著作権侵害で逮捕される条件とは?問われる罪・影響・対応策を解説
最終更新日: 2025年01月31日
- 他人の著作権を侵害してしまった。自分は必ず罰せられるのだろうか?
- 著作権を侵害して逮捕されたら、どうなってしまうのだろう?
- 著作権侵害で逮捕されたら誰にも頼れないのか?不安で仕方がない。
他人(他社)の著作権を侵害すると、刑事告訴され逮捕されるリスクがあります。
逮捕前または逮捕後に何らかの対応をとらなければ、重いペナルティを受ける事態もあり得るでしょう。
また、著作権侵害をした側になった場合は、穏便に問題解決を図りたいものです。
そこで今回は、著作権問題の解決に実績のある専門弁護士が、著作権侵害で逮捕される条件、著作権侵害で逮捕された後の流れ等について詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 著作権侵害の条件に該当すると、刑事告訴されるおそれがある
- 著作権侵害で有罪判決を受けると、10年以下の懲役(2025年6月1日以降は拘禁刑)もしくは1,000万円以下の罰金、またはこれらの刑の併科を受ける可能性がある
- 弁護士に私選弁護人を依頼すれば、弁護士は依頼者のために全力を尽くす
著作権侵害で逮捕される条件
他人の創作物を無断で使用したからといって、必ず著作権侵害にあたるとは限りません。
著作権侵害となるのは、いくつかの条件に該当する場合です。
著作物
無断で使用したものが「著作物」である必要があります。著作物とは、作者の手による創作性が認められるものです。
具体的には、小説や論文、楽曲や楽曲を伴う歌詞、日本舞踊やバレエ、絵画や漫画、映画やテレビドラマ、ゲームソフト、プログラムなどが該当します。
著作物として認められるためには、創作したものに創作者の個性が表現されていなければなりません。
個性を感じさせないありふれた表現は著作物とはいえず、誰でも自由に使用できます。
無断で使用した部分がオリジナリティの低いものであると主張・立証できれば、刑事責任を問われない可能性もあります。
著作権の存在
著作権の保護期間が経過していれば、著作権侵害になりません。
著作権の保護期間は、著作権者が原則として死亡や公表、創作した年の翌年1月1日から70年間です。
70年が過ぎていれば、もはや著作権は存在せず、無断で使用しても罰せられません。
依拠性
世に出ている著作物を利用し、創作物をつくりあげた場合は、著作権侵害にあたる可能性があります。
ただし、自分が独自に創作したものがたまたま他人の著作物と内容が似ている場合は、著作権侵害にはなりません。
裁判では、世に出ている著作物と実質的に同一性が認められるか等によって、依拠性の有無を判断します。
同一性または類似性
既存の著作物と自身の創作物が、内容が同一または類似している場合、著作権侵害に該当する可能性があるので注意しましょう。
内容すべてではなくとも、同一性のある部分や類似性が目立ち、自身の創作物が既存の著作物を模倣したものだと解されると、この条件に該当します。
著作権侵害で逮捕されない条件
著作権を侵害したとしても、著作権者が告訴しない場合や、著作権侵害がわざとではない場合、特別の事情がある場合は、逮捕されません。
告訴がない
著作権侵害で刑事責任を追及するためには、原則として被害者からの刑事告訴が必要です。
著作権侵害は基本的に「親告罪」であり、被害者が告訴状を提出しないと、警察の捜査は開始されません。
被害者からの告訴がなければ、著作権を侵害しても罪に問われない可能性が高いのです。
ただし、次の3要件すべてにあてはまる場合は「非親告罪」に該当し、捜査機関が主導的に捜査を行う可能性があります(著作権法第123条第2項)。
- 著作権を侵害した者が対価を得る目的、または著作権者の利益を害する目的である
- 有償著作物等を原作のまま公衆に送信している、または当該目的のため複製をした
- 有償著作物等の提供により見込まれる著作権者の利益が、著作権侵害で不当に害されてしまう
具体的には販売中の漫画や小説の海賊版を制作・販売する行為、映画の海賊版をネット上で配信する行為等が該当します。
全く知らなかった
刑事責任を追及する場合には、著作権侵害が故意に(わざと)行われていなければなりません。
著作権を侵害しているとは全く知らなかった場合や、不注意で結果的に侵害するような事態となった場合は、逮捕されることはありません。
ただし、著作権侵害が故意ではないと、著作権者や捜査機関側に主張する必要があります。著作権者と著作物の使用に関する契約を締結していた場合は、契約書等を証拠にした説得力のある反論が必要です。
特別な事情がある
著作権侵害にあたる可能性があっても、やむを得ない特別の事情があった場合は、逮捕されません。
たとえば、自分の創作した著作物がネット上で無断掲載されていて、証拠保全のため当該著作物をダウンロードする行為は、目的が正当あると判断されます。
このケースでは、著作権法違反となる違法ダウンロードに該当するという理由で逮捕されることはないでしょう。
著作権侵害で逮捕された後問われる罪
著作権侵害を理由に逮捕・起訴され、刑事裁判で有罪になると、重いペナルティを受けるおそれがあります。
有罪になった場合、次のいずれかの刑に処されます(著作権法第119条第1項)。
- 10年以下の懲役(2025年6月1日以降は拘禁刑)
- 1,000万円以下の罰金
- 10年以下の懲役(2025年6月1日以降は拘禁刑)+1,000万円以下
著作権侵害で法人の代表者等が有罪判決を受けた場合は、著作権を侵害した代表者等が罰せられるだけではなく、当該法人も3億円以下の罰金刑に処されます(著作権法第124条)。
著作権侵害で逮捕された後の流れ
著作権を侵害された人が、警察署に告訴状を提出し受理されれば、捜査が開始され、逮捕に至る可能性があります。
逮捕後は警察の取り調べ・勾留という流れで刑事手続きが進められていきます。
取り調べ
逮捕後に警察署で、警察官から著作権侵害に関する動機・経緯等を聴取されます。
はぐらかさず、落ち着いた口調でわかりやすく説明しましょう。著作権侵害をしていないのであれば、担当の警察官にその旨をしっかり伝えましょう。
取り調べが終わり、留置の必要があると判断されたときは、被疑者として警察署の留置施設や拘置所に留置されます。
逮捕・留置後、48時間以内に検察官へ送致(送検)され、その後、検察官の取り調べを受けます。検察官は24時間以内に、次のような手続きを行います。
- 引き続き留置施設や拘置所へ拘束する必要があると判断→勾留を裁判所に請求
- 勾留する必要はないと判断→釈放され自宅に戻れる
勾留
裁判官が被疑者が逃走・証拠隠滅のおそれがあるかどうか判断し、勾留するかどうかを決めます。
勾留が決定した場合は、10日間、やむを得ない事情があれば更に10日間、最長で20日間拘留される場合もあるのです。
勾留期間中に、捜査機関は被疑者から詳しく事情聴取を行い、著作権侵害に至った経緯等を調査します。
起訴・不起訴
検察官が被疑者を著作権侵害で起訴するか、不起訴にするかを決めます。
ただし、著作権を侵害された人と示談が成立した場合は、次の処分が下される可能性もあるでしょう。
- 著作権侵害が親告罪の場合→告訴が取下げられたときは不起訴処分
- 著作権侵害が非親告罪の場合→示談が成立した、被疑者が初犯で深く反省している、被害状況等を総合的に判断し、不起訴処分にする可能性もある
検察によって起訴されたときは、刑事裁判で審理が行われます。
著作権侵害で逮捕された場合の影響
著作権侵害で逮捕されると、長期の身体拘束を受けて心身ともに疲弊したり、周囲からの好奇の目にさらされたり、仕事を失ったりする可能性があります。
長期の身体拘束を受ける
勾留期間は最長20日にも及び、心身ともに疲れ切ってしまうでしょう。
更に、捜査関係者による厳しい尋問を受けなければなりません。
勾留後は家族であっても、面会の回数・人数・時間等が制限されます。面会には警察官が立ち会います。弁護士は面会等の制限を受けません。
実名報道される
違法アップロード・ダウンロードによる著作権侵害は、現在、深刻な社会問題として注目度が高くなっています。
違法ダウンロードを理由に著作権法違反の容疑で逮捕されると、マスメディアによって実名報道されるリスクもあるでしょう。
新聞やTV報道はもちろん、ネット上に実名が掲載されると、半永久的に情報が残り続ける状態となります。
周りにバレる
メディアで著作権侵害の事実が報道された場合、家族・親戚の他、友人・知人、近所の人にも逮捕の事実が知れ渡ってしまいます。
それによって、周囲の人からは不信の目でみられるかもしれません。一人暮らしであれば引越しを余儀なくされることや、家族と同居していた場合は家族にも深刻な影響が出てしまうこともあるでしょう。
仕事を失う
仕事を失い路頭に迷うおそれがあります。
著作権侵害で逮捕された場合、勤務先にも知られる可能性があります。
会社が逮捕の事実を確認した場合、就業規則等に従い、懲戒処分が検討される事態もあり得るでしょう。
懲戒処分は、戒告・減給・出勤停止等といろいろありますが、著作権侵害で起訴された場合、懲戒解雇になる可能性も考えられます。
前科が付く
前科(刑罰を受けた経歴)が付いてしまい、社会復帰が難しくなることもあります。
捜査機関によって逮捕・起訴され、刑事裁判になった場合、裁判所は検察・被告人の主張・証拠、著作権侵害の深刻性等を考慮し、次の判決を下すでしょう。
- 無罪判決:著作権侵害が認められなかった場合
- 執行猶予付き有罪判決:有罪ではあるが刑の執行を猶予する判決
- 実刑判決:有罪となり刑罰が言い渡され、かつ刑罰が執行される判決
前科が付かないのは無罪判決だけです。前科が付いてしまうと、一生消えることはありません。
前科を隠して就職できたとしても、入社後に勤務先が前科を知った場合、解雇されるおそれもあります。
著作権侵害で逮捕の可能性がある場合の対策
著作権侵害で刑事告訴され、逮捕されてしまう可能性があるときは、慌てずに行動しましょう。
反論のための証拠収集を行うとともに、弁護士と相談し今後の対応を真剣に話し合った方がよいです。
証拠収集
故意に著作権侵害をしたのでなければ、著作権者や捜査機関に自分の言い分を主張しましょう。
著作権者に誤解がある場合、誤解を解く証拠が必要です。次のような証拠を速やかに確保しましょう。
- 著作権者とのメールのやりとり
- 著作権に関係する契約書
- 著作物の制作過程の記録 等
上記のような証拠は、捜査機関に事情を聴かれたとき、著作権者の主張に対する有効な反論材料となります。
弁護士への相談
著作権侵害で著作権者とトラブルとなり、刑事告訴されそうなときは、警察から逮捕されるリスクも想定しなければいけません。
自分だけで何とかしようと考えず、法律の専門家である弁護士に相談しましょう。相談したうえで弁護士に私選弁護人を依頼し、逮捕を避けるための対応について協議しましょう。
弁護士は相談者の事情をヒアリングし、次のようなアドバイスをします。
- 相談者の行為が著作権侵害に該当するのか
- 著作権者との示談の必要性
- 適正な示談金額の算定
- 著作権者との交渉のポイント
- 警察によって逮捕された場合の対応
- 逮捕後の弁護活動について
著作権侵害は基本的に親告罪のため、著作権者と連絡がとれれば告訴を待ってもらい、示談交渉を申し出ましょう。
弁護士が代理人となっていれば、依頼者に代わって、交渉に応じるよう説得します。
著作権者側が交渉に応じるときは、次のような内容を取り決めていきます。
- 著作権侵害を謝罪し、二度と権利を侵害しないと誓う
- 著作権を侵害している画像や動画の削除
- 示談金額、支払方法、支払期限の取り決め
- 交渉当事者は以後、著作権侵害の問題を蒸し返さない旨
- 約束を破った場合の法的措置について
- すでに著作権者が告訴していた場合は告訴を取下げる旨(加害者の処罰を望まない旨の条項も入れる)
双方が示談に合意したときは、弁護士が示談書(合意書)を2通作成し、当事者それぞれが1通ずつ大切に保管しましょう。
告訴前に示談が成立すれば、事件にならず警察によって逮捕される事態も避けられます。
示談が成立せず告訴され、逮捕された場合でも、弁護士は早期の釈放を求め、依頼者の立場に立った弁護活動を進めます。
著作権侵害で逮捕なら春田法律事務所までご相談を
今回は多くの著作権問題の解決に尽力してきた専門弁護士が、著作権侵害で逮捕される場合の罰則や影響等について詳しく解説しました。
著作権侵害をしたと自覚しているときは、著作権者に刑事告訴される前に示談を申し入れ、和解を試みましょう。
示談が成立すれば逮捕されずに、最小限の負担に止められる可能性があります。
春田法律事務所は著作権侵害に関する交渉・裁判に豊富な実績があります。まずは弁護士と相談し、今後の対応を慎重に協議しましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。