違法アップロードは非親告罪?罪に問われる条件や対処法を徹底解説

2025年01月29日

違法ダウンロードは削除したら問題ない?問われる罪と対処法を徹底解説!

  • 自分の創作物が違法アップロードされたので、加害者の刑事責任を追及したい
  • 違法アップロードが非親告罪になるケースはあるのだろうか?
  • 自分が違法アップロードした件で逮捕されそうだが、誰に相談したらよいかわからない

違法アップロードで著作権が侵害されている場合、基本的には被害者が刑事告訴しなければ、警察の捜査は開始されません。

しかし、違法アップロードの悪質性や、放置しておくと深刻な事態に発展しそうなときは、告訴がなくても警察が動く場合もあります(非親告罪)。

そこで今回は、著作権問題に詳しい経験豊かな専門弁護士が、違法アップロードで非親告罪にあたるケース、非親告罪で問われる罪等について詳しく解説します。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。

  • 違法アップロードをしたからといって、必ず非親告罪になるわけではない
  • 一部の悪質な違反に対しては、被害者の刑事告訴なしに、警察の判断で捜査を開始する可能性もある
  • 違法アップロードで非親告罪に問われた場合、重いペナルティを受けるおそれがある

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

詳しくはこちら

違法アップロードで非親告罪にあたるケース

非親告罪とは、被害者からの刑事告訴がなくても、加害者を起訴できる罪です。

違法アップロードは著作権を侵害する行為であり、基本的に親告罪に該当します。被害者が刑事告訴しなければ、捜査は開始されません。

しかし、一部の悪質な違反は「非親告罪」であり、捜査機関が捜査等を開始するケースもあります(著作権法第123条第2項)。

出典:著作権法 | e-Gov法令検索

対価が目的

著作権の侵害が加害者にとって対価を得る目的だった場合、悪質であると判断される可能性があります。

著作権者の創作した映像・楽曲等を、無断でアップロードし不特定多数の人に販売する行為、海賊版として販売して対価を得る行為は、著しく不当な利益を得る行為といえるでしょう。

他人の著作物を悪用し、不当な対価を得るような犯罪に対しては、警察が本格的な捜査・逮捕に動く可能性があります。

利益を害することが目的

著作権者の利益を害する目的で無断でアップロードすることは、悪質性が高い行為と判断される可能性があります。

著作権者の創作した映像・楽曲等を、対価を得る目的でアップロードしたわけではない場合もあるでしょう。

しかし、ネット上で数多くのユーザーに著作物を閲覧させるような行為は、著作権者の利益を害する行為です。

利益を害する目的で違法アップロードが行われている場合、捜査が開始される可能性が高いでしょう。

利益が不当に害されることとなる場合

たとえ現在は損害が出ていなくとも著作権侵害を放置すれば、著作権者の利益を害する事態となりそうなとき、非親告罪となる場合があります。

ネット上での違法アップロード提供・提示によって、見込まれる著作権者の利益が不当に害されるのを回避するため、警察が主体的に動く可能性もあるのです。

違法アップロードで非親告罪にあたらないケース

違法アップロードに関して一部の悪質な違反以外は、基本的に親告罪です。

著作権者からの刑事告訴がなければ、捜査は開始されません。理由としては「プライバシーの保護」「被害者の意思尊重」の2つがあげられます。

プライバシー保護

著作権者のプライバシー保護優先が、理由の1つです。

捜査機関が違法アップロードの捜査を開始し、加害者を逮捕・起訴するような事態となれば、マスコミが一斉に報道するでしょう。

マスコミの報道で、著作物が違法アップロードされた事実について拡散され、逆に著作権者が不利益を被る可能性もあります。

たとえば、ネット上で「違法アップロードされたとはいえ、警察が動くような価値のある作品じゃないだろ」「作品の話題性づくりのため犯人と共謀したんだろう」などと、誹謗中傷されるリスクもあるのです。

被害者の意思尊重

著作権者が加害者の処罰を望んでいないのにわざわざ警察が事件として扱う必要はない、と考えられている点も理由の1つです。

著作権者と加害者とで話し合い、示談で解決できるケースもあります。

違法アップロードについて刑事責任を追及するか否かは、基本的に被害者の判断に委ねるのが妥当とされているのです。

違法アップロードの非親告罪で問われる罪

違法アップロードは、著作権者からの刑事告訴があった場合、または非親告罪として扱われ警察が主体的に動いた場合に、加害者が逮捕される可能性があります。

加害者は起訴され、刑事裁判で有罪となった場合は、重い刑に服するケースもあるのです。

著作権法違反

違法アップロードによる著作権侵害に問われ有罪となれば、次のいずれかの刑に処されます。

  • 10年以下の懲役(2025年6月1日以降~拘禁刑)
  • 1,000万円以下の罰金
  • 10年以下の懲役(2025年6月1日以降~拘禁刑)と1,000万円以下の罰金の併科

違法アップロードを法人の代表者等が行い、有罪判決を受けたときは、両罰規定により法人も3億円以下の罰金刑を受けます(著作権法第124条)。

出典:著作権法 | e-Gov法令検索

児童ポルノ禁止法違反

著作権侵害をしていなくともアップロードした内容によっては、警察が捜査を開始する場合もあります。

児童ポルノ禁止法により児童ポルノを提供した者は、3年以下の懲役(2025年6月1日以降〜拘禁刑)または300万円以下の罰金に処されます(同法第7条第2項)。

18歳未満の児童の被写体を、不特定多数者に提供または公然と陳列した場合、児童ポルノ禁止法違反です。違法アップロードは不特定多数者に提供または公然と陳列する行為に該当します。

児童ポルノ禁止法は、18歳未満の児童の下着姿、全裸や性器、性交・性交類似行為に関する画像・動画等の撮影自体を禁止する法律です。

たとえ違法アップロードをしていなくとも、児童ポルノに関する画像・動画等を所持すれば、同法違反になり処罰される可能性があります(同法第7条第1項)。

出典:児童ポルノ禁止法 | e-Gov法令検索

違法アップロードで非親告罪に問われそうな場合の流れ

違法アップロードが非親告罪として扱われた場合、著作権者が刑事告訴をしなくとも、警察が捜査を開始する可能性があります。

違法アップロードで加害者は、逮捕されれば厳しい取り調べを受け、長期間勾留されることもあるでしょう。

逮捕

警察は違法アップロードした加害者に関する捜査を行い、加害者の特定や違法アップロードの証拠物等を押収したうえで、加害者を逮捕します。

なお、違法アップロードの疑いで捜査対象となった者は「被疑者」と呼ばれ、逮捕後、厳しい取り調べを受けるでしょう。

取り調べ

被疑者(加害者)は、逮捕後に警察官から違法アップロードに関する動機・経緯等を聴取されます。被疑者は真摯に回答しなければいけません。

逮捕で動揺し興奮状態になって抵抗したり、逆に一切を黙秘したりすると、被疑者の立場はどんどん不利になっていきます。

取り調べが終わった後、警察は次のような対応をとります。

  • 被疑者に証拠隠滅や逃亡のおそれがないと判断→釈放、自宅に戻れる
  • 留置の必要があると判断→警察署の留置施設や拘置所に留置

勾留

被疑者を逮捕・留置したら、警察は48時間以内に検察官へ送致(送検)しなければなりません。

送検後、今度は検察官の取り調べを受けます。取り調べ後、検察官は24時間以内に次のような対応をとります。

  • 勾留する必要はないと判断→釈放、自宅に戻れる
  • 引き続き留置施設や拘置所へ拘束する必要があると判断→裁判所に勾留請求

裁判官が勾留を決定した場合は、10日間、引き続き留置施設や拘置所で過ごさなければなりません。

更に、やむをえない事情があれば10日間の延長が認められ、最長20日間拘留される可能性があります。

勾留期間中、捜査機関は被疑者から違法アップロードに関する聴取を行い、犯罪を行うに至った経緯等が調査されます。

起訴・不起訴

検察官が、被疑者の主張や集めた証拠、悪質性や損害の程度を総合的に判断し、違法アップロードによる著作権侵害で起訴するか、不起訴にするかを決めます。

非親告罪の場合でも、著作権者と示談が成立したときは、被疑者が初犯で深く反省しており、捜査にも協力的だった等の事実も考慮して、不起訴処分になる可能性もあるでしょう。

一方、著作権侵害で起訴されたときは、刑事裁判で審理が行われ、有罪または無罪の判決が下されます。

違法アップロードで非親告罪に問われそうな場合の対処法

違法アップロードにより逮捕されそうなときは、冷静に対応を進める必要があります。

まずは違法アップロード等の著作権問題に詳しい弁護士と相談し、アドバイスやサポートを依頼することが大事です。

証拠収集

違法アップロードを行い、非親告罪と扱われるような著作権侵害を行った自覚がある場合は、素直に謝罪し、捜査に協力しましょう。

ただし、故意に著作物をアップロードして、著作権侵害をしたのでなければ、その旨を捜査機関に説明しましょう。

自分の不注意でアップロードしてしまい、結果的に著作権を侵害する形になった場合は、刑事罰を受けることはありません。

著作権者と連絡がとれる関係であった場合は、著作権者とのメールのやりとりや、取り交わした契約書等を提示しましょう。これらの証拠は有効な反論材料となります。

弁護士への相談

前もって弁護士と相談し、今後の対応を冷静に協議しておきましょう。

弁護士を私選弁護人として依頼しておけば、逮捕された場合でも、速やかに警察・検察と交渉し、早期釈放を試みます。

弁護士が代理人になれば、次のような弁護活動を進めていきます。

  • 著作権者を探し、示談交渉を求める:示談により生じた損害の十分な賠償がなされた場合や、著作権者が示談に応じ「処罰は求めない」という意思を示した場合、起訴・不起訴の判断に大きな影響を与える
  • 捜査機関に在宅捜査を求める:捜査機関に被疑者の早期釈放を求める他、証拠隠滅や逃亡のおそれはないと説得し在宅捜査を認めてもらえば、被疑者の身体的・心理的なストレスが緩和される
  • 不起訴処分や無罪判決、減刑に努める:弁護士は被疑者(被告人)側に立ち、有利な処分や判決が言い渡されるよう最後まで全力を尽くす

弁護士が私選弁護人となれば、依頼者の精神的な支えとなるでしょう。

違法アップロードの非親告罪は弁護士に相談を

今回は著作権問題の解決に尽力してきた専門弁護士が、非親告罪となり得る違法アップロードによる著作権侵害のケース等を詳しく解説しました。

著作権侵害に問われた人も、弁護士のアドバイスを受け、今後の対応を真剣に検討しましょう。

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