工場の巻き込まれ事故、会社の責任は?損害賠償請求の可否を判断

2026年05月28日

工場の巻き込まれ事故、会社の責任は?損害賠償請求の可否を判断

工場で巻き込まれ事故に遭い、大ケガを負って今後の生活や仕事に不安を感じていませんか?

「自分の不注意だから仕方ない」「労災保険が降りたからこれで終わり」と思い込んでいる方は少なくありません。しかし、工場の巻き込まれ事故の多くは、機械の安全対策不足や管理体制の甘さなど、会社側の「安全配慮義務違反」が関係しています。

もし会社に責任がある場合、労災保険だけではカバーされない慰謝料や将来の逸失利益など、数百万から数千万円規模の損害賠償を請求できる可能性があります。

この記事では、工場における巻き込まれ事故で会社が責任を問われるケースや、労災保険と損害賠償の違い、実際の請求手順についてわかりやすく解説します。事故後の適正な補償を受け取り、安心して治療や生活再建に専念するための参考にしてください。

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士 春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内法律事務所勤務
当事務所開設
資格
宅地建物取引士
情報処理安全確保支援士
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工場で多発する「巻き込まれ事故」とは?

工場における労働災害の中でも、機械に身体の一部や衣服が巻き込まれる事故は非常に多く発生しています。

工場での巻き込まれ事故は、指の切断や骨折といった重傷を負うだけでなく、最悪の場合は命に関わる重大な事態を招く危険性があります。

まずは、巻き込まれ事故の現状とその実態について解説します。

巻き込まれ事故の主な発生状況と具体例

工場の巻き込まれ事故は、主にプレス機、ローラー機、ベルトコンベア、旋盤などの回転・稼働する機械の周辺で発生します。

具体例としては、「稼働中の機械に詰まった異物を取り除こうとして手を入れた」「作業着の袖や軍手がローラーに巻き込まれた」「機械の清掃中に誤ってスイッチが入ってしまった」などが挙げられます。

一瞬の判断ミスや不注意が、取り返しのつかない事故につながるのが特徴です。

なぜ巻き込まれ事故は起きるのか?主な原因

工場で巻き込まれ事故が起きる主な原因は、安全管理の不足とヒューマンエラーです。

機械の安全カバーやセンサーが設置されていなかったり、意図的に外されていたりする設備側の問題のほか、作業手順の無視や安全教育の不足といった管理体制の問題も挙げられます。

また、長時間の労働による疲労や集中力の低下も、事故を引き起こす大きな要因となります。

工場の巻き込まれ事故で会社が責任を問われる3つのケース

工場で巻き込まれ事故が発生した場合、被災した労働者は会社に対して責任を追及できる可能性があります。会社が法的責任を問われる主な3つのケースについて説明します。

安全配慮義務違反

会社(使用者)は、労働者が安全かつ健康に働けるよう配慮する「安全配慮義務」を負っています。

安全カバーの未設置、危険な作業手順の放置、十分な安全教育の欠如などがあった場合、会社はこの義務に違反したとみなされ、損害賠償責任を負う可能性が高くなります。

会社への損害賠償請求が認められる法的根拠や具体的な方法については、以下の記事で詳しく解説しています。

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使用者責任

工場内で他の従業員のミスや不注意によって巻き込まれ事故が発生した場合、その従業員を雇用している会社が「使用者責任」を問われることがあります。

加害者である従業員個人だけでなく、業務の遂行に関連して起きた事故であれば、会社に対しても損害賠償を請求できるのが一般的です。

工作物責任

機械や設備そのものに欠陥があり、それが原因で工場の巻き込まれ事故が起きた場合、その設備の占有者または所有者である会社に「工作物責任」が問われることがあります。

整備不良や老朽化した機械を放置していた結果として事故が起きたケースがこれに該当します。

労災保険だけでは不十分?会社へ損害賠償請求できる費用

工場の巻き込まれ事故に遭った際、労災保険を利用することで治療費や休業補償などが支払われますが、それだけでは十分な救済とは言えません。

労災保険と損害賠償の違い

労災保険は労働者を迅速に救済するための制度であり、会社に過失がなくても給付を受けられます。しかし、労災保険からは「慰謝料」は支払われません。

一方、会社に安全配慮義務違反などの過失がある場合に行う損害賠償請求では、労災保険でカバーされない精神的苦痛に対する慰謝料や、将来の逸失利益などを請求することができます。

労災事故における慰謝料の相場や計算方法については、以下の記事でも詳しく解説しています。

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会社に請求できる損害賠償の内訳

会社に対して請求できる損害賠償には、入通院慰謝料(ケガの治療に伴う精神的苦痛)、後遺障害慰謝料(後遺症が残った場合の精神的苦痛)、休業損害(労災保険で不足する部分)、後遺障害による逸失利益(将来得られるはずだった収入の減少分)などがあります。

重傷になりやすい工場の巻き込まれ事故では、これらを合計すると数百万から数千万円規模になることも珍しくありません。

労災の休業補償が支給される期間や条件については、以下の記事で詳しく解説しています。

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工場の巻き込まれ事故で会社に損害賠償を請求する流れ

実際に会社へ損害賠償を請求するための具体的なステップを解説します。

証拠の収集と保存

事故発生直後から、事故の状況を示す証拠を集めることが重要です。事故現場の写真、機械の状態、目撃者の証言、当時の作業マニュアルや勤務記録などが有力な証拠となります。

会社側が証拠を隠滅する前に、できる限り早く確保することが求められます。

労災保険の申請

まずは労働基準監督署へ労災保険の申請を行います。治療費や休業補償を受け取りながら、並行して会社への損害賠償請求の準備を進めます。

後遺症が残った場合は、労災の「障害等級認定」を受けることが後の損害賠償請求において非常に重要になります。

後遺障害診断書の書き方や医師への依頼方法によって等級認定の結果が大きく変わります。詳しくはこちらをご覧ください。

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会社との交渉

証拠と損害額の算定がまとまったら、会社側(または会社が加入している任意保険会社)と示談交渉を行います。

ここで適正な賠償額の支払いに応じてもらえれば、裁判をせずに解決となります。

労働審判や民事訴訟

会社側が責任を否定したり、提示された賠償額に納得できなかったりした場合は、裁判所を介した労働審判や民事訴訟へと進みます。

裁判となると時間や労力がかかりますが、正当な主張が認められれば適切な賠償金を獲得できます。

巻き込まれ事故の損害賠償請求を弁護士に相談するメリット

工場の巻き込まれ事故における会社との交渉は、専門的な知識が必要です。弁護士に相談することで得られる大きなメリットを紹介します。

適切な損害賠償額を算定できる

弁護士は過去の裁判例に基づいた「裁判基準」を用いて損害賠償額を算定します。

労災保険や会社側が提示する金額よりも大幅に増額されるケースが多く、適正な補償を受けるためには弁護士の知見が不可欠です。

会社との交渉を有利に進められる

個人で会社や保険会社の担当者と交渉するのは心理的負担が大きく、不利な条件で丸め込まれてしまうリスクがあります。

弁護士が代理人として交渉の矢面に立つことで、対等以上の立場で有利に交渉を進めることができます。

複雑な法的手続きを任せられる

証拠の収集、内容証明郵便の作成、労災申請のサポート、労働審判や訴訟への対応など、法的手続きは非常に煩雑です。

弁護士に一任することで、被害者は治療やリハビリに専念することができます。

職場復帰や再発防止に向けたサポートも期待できる

弁護士は単に金銭的な解決を図るだけでなく、不当な解雇や配置転換を防ぎ、安心して職場復帰できる環境づくりをサポートすることもあります。

また、会社に安全管理体制の見直しを強く促すことで、同様の巻き込まれ事故の再発防止にもつながります。

よくある質問(FAQ)

Q:工場での巻き込まれ事故は自分の不注意でも会社に損害賠償を請求できますか?

A:はい、ご自身の不注意(過失)があった場合でも、会社に損害賠償を請求できる可能性は十分にあります。

工場の機械に安全カバーが設置されていなかったり、会社が適切な安全教育を行っていなかったりした場合、会社側の「安全配慮義務違反」が問われます。

ただし、労働者側にも落ち度があった場合は「過失相殺」が行われ、損害賠償額が減額されることが一般的です。

労災における過失相殺の仕組みと適正な補償を受けるための対策については、以下の記事をご覧ください。

労災の過失相殺とは?割合の仕組みと適正な補償を得る手順

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Q:労災申請をすると会社に迷惑がかかると言われました。どうすればいいですか?

A:労働災害が発生した場合、労災保険を利用することは労働者の正当な権利であり、会社がそれを止めることは「労災隠し」という違法行為にあたります。

工場の巻き込まれ事故は重傷になるケースが多く、健康保険を使って治療してしまうと後々の補償で不利益を被る可能性があります。

会社が協力してくれない場合は、労働者自身で労働基準監督署に直接相談し、労災申請の手続きを進めることができます。

Q:巻き込まれ事故で指を切断しました。慰謝料の相場はどのくらいですか?

A:指の切断は後遺障害として認定される可能性が極めて高く、切断した指の部位や本数によって後遺障害等級(1級〜14級)が決定されます。

例えば、片手の人差し指、中指、薬指を切断した場合などは高い等級が認定され、後遺障害慰謝料だけでも数百万円から1,000万円以上になるケースがあります。

さらに、将来の減収分を補填する「逸失利益」も加わるため、全体の損害賠償額は高額になる傾向があります。正確な金額の算定には専門知識が必要なため、弁護士への相談をおすすめします。

まとめ

工場での巻き込まれ事故は、労働者の人生を大きく変えてしまう重大な労働災害です。事故の原因が会社の安全管理不足や設備不良にある場合、労災保険の給付だけでなく、会社に対して損害賠償を請求できる可能性が高いです。

一人で悩まず、まずは労働問題に詳しい弁護士に相談し、適正な補償と今後の安心を確保するための一歩を踏み出しましょう。

労災の損害賠償請求の具体的な方法と手続きの流れについては、以下の記事で詳しく解説しています。

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