カスハラ対応は弁護士に相談すべき?企業が押さえるべき事例や刑罰を詳しく紹介

最終更新日: 2024年02月22日

カスハラ対応は弁護士に相談すべき?企業が押さえるべき事例や刑罰を詳しく紹介

  • 私の店では、顧客から店員への過剰な要求やいやがらせに困っている。よい相談先はないだろうか?
  • カスハラ行為は、刑罰に問えるのだろうか?詳しく知りたい。
  • カスハラ問題の解決を弁護士に任せれば、弁護士はどのような対応ができるのだろう?

自分の会社や店舗でカスハラが増加すれば、従業員が精神的にも肉体的にも追い込まれ、離職することが懸念されます。

カスハラを放置すれば、従業員の安全はもちろん、自分の会社や店舗の評判が低下するおそれもあるでしょう。

深刻な事態となる前に、法律の専門家に相談し対応を協議する必要があります。

そこで今回は、多くのカスハラ問題に携わってきた専門弁護士が、カスハラのよくある事例、弁護士に相談するメリット等を詳しく解説します。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。

  • カスハラには従業員への脅迫や暴力等、犯罪行為に該当するケースもある
  • カスハラをした顧客は、強要罪や脅迫罪、暴行罪、傷害罪等に問われる場合がある
  • 弁護士に相談しサポートを依頼すれば、ケースに応じた的確なアドバイスを受けたり、法的措置を任せたりできる

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

詳しくはこちら

カスハラを弁護士が解説

カスハラは「カスタマーハラスメント」の略で、顧客や取引先からの嫌がらせ行為です。

こちらでは、カスハラの特徴やクレームとの違いを説明します。

カスハラとは

カスハラとは、顧客・取引先等から従業員への過剰な要求・脅迫・暴力や、自社の商品・サービスに対し不当な言いがかりをつける迷惑行為です。

カスハラ行為は大きく次の2つに該当します。

(1)顧客等からの要求の内容が妥当性を欠く

次の例のように自分の会社や店舗の商品・サービスに非がないのに言いがかりをつけられた場合です。

  • 提供する商品やサービスに傷や欠陥がない
  • 顧客等の要求内容が商品やサービスと無関係
  • 従業員等の過失(不注意)が認められない

(2)要求を実現するための手段・態様に問題がある

会社・店舗側に対し不相当な行為を行う場合で、要求の妥当性の有無は関係ありません。

  • 従業員等に対する暴行や傷害のような身体的攻撃
  • 脅迫、中傷、名誉毀損のような精神的攻撃
  • 土下座の要求
  • 差別的、性的な言動 等

クレームとの違い

クレームとは、顧客や取引先が会社・店舗に対し、商品・サービスへの批判や不満、良品との交換、追加サービスの提供等、いろいろな要求をする行為です。

つまり、クレームには自分の会社や店舗の至らなかった配慮や、不注意に関する正当な批判・要求が含まれている可能性もあります。

そのため、顧客等のクレームは自社の商品・サービスを向上させるヒントにもなるでしょう。

ただし、カスハラとクレームの判断基準は各企業・業界によって、大きく異なる場合があります。

自社や店舗で両者の違いの判断基準を明確にしたい場合は、

  • 顧客等からの批判・要求に妥当性がある場合→クレーム
  • 妥当性がなく言動が非常識な場合→カスハラ

と区別するとよいでしょう。

弁護士がカスハラのよくある事例を紹介

ここでは、カスハラとして問題となる顧客等の言動について取り上げます。

長時間拘束される

顧客等の対応に延々と拘束されてしまう状態です。次のようなケースが該当します。

  • 閉店時間をとっくに過ぎているが、顧客が店内で立ち話を続けた
  • 顧客が無駄に詳細な説明を求め、従業員を長時間拘束する
  • 顧客が電話で繰り返し同じ質問をし、時間を無駄に消費させた 等

店に居座られると、従業員や他の客にも迷惑となる可能性があります。

そこでこのような場合は場所を移し顧客の不満を店長等がヒアリングしたり、後日担当者が顧客へ電話をかけたりして、謝罪や然るべき対応を話し合う方がよいでしょう。

暴言・暴行

顧客等の行為で、会社や店舗の関係者の精神・身体に危害が及ぶ状態です。次のようなケースが該当します。

  • 従業員に対して人格を否定する言葉
  • 特定人種や宗教、性別を差別する言葉
  • 口汚い言葉による従業員への威圧
  • 従業員に物を投げつける
  • 従業員を殴る、蹴る 等

特に暴力行為は、従業員等の生命・身体に重大な影響を及ぼす可能性があります。暴力的なカスハラを受けたときは、加害者に対し法的措置をとりましょう。

脅迫

顧客等が自分の要求を実現させるため、会社や店舗側を脅す行為です。次のようなケースが該当します。

  • 「SNSや口コミサイトを利用して会社の評判を落とす」と脅迫する
  • 「訴えてやる!」と脅迫する
  • 「従業員や家族に危害を加える」と脅す

これらの脅迫行為も犯罪に該当する可能性があります。執拗な脅迫や内容が悪質なときは、加害者に対し法的措置をとりましょう。

セクハラ

顧客の立場を悪用し、従業員に性的な嫌がらせをする行為です。次のようなケースが該当します。

  • 従業員に対して性的な発言をするよう強いる
  • 他人が嫌悪をもよおすような、性的なジョークを投げかける
  • 従業員の胸やお尻、股間等に触れ、セクシャルな嫌がらせをする
  • 従業員に対し「彼氏いるの?」「初体験はいつ?」等、性的な質問を繰り返す 等

被害者が嫌がっているのに身体を触ったりキスをしたりする行為は、不同意わいせつ罪に該当する可能性が高いです。

このような加害者には入店の拒否や法的措置を検討しましょう。

カスハラに関わる刑罰を弁護士が解説

顧客の立場を悪用したカスハラ行為は、内容によっては重い刑罰を受ける可能性があります。カスハラを受けている会社・店舗側は、刑事告訴も踏まえた対応を検討しましょう。

こちらでは、カスハラで問われる可能性がある刑罰について説明します。

出典:刑法|e-GOV法令検索|法務省

強要罪

強要罪とは、相手の意思決定の自由を脅かして、その身体活動の自由を侵害する罪です。

顧客が脅迫や暴行等を用いて人に「義務のない行為」をさせたり、「権利行使の妨害」をしたりする行為が該当します。

強要に当たるカスハラの具体例は、主に従業員等に次のような行為をした場合です。

  • 従業員を土下座させた
  • 無理やり飲酒を強制した
  • 謝罪文を強要した 等

本罪に問われた場合、加害者は3年以下の懲役に処される可能性があります(刑法第223条第1項)。他人が強要された行為をしなかったとしても、罰せられる可能性があります(同条第3項)。

脅迫罪

脅迫罪とは、相手やその親族の生命や身体、自由、名誉、財産へ害を加えると告知し、人を脅迫する罪です。

カスハラの場合、従業員等が恐怖心を抱くに足る内容・方法で告知すれば、脅迫罪に問われます。

本罪に問われた場合、2年以下の懲役または30万円以下の罰金に処される可能性があります(刑法第222条第1項)。

恐喝罪

恐喝罪とは、他人を脅して財物を交付させる罪です。

恐喝に当たるカスハラの具体例としては、主に従業員等への次のような行為があげられます。

  • 従業員の失敗を言いふらすと脅し、金品を要求する行為
  • 会社や店舗に不満や怒りを伝え、慰謝料等の名目で金銭を要求する行為

本罪に問われた場合、10年以下の懲役に処される可能性があります(刑法第249条第1項)。

暴行・傷害罪

極めて深刻なカスハラ行為です。暴力を振るい従業員等が負傷したかどうかによって、次のような刑罰に処される可能性があります。

  • 負傷にまで至らなかった→暴行罪:2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料(刑法第208条)
  • 負傷した→傷害罪:15年以下の懲役又は50万円以下の罰金(刑法第204条)

信用毀損及び業務妨害

虚偽の風説を流布し、または偽計を用いて、人の信用の毀損や業務を妨害する行為です。

信用毀損及び業務妨害に当たるカスハラとしては、主に従業員等への次のような行為があげられます

  • 会社や店舗、従業員に対する誹謗中傷をSNSで拡散した
  • 会社や店舗、従業員の裏情報やうわさをSNSで拡散した

本罪に問われた場合、3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処される可能性があります(刑法第233条)。

威力業務妨害罪

実力行使によって他人の業務を妨害する行為です。

威力業務妨害に当たるカスハラとしては、主に従業員等への次のような行為があげられます。

  • 顧客の立場を利用して店舗に執拗な迷惑電話をかけ、店長や従業員を電話対応に縛りつける
  • 毎日のように店舗へ足を運んで抗議し、店長や従業員の業務遂行に支障を与える

本罪に問われた場合、3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処される可能性があります(刑法第234条)。

カスハラを弁護士に相談するメリット

自分の会社や店舗が、顧客・取引先のカスハラに悩まされている場合、まずは弁護士に相談し対応を検討しましょう。

こちらでは、弁護士に相談し、代理人として問題解決に動いてもらうメリットを説明します。

交渉代行

弁護士はカスハラ問題を早期解決する方法についてアドバイスします。

その方法が「和解交渉」です。法的措置(損害賠償請求訴訟や刑事告訴)をとれば、捜査機関や裁判所が関与するため、問題の解決まで数か月を要する場合もあります。

カスハラの加害者である顧客を相手に、話し合いで決着させたい場合は弁護士を窓口とし、交渉の委任が可能です。

和解交渉では、ケースにもよりますが次の条件を相手方と取り決めます。

  • 顧客に損害がある場合は、店舗側は返金や同等の物品と交換する
  • 顧客は以後、執拗な電話や店舗訪問などの迷惑行為をしない
  • 顧客が店舗側に損害を与えていた場合は、賠償金額・支払い方法の決定
  • 顧客が今後カスハラ行為をしたときは店舗側は訴訟や刑事告訴を行う 等

和解交渉に豊富な実績を有する弁護士であれば、スムーズに手続きを進められ、交渉の成功率も高くなります。

損害賠償請求訴訟・刑事告訴

顧客等のカスハラが非常に悪質で、会社や店舗の信用、従業員の安全に深刻な事態を招いているときは、弁護士のサポートで法的措置を取りましょう。

弁護士は顧客等のカスハラによる賠償請求額や、どのような罪に問えるのかも依頼者へ詳しく説明します。

弁護士に問題解決を依頼すれば、次のような手続きの委任が可能です。

  • 顧客等に損害を賠償させたい→裁判所に損害賠償請求訴訟を提起
  • 顧客等の刑事責任を追及したい→警察等に刑事告訴する

弁護士はカスハラ被害を受けた会社・店舗側に立ち、問題解決に全力を尽くします。

従業員の健康維持

顧客等からの嫌がらせ行為に対し、弁護士が的確な対処をします。

カスハラを行う顧客等に対し弁護士が窓口となれば、従業員が心身を病むという事態も避けられます。

カスハラを行う側も、法律の専門家である弁護士が対応に乗り出してきたので、「訴えられたり、警察に通報されたりするかもしれない」と考え、嫌がらせ行為をやめる可能性が高いです。

カスハラでお悩みなら今すぐ弁護士に相談を

今回は多くのカスハラ問題の解決へ尽力してきた専門弁護士が、カスハラ対応を弁護士が行うメリット等について詳しく解説しました。

カスハラの放置は、会社・店舗の業務に深刻な事態を招くおそれがあります。早く弁護士と相談し、弁護士の手厚いサポートを受けて問題解決を進めましょう。

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