみることが手っ取り早いでしょう。
まとめ
今回は、倉庫・工場における立ち退き料の相場について解説しました。
倉庫・工場の立ち退き料の相場は法律で明確に決まっておらず、倉庫・工場の規模や過去の判例などをもとに決定していくことになりますから、倉庫・工場の立ち退き料の相場については、まずは立ち退き問題の専門弁護士にご相談ください。