不倫の慰謝料には時効がある?請求できる期限と注意点を徹底解説
最終更新日: 2025年06月02日
「不倫されたけど、もう何年も経っているから慰謝料は請求できない?」
実は、不倫慰謝料の請求には“時効”があります。主に「知ったときから3年」「不法行為の時点から20年」という2つのルールがあり、これを過ぎると請求権が失われてしまう可能性があります。
しかし、時効には「起算点」や「更新」の仕組みがあり、必ずしも3年が経ったからといってすぐに請求できなくなるわけではありません。
この記事では、不倫慰謝料の時効に関する基本知識から、起算点や中断の具体例、請求の流れ、実際の相談事例まで詳しく解説します。
不倫慰謝料の時効は「3年」または「20年」
不倫が原因で慰謝料を請求する場合、法律では次のように“時効”が定められています。
- 知ったときから3年(短期消滅時効)
不倫の事実と相手を知った日から3年以内に請求しなければ、基本的に慰謝料を受け取る権利が消えてしまいます。
- 不倫行為から20年(長期消滅時効)
どんな事情があっても、不倫の行為自体から20年が経過すると、時効が成立して慰謝料請求はできなくなります。
つまり、たとえば不倫の証拠を見つけその相手を知ったのが1年前なら、あと2年間は請求できるということです。
ただし、どの時点を「知った」とみなすか(起算点)については、ケースごとに判断されます。
起算点は「知った日」だが曖昧になりやすい
「不倫を知った日から3年」というルールは明確なようで、実はあいまいな部分もあります。
たとえば、以下のような状況はどうでしょうか?
- LINEのやりとりを見つけて疑ったが、確信はなかった
- 友人から噂を聞いたが証拠がなかった
- 調査会社に依頼して初めて確信した
このように、「不倫を知った」といえるタイミングは人によって異なりますし、証拠の内容や気づき方によっても左右されます。
裁判では時効を主張、立証するのは慰謝料の請求を受けている側、被告です。被告において、どの時点で「不倫を知った日」を立証する必要があります。
例えば、LINEのやり取りなどから探偵の調査報告書の日付よりも前の時点で既に不倫の事実を知っていたと立証するケースがあります。
時効を止めるための具体的な方法
「もうすぐ3年経ちそうだけど、間に合う?」「どうすれば時効を止められるの?」
そんなときに役立つのが「時効の完成猶予」という考え方です。
次のような方法をとれば、時効のカウントを一時的に止めることができます。
内容証明郵便で「請求する意思」をはっきり伝える
慰謝料を請求したい場合は、まず相手に「払ってください」という意思を伝える必要があります。それを証拠として残すには、内容証明郵便を使うのが確実です。
これを法律用語では「催告」といい、この催告から6か月を経過するまでは時効は完成せず、その間に訴訟提起することで時効の完成は猶予されます。
裁判を起こす(訴訟)
相手が話し合いに応じない場合は、裁判で解決を目指すことになります。
裁判を起こす(訴訟提起)ことで時効の進行を止められます(時効の完成猶予)。そして判決などによって権利が確定すると時効は更新され、そこから新たに時効が進行します。
相手から「払うつもりがある」という反応があった場合
慰謝料請求を受けた相手が、慰謝料を支払う意思を表明した場合には時効が更新され、その時点から新たに時効が起算されます。
口頭では言った言わないの問題になりますので、LINEやメールなど相手が支払う意思を表明したことを証拠としてしっかりと残すことが重要です。
慰謝料請求の大まかな流れ
- 不倫の事実と相手の氏名及び連絡先(電話番号や住所など)を確認
- 証拠(LINE、探偵の調査報告書、ホテルの領収書など)を確保
- 内容証明郵便で慰謝料請求通知を送付
- 話し合い
- 合意に至れば示談書を作成/不成立なら訴訟へ
- 慰謝料の支払い
実際の相談事例
時効完成の直前に請求して慰謝料獲得
約3年前に不倫の事実が発覚した際には慰謝料請求までは考えが至らず、また配偶者も反省をして二度と不倫しないと約束したので、Aさんはその際には慰謝料請求はしませんでした。
ところが、その後に同じ相手と不倫が再開していたことを知り、今回は慰謝料請求をすることにしましたが後数日で消滅時効が完成してしまうというタイミングでした。
Aさんは急いで弁護士に依頼をして、弁護士は相手に即日、内容証明郵便で500万円の慰謝料請求の通知書を送付しました。
弁解の余地がなく、また相手は訴訟を避けたい意向だったため、250万円の慰謝料を支払う内容で速やかに示談が成立しました。
時効の成立を主張して慰謝料の支払を回避
Bさんは、数年前に終わっている不倫についてある日突然、慰謝料の請求を受けました。
弁護士に相談したところ時効が成立していることは明らかだということだったので、当時の相手夫婦間のLINEのやり取りを不倫相手から提供してもらい、それを証拠として時効の成立を主張する回答書を送りました。
その後は特に相手から連絡は無く、事実上、請求の断念となり終わりました。
まとめ
不倫慰謝料には時効がありますが、「もう遅い」とあきらめる必要はありません。
起算点の特定や、時効の完成猶予によっては、3年・20年の壁を乗り越えられる可能性があります。
不倫の証拠や状況がある場合には、早めに弁護士に相談し、請求の可否や今後の手続きについて適切な判断を仰ぎましょう。
よくある質問(FAQ)
Q:証拠が古くても使えますか?
はい、古いだけでは証拠の有効性に影響はしません。ただ、既に時効が完成している時点での不倫の証拠ですと慰謝料請求は困難です。
Q:離婚していなくても慰謝料は請求できますか?
できます。不倫による精神的なダメージがあれば、離婚していなくても請求可能です。ただ、離婚した場合と比較すると慰謝料金額は低くなるのが通常です。
Q:内容証明を送るだけで請求できますか?
送るだけで請求できますが、その内容、表現次第で相手が慰謝料を支払ってくるかどうか左右されます。専門の弁護士に協力を求めましょう。
Q:夫婦間でも時効があるの?
はい、あります。ただし、夫婦間では離婚しないと時効が進まない場合もあるため、個別の事情に注意が必要です。
Q:相手の住所がわからなくても請求できますか?
電話やその他の連絡方法があるのであれば、それを使って請求することができます。また、弁護士に依頼をすれば電話番号などから相手の住所を調査できるケースがあります。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。