配偶者の性病は不倫の証拠?離婚できる?専門弁護士が解説

最終更新日: 2024年01月09日

  • 配偶者に性病をうつされた
  • 性病を理由に離婚できるのか?
  • 離婚するための手順や注意点を教えてほしい

配偶者としか性行為をしていないのに梅毒やクラミジアなどの性病にかかってしまった場合、相手の浮気を疑わずにはいられず、離婚を考えるのも無理はありません。

しかし、自分が性病をうつされたことは、相手の浮気や不倫の証拠になるのでしょうか。離婚を決意したところで、何をどうすればいいのかわからないと、さまざまな疑問や不安が湧いてくるでしょう。

そこで今回の記事では、男女関係や離婚問題に詳しい弁護士が、性病をうつされた場合に離婚するための手順と注意点を詳しく解説します。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。

  • 性病は性行為以外でも感染することが考えられるため、不倫によって性病になったという証拠がなければ、離婚事由として認められない可能性がある
  • 性病を理由にした離婚は、相手も合意すればできる。できない場合は調停・裁判へと発展する可能性もある
  • 性病が理由に離婚成立に向けた手順は、「協議離婚」→「調停離婚」→「審判離婚」→「裁判離婚」

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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性病は不倫の証拠?離婚できる?

自分の身に覚えがないのに性病にかかってしまったときは、配偶者の浮気や不倫を疑ってしまうものです。しかし、性病は性行為以外でも感染することが考えられるため、不倫によって性病になったという証拠がなければ、離婚事由として認められない可能性があります。

民法770条1項1号には、法定離婚事由として、下記のように定義されています。

配偶者に不貞な行為があったとき。

出典:民法第七百七十条 | e-GOV法令検索

性病を理由に離婚するときは、配偶者の不貞行為を証明する必要があるでしょう。

性病をうつされた!?離婚事由になる不倫とは?

離婚事由となる浮気や不倫というのは、具体的にどのようなケースを指すのでしょうか。ここでは、離婚事由になる不貞行為について、下記の2つに分けて解説します。

  • 不貞行為になりうる例
  • 不貞行為になりえない例

不貞行為になりうる例

不貞行為になりうる状況として、性的関係がある場合や性的関係が推測される場合が当てはまります。

たとえば、配偶者が女性とラブホテルに入室し、相当な時間出て来なかった場合は不貞行為になりえます。他にも、お酒を飲んだ勢いで性的な関係を持つなどの行為も挙げられるでしょう。

なお、配偶者が性的サービスのある風俗を利用していた場合や、口腔性交など性交類似行為を行った場合も該当する可能性があります。

不貞行為になりえない例

不貞行為になりえない状況としては、性行為のない浮気や、夫婦が別居している間の不倫などが該当します。また、相手方に性行為を強要された場合も、不貞行為には当てはまりません。

例を挙げると、別居中で夫婦関係がすでに破綻していた場合は、他の相手との性行為は不貞行為とはなりません。また、キスや食事などの性的関係ではない行為も、不貞行為とは認められにくいでしょう。

ただし、配偶者以外とキスなどのスキンシップを継続したことが原因で夫婦関係が破綻した場合は、離婚を認められるケースもあります。

性病を理由に離婚するには不倫の証拠が必要

裁判離婚になったときには、不貞行為を証明する証拠が必要です。不貞行為の証拠になりうる例としては、不倫相手と配偶者がラブホテルに入室する写真や不倫相手との性的関係を認める動画・文章などが挙げられます。

また、配偶者から性病をうつされた事実を証明するためには、配偶者が同じ性病であることと、不倫相手も同じ性病にかかっていることを立証する必要があります。

性病をうつされた場合に慰謝料は請求できる

配偶者の不倫により性病にかかってしまった場合には、怒りと絶望感がこみ上げてきても無理はありません。そのような場合に、配偶者や浮気相手に対して、慰謝料を請求できるのでしょうか。

ここでは、性病をうつされた場合の慰謝料請求について、下記の2つを解説します。

  • 配偶者に対して
  • 浮気・不倫相手に対して

配偶者に対して

配偶者が他の異性と性行為を行ったうえで自らの性病を認識していた場合は、慰謝料を請求できる可能性があります。慰謝料が請求できる判断基準は、性病を発病している配偶者の自覚です。性病の事実をあなたに隠していた場合は、慰謝料を請求できる可能性が高いでしょう。

ただし、性病にかかっていることを知らなかった場合は、慰謝料の請求は難しいかもしれません。

また、性病だけでなく不貞行為の証拠となる情報を集めることができれば、不貞行為に対する慰謝料も請求可能です。性病の感染と不貞行為の両方の証拠が集まれば、同時に慰謝料の請求もできます。

浮気・不倫相手に対して

配偶者の不倫相手が特定された場合でも、不倫相手に対しては性病に対する慰謝料は請求できない可能性があります。不倫相手が性病を持っていることを立証するのが難しいためです。

慰謝料は請求する側、つまりあなたが証拠を集める必要がありますが、不倫相手が自分の不利になる証言をしたり証拠を出したりすることは期待し難いでしょう。

ただし、配偶者の場合と同様、不貞行為に対する慰謝料は請求できる可能性はあります。不貞行為での慰謝料が認められるケースとしては、既婚者であることを知りながら性的な関係を持った場合などが考えられます。

性病がきっかけで離婚するための手順や流れは?

性病がきっかけで不倫が発覚し、離婚を決意する方もいるでしょう。ここでは、性病がきっかけで離婚するための手順や流れについて、下記の4つを解説します。

  • 協議離婚
  • 調停離婚
  • 審判離婚
  • 裁判離婚

協議離婚

離婚を決意したときには、まずは協議離婚を検討しましょう。協議離婚は夫婦のみで話し合いを行い、双方が合意すれば離婚が成立します。話し合いでは、慰謝料・財産分与・親権・養育費などについても取り決めます。

話し合っても夫婦のどちらかが離婚や離婚条件に同意しなければ、離婚は成立しません。取り決めた内容に関しては、その後のトラブルを防ぐためにも公正証書を作成しておくことをおすすめします。

公正証書があれば、離婚後に財産分与や生活費の不払いがあった場合でも、債務者の財産を差し押さえて回収できます。公正証書を作成することで、将来的なお金に関する不安が解消できるのです。

調停離婚

夫婦間での話し合いがまとまらない場合には、調停委員が仲介して話し合いを進めるとよいです。これを調停離婚といいます。調停委員は夫婦の双方から別々に事情や要求を聞き、相手に伝えます。

夫婦同士が直接話す必要がないため、感情的になって言い争うこともなく進めることができます。弁護士に代理交渉を依頼することも可能です。

審判離婚

審判離婚とは、調停が成立しなかった場合に、家庭裁判所が離婚を審判する方法です。家庭裁判所が審判した後に、当事者から2週間の間に異議申立てがなければ、確定します。ただし、期間内に異議申立てがあれば、審判離婚は成立しません。

審判離婚は異議申立てにより効力がなくなるため、利用されるケースはあまり多くはありません。

裁判離婚

協議や調停で話がまとまらない場合は、最終的に裁判に委ねることになります。これが裁判離婚で、裁判所が当事者からの訴えに基づき判決を下し、結論を出すものです。

配偶者の一方が離婚を拒否しても、裁判所が離婚事由があるとして離婚を認めれば、離婚が成立します。一方、裁判所が離婚を認めない場合は、離婚は不成立に終わります。

裁判は専門的な知識が必要ですので、弁護士に相談することをおすすめします。

まとめ

今回の記事では、男女関係や離婚問題に詳しい弁護士が、性病をうつされた場合に離婚するための手順と注意点を解説しました。

慰謝料の請求や離婚裁判では、証拠を集めることが特に大切です。ご自身に有利な条件で離婚を進めるためには、法律の専門家のサポートが欠かせません。配偶者の性病で離婚を決意したときには、離婚問題に詳しい弁護士に相談し、準備を進めていきましょう。

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