労災でも会社に損害賠償請求できる!条件・金額・手続きを弁護士が解説

最終更新日: 2026年06月05日

労災でも会社に損害賠償請求できる!条件・金額・手続きを弁護士が解説

「労災保険を申請したから補償は終わり」と思っていませんか?

実際には、労災保険では慰謝料・逸失利益の一部・精神的損害はカバーされません。会社に安全配慮義務違反があれば、別途損害賠償請求ができます。

この記事では、請求の条件・金額・手続きを弁護士が解説します。

この記事を監修したのは

弁護士 南 佳祐
弁護士 南 佳祐
大阪弁護士会 所属
経歴
京都大学法学部卒業
京都大学法科大学院卒業
大阪市内の総合法律事務所勤務
当事務所入所
詳しくはこちら

職員が丁寧にお話を伺います初回無料

労災保険と損害賠償請求の違い【比較表】

両者は「重複する部分もあるが別々の制度」です。どちらか一方しか受け取れないわけではなく、調整(填補)を経て両方受け取ることができます。

比較項目

労災保険

会社への損害賠償請求

請求先

国(労働基準監督署)

使用者(会社)

会社の過失は必要?

不要(無過失責任)

必要(安全配慮義務違反等)

慰謝料

支給なし

請求できる

精神的損害

支給なし

請求できる

休業損害

給付基礎日額の80%まで

実収入100%相当を請求可能

逸失利益

障害給付として一部支給

労働能力喪失率に基づき全額請求

手続き

書類申請(比較的容易)

示談交渉・調停・訴訟

時効

2〜5年

3年(不法行為)または5〜20年(安全配慮義務違反)

 

会社に損害賠償請求できる3つの法的根拠

会社への損害賠償請求は、以下の法的根拠に基づきます。

安全配慮義務違反(労働契約法第5条)

使用者は「労働者がその生命・身体等の安全を確保しつつ労働できるよう、必要な配慮をする義務」を負います。

この義務に違反して事故が発生した場合、債務不履行として損害賠償責任を負います。

具体例:
危険な機械のメンテナンス放置・長時間労働強制によるメンタル疾患・転倒防止措置の欠如・安全教育の不実施など
安全配慮義務違反を根拠とした損害賠償請求の方法や流れについては、以下の記事で詳しく解説しています。

不法行為(民法第709条)

故意または過失によって他人に損害を与えた場合、損害賠償責任を負います。

会社の管理体制の不備・安全設備の欠如等がこれに当たります。

使用者責任・工作物責任(民法第715条・第717条)

使用者は被用者が業務上与えた損害について責任を負います(使用者責任)。

また、機械・設備等の設置・管理の瑕疵による損害についても責任を負います(工作物責任)。

請求できる損害の種類と金額の相場

請求できる損害項目

  • 治療費・入院費(労災保険で補填されない部分)
  • 休業損害(実収入との差額:労災保険で賄えない40%相当)
  • 逸失利益(後遺障害による将来の収入減少分)
  • 入通院慰謝料(治療期間に応じた精神的苦痛への補償)
  • 後遺障害慰謝料(後遺障害等級に応じた慰謝料)
  • 死亡慰謝料(死亡事故の場合:本人分+遺族固有分)
  • 葬儀費用(死亡事故の場合)

労災で慰謝料が請求できる根拠や請求方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。

労災事故でも慰謝料はもらえる?弁護士が解説します!

コラム

2026/05/25

労災事故でも慰謝料はもらえる?弁護士が解説します!

 

慰謝料の相場や計算式については、以下の記事で詳しく解説しています。

【労災】慰謝料の相場と計算式|少ないと感じたら弁護士相談を

コラム

2026/04/28

【労災】慰謝料の相場と計算式|少ないと感じたら弁護士相談を

後遺障害等級別の損害賠償目安【弁護士基準(裁判基準)】

以下は弁護士基準での相場です。会社・保険会社が自主的に提示する金額(任意基準)は多くの場合これより低くなります。

後遺障害等級

後遺障害慰謝料
(弁護士基準)

逸失利益の目安

損害賠償総額の目安

14級

110万円

数十〜数百万円

総額300万円前後

12級

290万円

数百万〜1,000万円

総額800〜1,000万円

10級

550万円

1,000〜1,500万円

総額1,500〜2,000万円

8級

830万円

2,000〜3,000万円

総額3,000〜4,000万円

5級

1,400万円

4,000〜6,000万円

総額5,000〜8,000万円

1級

2,800万円

数億円(生涯収入ベース)

総額1億円超のケースも

 

※上記はあくまで目安です。実際の額は被害者の年齢・収入・過失割合・治療期間などにより大きく異なります。

後遺障害等級ごとの補償金額と慰謝料の相場については、こちらの記事をご覧ください。

労災で後遺障害認定された場合の補償金額はどのくらい?弁護士が詳細に解説!

コラム

2026/05/25

労災で後遺障害認定された場合の補償金額はどのくらい?弁護士が詳細に解説!

損害賠償請求の手続きと流れ

ステップ

内容

弁護士の役割

Step1

証拠収集

事故状況の記録・目撃者情報・診断書・安全管理記録の取得

証拠の整理・補充、事故調査報告書の入手申請

Step2

労災認定取得

労働基準監督署への申請・認定取得

申請書類作成サポート・不服申立て

Step3

症状固定・等級確定

医師が症状固定を判断し、後遺障害等級の申請

等級認定への意見書作成・異議申立て

Step4

損害額の計算

逸失利益・慰謝料など全損害項目を算定

弁護士基準での正確な損害計算

Step5

示談交渉・訴訟

会社(または保険会社)との交渉。合意できなければ訴訟

全面代理・裁判での主張立証

 

損害賠償請求は法的手続きが複雑なため、弁護士への依頼が強く推奨されます。

弁護士が交渉に加わると、示談金額が自交渉の場合の数倍になることが多くあります。

よくある質問(FAQ)

Q. 労災保険と損害賠償は同時に申請できますか?

できます。両者は並行して申請可能です。

ただし、労災保険から受け取った給付額は損害賠償から控除(填補)されます

。例えば障害補償一時金100万円を受け取っていれば、同種の損害から100万円が差し引かれます。慰謝料は控除の対象外です。

Q. 退職した後でも損害賠償請求できますか?

できます。退職の事実は請求権に影響しません。

ただし、退職後は会社との交渉が難航するケースも多く、弁護士への依頼が特に重要になります。

また時効(不法行為は損害・加害者を知った時から5年、または事故から20年)が経過すると権利が消滅するため、早期の行動が必要です。

Q. 時効はいつまでですか?

  • 不法行為(民法第709条):損害および加害者を知った時から5年(人身損害)
  • 債務不履行・安全配慮義務違反(民法第415条):権利行使できる時から5年
  • どちらも事故から20年(除斥期間)で権利消滅

 

「まだ治療中だから」と放置していると時効が成立する危険があります。症状固定後は速やかに弁護士に相談してください。

Q. 会社が「全部補償する」と言っています。弁護士は不要ですか?

注意が必要です。会社が言う「全部補償」が弁護士基準(裁判基準)の金額かを確認する必要があります。

多くの場合、会社や保険会社は低い金額(任意基準)で示談を進めようとします。弁護士が関与することで正当な賠償額を確保でき、受取額が数百万〜数千万円増加したケースが多数あります。

少なくとも一度、弁護士に確認することをお勧めします。

まとめ

  • 労災保険と損害賠償請求は別制度。両立して請求できる
  • 請求根拠:安全配慮義務違反(労働契約法5条)・不法行為(民法709条)等
  • 労災保険では慰謝料・休業損害の差額40%・精神的損害は補填されない
  • 後遺障害の等級が高いほど損害賠償額も大きく、弁護士の関与が重要
  • 時効は5年(人身損害)。早期に弁護士へ相談することが損害回復のカギ

 

春田法律事務所では、労災事故の損害賠償請求について初回無料相談を実施しています。「いくらになるか試算してほしい」というご相談も歓迎です。

 

損害賠償請求の可否を弁護士に依頼するメリットについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

労災は弁護士に相談すべき?費用・増額事例を徹底解説【初回無料】

コラム

2023/03/08

労災は弁護士に相談すべき?費用・増額事例を徹底解説【初回無料】

労災のコラムをもっと読む

※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。

職員が丁寧にお話を伺います初回無料