介護サービスで利用者が巻き込まれる原因は?トラブルを回避するための方法と利用者が加害者のときの対策方法も解説
最終更新日: 2022年10月13日
介護サービスの利用者は、人間関係や金銭など様々な面でトラブルに巻き込まれる恐れがあります。反対に、利用者自身が加害者となってトラブルを起こすこともあります。
トラブルが発生すると利用者本人だけでなく、家族や介護サービス職員など様々な方に大きな負担が生じかねません。
そこで今回は、介護サービスにおけるトラブルを数多く解決に導いてきた弁護士が、介護サービスの利用者が巻き込まれるトラブルや、トラブルを回避するための方法を解説します。
介護サービスで利用者が巻き込まれるトラブルの原因
ここでは、利用者が巻き込まれるトラブルの原因を4つ解説します。
- 騒音トラブル
- 利用者同士や職員との相性
- 認知症
- 金品紛失
それでは、1つずつ解説します。
騒音トラブル
トラブルの原因の1つ目は騒音トラブルです。
高齢により耳が遠くなった方は、テレビやラジオなどの音を無意識に大きくしてしまいがちです。また、耳が遠い方は自分の声も聞こえづらいため、話し声も大きくなる傾向にあります。
その結果、本人に騒音を発生させている意識がないまま、騒音トラブルに発展する可能性があります。
利用者同士や職員との相性
トラブルの原因の2つ目は利用者同士や職員との相性です。
介護の現場では、利用者が職員や他の利用者と頻繁に関わることは珍しくなく、どうしても相性の良し悪しといった問題が発生します。
相性が悪いもの同士だとその場の雰囲気が悪くなります。そのため、結果的に無視や陰口などが起こってトラブルに発展することもあるのです。
認知症
トラブルの原因の3つ目は認知症です。
認知症の方は、ときに無意識に相手を傷つける可能性があります。進行具合にもよりますが、中には理不尽な暴力や暴言に及ぶ方もいます。もちろん、被害を受けた方も認知症であるとわかっているはずです。ただ、それでも認知症だから仕方ないと割り切れるとは限りません。
金品紛失
トラブルの原因の4つ目は金品紛失です。
金品紛失のトラブルは、他の利用者や職員などに金品を盗まれるトラブルだけとは限りません。たとえば、認知症の利用者は、金品が取られるのではないかと疑心暗鬼になることがあります。
物忘れをしたことで、「金品を誰かに取られた」と勘違いするとトラブルの原因になるのです。また、認知症の方が他人の金品を自分の金品と勘違いし、取ってしまうこともあります。
介護サービスで利用者がトラブルを回避するために家族ができること
ここでは、介護サービスのトラブルを回避するために家族ができることを2つ解説します。
- 利用者や職員と十分にコミュニケーション
- 落ち着いて話し悪口は言わない
それでは、1つずつ解説します。
利用者や職員と十分にコミュニケーション
家族ができることの1つ目は、利用者や職員と十分にコミュニケーションを取ることです。
介護施設に入っている利用者に対しては、できる限り面会する機会を作るようにしましょう。
他の利用者の家族が頻繁に面会しているにもかかわらず、自分の家族だけ来ていないと思うと、他の利用者をうらやましく思う可能性があります。それがエスカレートすると、他の利用者に意地悪な行動を取る方もいるかもしれません。
また、職員と密に交流を図り、利用者に関する相談や異変を感じたらすぐに伝えてもらうことも大切です。そのときには、利用者の性格や好き嫌いを事前に伝えておくとよいでしょう。
利用者の情報を職員と共有しておくことで、利用者に対して様々な配慮を行い、トラブルを未然に防げるかもしれません。
落ち着いて話し悪口は言わない
家族ができることの2つ目は、落ち着いて話し、悪口は言わないことです。
利用者の中には、家族との関係や個人的な問題などを抱えていることもあります。これらの悩みから精神状態が不安定になり、他の利用者や職員にあたってしまう方もいます。そのため、利用者の家族はなるべく落ち着いて利用者と接するようにしましょう。家族がイライラしてしまうと、利用者も大きなストレスを感じてしまうものです。
また、介護サービスで他の利用者や職員とも人間関係を良好にするには、悪口を言わないことも大切です。介護施設などの利用者の中には、周りの悪口を言っているグループも存在しているかもしれません。ただ、トラブルに発展しないためにも、そのようなグループには参加しない方が賢明です。
介護サービスで利用者がトラブルを回避するためのサービスの選び方
ここでは、トラブルを回避するためのサービスの選び方を2つ解説します。
- 過去のトラブルについて質問
- 利用者同士や職員の関係性を把握
それでは、1つずつ解説します。
過去のトラブルについて質問
サービスの選び方の1つ目は、過去のトラブルについて質問することです。
介護サービスでは、人間関係などのトラブルが発生することは珍しくありません。しかし、事業者ごとにトラブルに対する対応力は大きな差があります。以下の事業者であれば、トラブルに対する対応力が高いと考えてよいでしょう。
・職員同士での情報共有が万全
そして、トラブルに対する対応力を判断するために有効な方法は、過去のトラブルについて質問することです。過去のトラブルについて、具体的な事例を挙げて詳細かつ納得性の高い解決策で解決に導いていれば安心です。
利用者同士や職員の関係性を把握
サービスの選び方の2つ目は、利用者同士や職員の関係性を把握することです。
利用者が介護サービスを快適に利用できるかどうかは、利用者同士や職員の関係性に大きく左右されます。利用者同士や職員の関係性が悪いと、その介護サービスで居心地が悪いと感じても無理はありません。
利用者同士や職員の関係性を把握するには、介護サービスの見学をするときに利用者と職員とのコミュニケーションの様子に注目するとよいでしょう。
・職員が利用者の話をしっかり聞いているか
以上のポイントに注目し、サービス事業者を見極める判断材料にしてください。
介護サービスで利用者が加害者となるトラブルが発生したときの対策
ここまでは、介護サービスの利用者が被害者であることを想定して記事を書いてきました。ただ、実際には利用者が加害者となって、介護サービスの職員が暴力やセクハラの被害を受けることもあるのです。
ここでは、利用者が加害者のトラブルが発生したときに、介護サービス事業者が取るべき対策を4つ解説します。
- 職員間の情報共有
- 対処マニュアル
- 身体拘束
- 契約解除
それでは、1つずつ解説します。
職員間の情報共有
介護サービス事業者が取るべき対策、1つ目は職員間の情報共有です。
暴言や暴力行為を行う恐れがある利用者がいるときは、そのことを職員の間でしっかり情報共有しておく必要があります。職員が前もって理解しておけば、実際に被害にあったときも被害を最小限に抑えることが可能です。このとき、全ての職員が明確に情報を認識するための仕組みが求められます。
対処マニュアル
介護サービス事業者が取るべき対策、2つ目は対処マニュアルです。
全ての職員が適切にトラブルに対応できるよう、対処マニュアルを作成しましょう。事業所としては、定期的に研修を行うと職員の意識レベルも上がります。
対処マニュアルには、トラブルへの対処法はもちろん、トラブルへの予防策も記載しておくとよいでしょう。また、実際に起きたトラブルについて、内容や経過、事後対応などを記載しておくとより実践的です。
身体拘束
介護サービス事業者が取るべき対策、3つ目は身体拘束です。
ただ、暴力傾向のある利用者がいても、安易に身体拘束を行ってはいけません。身体拘束が認められるのは、「他の利用者の生命または身体を保護するなどやむを得ない」ケースだけで、極めて限定的です。また、身体拘束を実際に行うときも必要最低限にする必要があり、極めて稀なケースであることに留意しなければなりません。
契約解除
介護サービス事業者が取るべき対策、4つ目は契約解除です。
本来、利用者は介護サービスが必要だから利用しているケースが多く、簡単に契約解除を行うべきではありません。ただ、事業所側があらゆる手をつくしても利用者の行動が改善されないときには、最終手段として利用者の契約解除を行うことも検討しましょう。
また、契約解除が必要になる事例も想定して、入居契約書には契約解除を行う条件の条項も入れておきましょう。
まとめ
今回は、介護サービスの利用者が巻き込まれるトラブルや、トラブルを回避するための方法を解説しました。
利用者の立場で言えば、介護サービスを利用するときには、他の利用者や職員と円滑にコミュニケーションが取れるかが重要なポイントです。反対に、事業者側の立場で言えば、職員の情報共有に加えて、マニュアルや契約書などを用いてトラブルの予防や対処方法について明文化しておきましょう。
それでも介護サービスの利用者に関するトラブルが発生したときには、当法律事務所にご相談ください。介護サービスにおけるトラブルを数多く解決に導いてきた弁護士が、適切なアドバイスやサポートを行います。