老朽化で立ち退き拒否は可能?諦める前に知るべき法的ポイント
2026年04月23日

老朽化を理由に大家さんから立ち退きを求められ、不安や困惑を感じている方も多いのではないでしょうか。
「古い建物だから仕方ない」と諦めてしまう前に、ご自身の権利と適切な対処法を知ることが重要です。
結論から言うと、建物の老朽化だけを理由とした立ち退き要求は、拒否できる可能性が高いです。
このガイドでは、老朽化による立ち退き問題に直面した際に知っておくべき法的な知識から、具体的な行動、立退料の交渉、そして弁護士への相談まで、皆さんが安心してこの問題に立ち向かえるよう、必要な情報を網羅的に解説します。
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「老朽化」だけを理由にした立ち退きは拒否できる可能性が高い
賃貸物件の大家(貸主)が、借主に対して賃貸借契約の更新を拒絶したり、解約を申し入れたりする場合、単に「建物が老朽化したから」という理由だけでは、法的に認められないケースが多いです。
日本の借地借家法では、借主の居住権や使用権が強く保護されており、貸主からの更新拒絶や解約には「正当事由」が求められます。
老朽化は、正当事由を判断する要素の一つではありますが、それが唯一の理由で正当事由と認められることは稀です。
例えば、建物が古いというだけで、すぐに倒壊する危険性がない場合や、修繕によって引き続き利用可能な場合などは、立ち退きを拒否できる可能性が非常に高いと言えるでしょう。
大家(貸主)の立ち退き要求が認められる「正当事由」とは?
大家さんが賃貸借契約の更新を拒否したり、解約を申し入れたりする際に必要となる「正当事由」は、借地借家法第28条に定められています。
これは、借主の生活や事業の安定を守るための重要な規定であり、大家さんが一方的に立ち退きを要求できないようにするものです。
借地借家法における借主の権利
借地借家法は、経済的に弱い立場にある借主を保護するために制定された法律です。
この法律により、賃貸借契約は原則として自動的に更新される「法定更新」が認められており、大家さんが契約の更新を拒絶したり、解約を申し入れたりするには、客観的に合理的な「正当事由」が必要となります。
借主は、正当な理由がない限り、安心して住み続けたり、事業を継続したりする権利を持っているのです。
正当事由を判断するための要素
正当事由は、以下の要素を総合的に考慮して判断されます。
特定の要素が一つあれば良いというものではなく、全体のバランスを見て裁判所が判断することになります。
- 貸主及び借主が建物の使用を必要とする事情
貸主が、自分自身や家族がその建物に住む必要がある、あるいは事業を行う必要があるなど、その建物をどうしても使いたいという切実な理由があるかどうか。
一方、借主もその建物で生活している、または事業を営んでいるという状況があり、代替の住居や店舗を見つけることが困難であるなど、立ち退きによって受ける不利益が大きいかどうか。 - 賃貸借に関する従前の経過
賃貸借契約がどのくらいの期間継続しているのか(長期間であればあるほど借主の権利が重視される傾向があります)。
家賃の滞納など、借主側に契約違反があったかどうか。 - 建物の利用状況
賃貸借契約の目的に沿って使用しているか、賃借人が建物を自ら使用しているかなどが判断材料となります。 - 建物の現況
老朽化の程度や耐震性など、建物自体の物理的な状態。 - 立退料(財産上の給付)の提供の有無
大家が借主に対して、引越し費用や新たな物件を探すための費用など、経済的な補償(立退料)を提示しているかどうか。
立退料の提供は、正当事由を補完する重要な要素となります。
これらの要素を総合的に判断し、大家側の都合と借主側の都合を比較衡量して、正当事由の有無が判断されます。
建物の「老朽化」は正当事由になるのか?
建物の老朽化は、正当事由を判断する要素の一つではありますが、それだけで直ちに立ち退きが認められるわけではありません。
単に抽象的な「建物が古い」、「老朽化」というだけでは、通常、立ち退きの正当事由としては不十分とされます。
倒壊の危険性など具体的な状況が重要
老朽化が正当事由として強く考慮されるのは、以下のような具体的な危険性が差し迫っている場合です。
- 建物が構造的に著しく危険な状態にある場合:
地震や台風などで倒壊する恐れがある、一部が崩落する危険があるなど、居住者や通行人の生命・身体に危険が及ぶ可能性が高いと、専門家(建築士など)が判断するレベル。 - 行政から使用禁止命令や避難勧告が出されている場合:
建物が危険と判断され、行政から公的に利用を制限する措置が取られている場合。 - 旧耐震基準の建物で老朽化が進行している場合:
旧耐震基準が適用される1981年(56年)5月31日以前に建築された建物の場合
このような場合であれば、貸主が建物を維持管理する義務を果たせない状況にあると判断され、立ち退きの必要性が高まると考えられます。
しかし、単に見た目が古い、設備が古いといった程度では、具体的な危険性があるとは言えず、正当事由としては認められにくいでしょう。
耐震基準を満たしていないだけでは不十分なケースも
建物の耐震基準は、過去に改正されており、古い建物が現在の耐震基準を満たしていないことは珍しくありません。
しかし、「現在の耐震基準を満たしていない」という事実だけでは、直ちに立ち退きの正当事由になるとは限りません。
耐震性が不足していると判断されても、耐震補強工事によって安全性を確保できる場合があります。
もし、補強工事で対応可能であるにもかかわらず、大家が立ち退きを求めてくるのであれば、その立ち退き要求は正当事由として認められにくいでしょう。
裁判所は、補強工事にかかる費用や、その工事によって借主が一時的に退去する必要があるか、その際の負担はどうか、といった点も考慮して判断します。
重要なのは、単なる老朽化や現在の耐耐震基準との比較ではなく、「建物が客観的に見て危険な状態にあるか」「修繕や補強では対応できないのか」という点です。
特に上記正当事由を判断するための要素の1つである「建物の現況」においては耐震診断の結果が重視されます。
立ち退きを求められたら取るべき行動
大家から立ち退きを求められたとしても、焦って不利な行動を取らないことが重要です。
まずは冷静に状況を整理し、適切なステップを踏むことで、ご自身の権利を守ることができます。
安易に合意書・解約書にサインしない
大家から立ち退きを要求された際、いきなり「合意書」や「解約書」を提示されることがあります。
しかし、内容を十分に理解しないまま、安易にサインすることは絶対に避けてください。
これらの書類にサインしてしまうと、立ち退きに同意したと見なされ、後で立ち退きを拒否したり、有利な条件での交渉ができなくなったりする可能性があります。
サインを求められても、「一度持ち帰って検討させてください」「専門家と相談します」と伝え、時間をもらいましょう。
立ち退きの理由と条件を書面で要求する
口頭でのやり取りだけでは、後で「言った」「言わない」の水掛け論になりがちです。
大家から立ち退きを求められたら、その理由と具体的な条件(いつまでに、いくらの立退料でなど)を必ず書面で提示してもらうよう要求してください。
書面化のメリット:
- 大家の要求が明確になり、ご自身で状況を整理しやすくなる。
- 後の交渉や調停、訴訟になった際の証拠となる。
- 大家が安易な立ち退き要求を撤回するきっかけになることもある。
要求する内容:
- 立ち退きを求める具体的な理由(例:老朽化の具体的な状況、再建築の計画など)
- 立ち退き期限
- 立退料の金額とその算定根拠
- 引越し費用の負担、原状回復義務の免除など、その他の条件
もし書面での提示を拒否されるようなら、それも不誠実な対応として記録しておくべきです。
焦って代替物件を契約しない
立ち退き要求を受けて、転居先となる代替物件を検討するまではよいですが、焦って代替物件を契約してはいけません。
上記正当事由を判断するための要素の1つである「借主が建物の使用を必要とする事情」が失われるのみならず、二重の家賃負担が生じるため、貸主からすれば、放っておけば自然に退去が見込まれる状況になり、立退料が得られなくなります。
専門家である弁護士に相談する
立ち退き問題は、借地借家法という専門的な法律が関わる複雑な問題です。
ご自身で対応しようとすると、法的な知識不足から不利な状況に陥るリスクがあります。
早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士ができること:
- 大家の立ち退き要求が法的に正当であるかを判断する。
- ご自身の権利や取るべき行動について、具体的なアドバイスをする。
- 大家との交渉を代理し、有利な条件(適正な立退料など)を引き出す。
- 万が一、調停や訴訟になった場合の手続きをサポートする。
弁護士に相談することで、精神的な負担が軽減され、適切な法的手続きに基づいて問題解決を進めることができます。
立退料の役割と相場
立退料は、単なる引越し費用の補償にとどまらず、借地借家法上の「正当事由」を補完する重要な役割を持ちます。
大家側の立ち退き理由が弱い場合でも、十分な立退き料を提示することで、立ち退きが認められやすくなるケースがあります。
相場は一般的に家賃6ヶ月~2年分程度とされますが、引越し費用や新居の初期費用、家賃差額、事業用の場合は営業補償などを踏まえて個別に決まります。
一方で、契約違反がある場合などは減額や不支給となる可能性もあるため注意が必要です。
詳しい相場や交渉のポイントは以下の記事で解説しています。
立退き拒否に関するよくある質問(FAQ)
Q: 老朽化以外にも、大家が立ち退きを要求できる「正当事由」にはどのようなものがありますか?
A: 記事本文で詳しく解説しましたが、大家が立ち退きを要求できる正当事由は、建物の老朽化だけでなく、貸主と借主双方の事情を総合的に判断して認められます。
主な例としては、以下のものが挙げられます。
- 貸主自身またはその家族がその建物を使用する必要がある場合:
例えば、貸主が住む家がなくなった、事業を始めるために店舗として使う必要がある、といった切実な事情がある場合です。
ただし、借主の居住状況との比較衡量が行われます。 - 借主が家賃を滞納している、または契約に違反している場合:
継続的な家賃の不払いや、無断転貸(又貸し)、用途外使用など、借主側に重大な契約違反がある場合は、正当事由が認められやすくなります。 - 建物の再建築や大規模なリフォームが必要な場合:
ただし、単なる美観の向上や収益性アップのためのリフォームでは認められにくく、建物の構造上、現在の利用が困難である、または公共の利益に資するような再建築計画があるなど、必要性が高い場合に限られます。
この場合でも、借主への十分な立退料の提示が不可欠とされます。
これらの正当事由の有無は、個別の状況によって判断が異なるため、専門家である弁護士に相談することが重要です。
Q: 立ち退き交渉中も家賃は支払い続ける必要がありますか?
A: はい、立ち退き交渉が進行している間も、賃貸借契約が有効である限り、家賃の支払い義務は継続します。
家賃の支払いを停止したり、滞納したりすると、それが大家にとって正当事由や債務不履行による契約解除事由となり、立ち退き交渉において借主側が不利になる可能性があります。
もし、大家が家賃の受領を拒否するような場合は、「家賃供託」という制度を利用することで、支払い義務を果たしたことになります。
法務局に家賃を預けることで、借主側に過失がないことを証明できます。
Q: 賃貸借契約の種類(普通借家契約と定期借家契約)によって、立ち退きの扱いは変わりますか?
A: はい、大きく変わります。
日本の賃貸借契約には主に「普通借家契約」と「定期借家契約」の2種類があります。
- 普通借家契約:
原則として契約期間が満了しても更新され、大家が更新を拒絶したり、解約を申し入れたりするには「正当事由」が必要です。
借主の居住権が強く保護されており、本記事で解説している「老朽化」による立ち退き拒否は、この普通借家契約の場合に適用されます。 - 定期借家契約:
契約期間の満了をもって、契約が確実に終了する種類の契約です。原則として更新がなく、期間満了によって契約が終了するため、大家は「正当事由」を必要とせずに建物の明渡しを請求できます。
また、契約期間が1年以上の場合は、大家は期間満了の1年前から6ヶ月前までの間に、借主に対し契約が終了する旨を通知する義務があります。
この通知を怠ると、契約の終了を主張できません。
ご自身の契約がどちらのタイプか、賃貸借契約書で確認し、不明な場合は弁護士に相談してください。
Q: 立退料の交渉で、借主側が準備すべきことは何ですか?
A: 立退料を適正に交渉するためには、以下の情報を具体的に準備し、自身の被る損害を明確に提示できるようにすることが重要です。
- 引越し費用の見積もり:
複数の引越し業者から見積もりを取り、妥当な金額を提示できるように準備します。 - 新居の初期費用の概算:
敷金、礼金、仲介手数料、前家賃など、新しい物件を借りるために必要となる費用の概算を把握します。
希望する物件の情報を集めることが役立ちます。 - 現在の家賃と希望する新居の家賃の差額:
現在の家賃と、同等の条件の物件に移る場合の家賃を比較し、差額が生じる場合はその補償(数年分など)を求めます。 - 事業用物件の場合の営業補償:
店舗や事務所の場合、移転による休業損失、顧客の減少、移転先の改装費用、新しい設備の購入費、広告費用など、事業への具体的な影響とそれにかかる費用を詳細に算出します。 - その他の費用:
インターネットや公共料金の解約・新規契約手数料、転居に伴う家具家電の買い替え費用など、実際に発生するであろう費用を漏れなく洗い出します。
これらの情報に基づき、弁護士と相談しながら具体的な交渉金額を組み立てることで、より説得力のある交渉が可能となります。
Q: 大家が弁護士を立ててきた場合、借主も弁護士を立てるべきですか?
A: はい、大家が弁護士を立ててきた場合、借主も弁護士を立てることを強くおすすめします。
大家が弁護士を立ててきた時点で、交渉は法的な専門知識を伴うものになります。
借主側が弁護士を立てずに対応すると、以下のような不利益を被る可能性が高まります。
- 法的な知識や交渉力の差:
弁護士は法律のプロであり、交渉にも慣れています。対等な交渉を行うためには、こちらも専門家を立てる必要があります。 - 心理的なプレッシャー:
弁護士からの書面や電話は、一般の方にとって大きな心理的負担となります。
弁護士が間に入ることで、精神的な負担を軽減できます。 - 不利な条件での合意:
法的な知識がないまま交渉を進めると、不当に低い立退料で合意してしまったり、不利な条件を飲まされたりするリスクがあります。
弁護士を立てることで、法的な観点から適切なアドバイスを受け、対等な立場で交渉を進め、ご自身の権利を最大限に守ることが可能になります。
まずは無料相談などを利用して、早めに弁護士に相談することが賢明です。
まとめ
老朽化を理由にした大家からの立ち退き要求は、諦める必要はありません。
日本の借地借家法は借主の権利を強く保護しており、単なる建物の老朽化だけでは立ち退きの正当事由として認められないケースがほとんどです。
立ち退きを求められた際は、安易に書類にサインせず、まずは立ち退きの理由と条件を書面で要求し、速やかに弁護士などの専門家に相談することが非常に重要です。
弁護士は、あなたの法的な権利を明確にし、大家との交渉を代理することで、適正な立退料の獲得や、場合によっては立ち退き自体を拒否し続けるためのサポートを提供してくれます。
一人で抱え込まず、専門家の力を借りて、ご自身の生活と権利を守るための最善の道を見つけましょう。
適切な知識と行動で、老朽化による立ち退き問題もきっと解決へと導くことができます。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。
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