雇い止めを専門弁護士が解説!企業が押さえるべき判断のポイントや相談のメリットを紹介

最終更新日: 2024年02月17日

雇い止めを専門弁護士が解説!企業が押さえるべき判断のポイントや相談のメリットを紹介

  • 私は人事担当ですが、契約期間満了となるパート社員の雇用の終了を検討しています。何か問題ありますか?
  • 雇用契約を終了させる「雇い止め」が原因で、労働者とトラブルになるか心配です。誰かに相談したいのですが。
  • 雇い止めでトラブルが起きないよう弁護士に相談した場合、弁護士はどのようなサポートをするのでしょうか?

経営が悪化し人員削減をしたいという場合、雇い止めを検討する企業も多いことでしょう。

雇い止めは契約期間満了により労働契約を終了させる方法なので、違法ではありません。

ただし、雇い止めの有効性を裁判で争った場合、雇い止めが一定条件下で無効とされる事例もあります。

そこで今回は、多くの雇用問題に携わってきた専門弁護士が、雇い止めが無効かどうかを判断する基準、雇い止めを弁護士へ相談するメリット等について詳しく解説します。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。

  • 雇い止めを企業側の都合だけで正当な理由なく行ってはならない
  • 契約のとき、更新回数や雇用期間が明示され、雇用期間の管理が徹底されていた等、企業側の適切な配慮があれば雇い止めは有効
  • 雇い止めで労働者とトラブルが生じないよう、弁護士に相談しアドバイスを得た方がよい

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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雇い止めを弁護士が解説

「雇い止め」とは更新拒絶とも呼ばれ、有期雇用契約で雇用期間を更新せず、契約を終了させる方法です。

本来、有期雇用契約は期間が定められているので、期間満了で雇用終了となるのが原則ですが、有期雇用契約が複数回にわたり何度も更新が繰り返され、雇用期間も長期に及んでいる場合もあります。

このようなケースでは、実質的に期間の定めがない雇用契約と変わらないばかりか、労働者も「また契約は更新される。」と期待を抱くことでしょう。

しかし、実質的には期間の定めがない雇用契約となっているにもかかわらず、企業側の都合でいきなり雇い止めを行ったら、労働者の生活は著しく不安定なものになるかもしれません。

そのため、雇い止めも一定の条件下で「解雇」と同様に扱い、正当な理由のない雇い止めは無効となる可能性があります。

雇い止めの判断ポイントを弁護士が解説

雇い止めが無効かどうかは、労働者の勤続年数、契約条件、業務内容等を総合的に判断しなければいけません。

こちらでは、雇い止めの有効性を判断するポイントについて説明します。

経緯

雇い止めをした経緯の説明がない場合は、無効と判断される可能性が高いです。

労働者には次のような雇い止め理由を説明する必要があります。

  • 労働者との間で前回の契約更新時、 本契約を更新しない旨がすでに合意されている
  • 契約締結当初から更新回数の上限を設けており、その上限に達した
  • 企業が事業の縮小を行った
  • 労働者の担当していた業務を終了、中止した
  • 労働者が職務命令に対する違反行為をした、 無断欠勤をした等

勤続年数

勤続年数の長い労働者に雇い止めをした場合、無効と判断される可能性が高いです。

そのため、使用者は、次の2つの条件を満たすような有期契約労働者については、契約の実態・労働者の希望に応じ、可能な範囲で契約期間を長くするよう努める必要があります。

  • 雇用契約を1回以上更新
  • 1年を超え継続して雇用

逆に、数週間・数か月程度の短期雇用の労働者の雇い止めは、基本的に有効です。

契約条件

契約条件に更新回数・雇用期間の限度が明示されていない、契約締結後にいきなり更新回数・雇用期間の上限設定を行った、という場合は無効になる可能性が高いです。

雇い止めが有効となるのは、雇用契約書や就業規則に「更新は〇回を上限とする」「雇用期間を最大〇年」と明記されているケースです。

契約の時点で更新回数・雇用期間の限度がわかれば、労働者もそれ以上の契約更新を期待はしません。

業務内容

有期雇用の労働者と無期雇用の労働者の業務に差がない場合、無効とされる場合があります。

一方、最初の有期雇用契約時で業務内容を限定し、正社員との差別化が図られているなら、雇い止めは有効と判断される可能性が高いです。

後々、雇い止めで労働者と争いにならないよう、最初から契約で業務内容を限定しておいた方がよいでしょう。

労働者の地位

有期雇用労働者の地位が正社員とほぼ変わらない場合、無効になる可能性が高いです。

次のようなケースが該当します。

  • 有期雇用労働者の業務内容や職責が正社員とほぼ等しい
  • 有期雇用労働者の業務内容が非臨時的、恒常的なものである
  • 更新回数が非常に多く、契約の通算期間がかなり長い
  • 更新手続が行われていない状態、更新手続が完全に形骸化している 等

有期労働契約が約17回更新、勤続年数が15年7か月に及ぶ有期雇用労働者が、人員整理等を理由に雇い止めされた事案(横浜地方裁判所判決平成27年10月15日)で、裁判所は次のように判示しています。

  • 契約更新が非常に多く、勤続年数も長期にわたっており、実質的に無期雇用契約と変わらない状態
  • 本件雇い止めは実質的な整理解雇で、人員削減の必要性の程度は弱く、企業は雇い止めを回避する努力が不十分だった

このような事実から、雇い止めは無効であるとの判断を下しました。

客観的事実

雇い止めが客観的にみてやむをえないと判断できる事実、社会一般からみて妥当な対応と認められなければ、無効になる可能性が高いです。

契約期間の満了のみではやむをえない事実と判断できず、それに加えて労働者の能力不足、問題行為、不況による人員削減等、社会一般からみて妥当な理由がなければいけません。

雇い止めを弁護士に相談するメリット

雇い止めで労働者とトラブルが発生しないよう、また、トラブルが発生したとしても迅速な解決を図るため、まずは弁護士に相談しましょう。

こちらでは、弁護士へ相談しサポートを依頼するメリットについて説明します。

契約書の見直し

弁護士は雇用契約書に問題がないかどうかを指摘できます。

雇い止めでトラブルとならないためには、雇用契約書に次のような内容の記載が必要です。

  • 更新回数や雇用期間の明記
  • 契約期間が満了前の対応:満了の1か月前に労働者と面談し、契約更新しない旨を伝える等を明記
  • 業務内容の明記

契約書の記載内容に問題点があれば、弁護士が改善策を提案します。

なお、労働者と契約を締結した後でも、契約更新時であれば更新後の契約条件を変更することは可能です。

元従業員からの訴えに対する対応

弁護士にサポートを依頼すれば、弁護士は企業側に立って、元労働者側に主張・反論を行います。

雇い止めを受けた元労働者は、まず「労働審判」で解決を図ります。労働審判とは、企業側と労働者間のトラブル解決に特化した、裁判所の紛争解決制度です。

労働審判では、地方裁判所で労働問題を専門の審判員と審判官が、双方の言い分をヒアリングします。そのとき、弁護士は企業側の主張を行い、証拠となる書類等の提出を行ないます。審判後、元労働者が納得いかない場合、通常の訴訟に移行します。

裁判では、元労働者(原告)が雇い止めの撤回を求める地位確認裁判や、雇い止めで働けなくなった期間の未払い賃金の請求を争う可能性があります。

この場合も、弁護士は雇い止めに理由がある点や、客観的にみてやむをえない判断であった点を主張・立証します。

雇い止めに強い弁護士の特徴

雇い止めの相談をしたい場合、弁護士なら誰でもよいわけではありません。労働問題に詳しい弁護士を選任しましょう。

こちらでは、弁護士選びのポイントについて取り上げます。

経験豊富

弁護士に相談したい場合、他社からの紹介等に頼ってもよいですが、次のような方法でも最適な弁護士を探せます。

  • 法律事務所のホームページを確認し、雇い止めに関する相談実績、相談事例、コラム等が豊富に掲載されている
  • 雇い止めに関するアドバイザーとしてマスメディアへよく登場する、本を多く執筆している 等

これらの内容が確認できれば、その分野に精通した専門家といえるでしょう。

迅速で的確な対応

弁護士に雇い止めのトラブル解決を依頼すれば、有期雇用契約を締結した経緯、内容等をよく検討したうえで、的確なアドバイス・対応を行います。

たとえば、労働者の職務命令に対する違反行為や、 無断欠勤等、問題行動があって雇い止めをする場合、弁護士は迅速に関係者の証言・証拠を収集し、労働審判や訴訟に備えます。

雇い止めでお悩みなら今すぐ弁護士にご相談を

今回は雇い止めの問題解決に尽力してきた専門弁護士が、雇い止めに関する争いで弁護士が果たす役割等を詳しく解説しました。

企業は労働者と有期労働契約を締結する限り、雇い止めに関するトラブルが発生する事態へ備える必要があるでしょう。

企業が労働問題に詳しい弁護士と顧問契約を締結すれば、継続的なアドバイスやサポートを受けられます。

弁護士の力を借りながら、雇い止めに関するトラブル予防方法、そしてトラブルが起きた場合の対応を検討してみてはいかがでしょうか。

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