ダブル不倫で慰謝料を請求された…お互い既婚者でも払うの?弁護士が初動から解説

最終更新日: 2026年05月13日

ダブル不倫で慰謝料を請求された…お互い既婚者でも払うの?弁護士が初動から解説

ある日突然、見知らぬ番号から電話がかかってきた、または内容証明郵便が届いた。差出人は不倫相手の配偶者、あるいはその弁護士。請求額は200万円、300万円——。

「でも相手だって既婚者だった。お互い様では?」

こう思うのは当然です。しかし、法律はこの「お互い様」の論理を自動的には認めません。

ダブル不倫であっても、慰謝料の支払い義務が法的に認められることがあります。ただし、「必ず払わなければならない」わけでもありません。

この記事では、慰謝料を請求された方が最初に知るべき法的事実と、支払い義務を否定・大幅減額するための具体的な対処法を解説します。

この記事でわかること

  • ダブル不倫でも慰謝料請求が来る法的理由
  • 「支払い義務ゼロ」「四者間相殺」になるケース
  • 内容証明が届いたときの初動対応とやってはいけないこと
  • 慰謝料相場と、交渉で下げるためのポイント

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士 春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内法律事務所勤務
当事務所開設
資格
宅地建物取引士
情報処理安全確保支援士

「不倫慰謝料を請求したい」「不倫慰謝料を請求された」両方の立場から、400件以上の不倫問題のご相談に対応してきました。(※2026年3月時点)これまでの実務経験をもとに、法律のポイントを分かりやすく解説しています。

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ダブル不倫でも慰謝料請求が来る法的理由

「お互い既婚者なのだから、相手方の配偶者も同じ立場では?」——この感覚は理解できますが、法律の仕組みはそう単純ではありません。

「お互い様」が法的に通じない理由

不倫慰謝料の根拠は民法709条(不法行為)710条(精神的損害)です。不倫された配偶者は「自分の婚姻関係を侵害された被害者」として慰謝料を請求できます。

重要なのは、この権利はあくまで「被害を受けた配偶者の権利」であり、加害者である不倫当事者双方に対して独立して発生するという点です。

つまり、Aさん夫婦とBさん夫婦がダブル不倫をしていた場合:

  • A夫妻のBさん配偶者への請求権 → A夫妻が持つ固有の権利
  • B夫妻のAさん配偶者への請求権 → B夫妻が持つ固有の権利

これらは別々に存在します。「向こうも請求できるのだから相殺される」とはならないのです。

支払い義務の有無:判断の分かれ目

ケース支払い義務ポイント
お互い既婚者と知りながら関係を持った原則あり故意または過失が認められる
相手が既婚者と知らなかった(知れなかった)否定の可能性あり無過失の立証が必要
肉体関係がなかった(精神的不貞のみ)否定または大幅減額不貞行為の証拠がない
相手夫婦がすでに別居・破綻状態だった減額または否定婚姻関係の実態がなかった
四者間で相互に請求し合う状況相殺・ゼロ和解の余地弁護士による四者交渉で解決

不貞行為とはそもそもどこからが法的にアウトなのか、その境界線が気になる方はこちらの記事も参考にしてください。

「不貞行為」はどこから?法的にアウトな境界線と慰謝料

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2021/09/30

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支払い義務が否定・大幅減額されるケース

ダブル不倫ならではの事情により、慰謝料が大幅に減額される、または支払い義務そのものが否定されるケースがあります。

① 四者間相殺による支払いゼロ

四者間相殺とは、双方の夫婦がそれぞれ相手方の不倫当事者に慰謝料を請求できる関係を活用した解決策です。弁護士が四者全員を交えた交渉を行い、「互いに請求しない」として全額ゼロで和解する解決が可能です。

② 相手方夫婦関係の実態がなかった(婚姻破綻)

不倫された配偶者が「精神的損害を受けた」と主張するためには、少なくとも形式的に婚姻関係が存続していることが前提です。

相手夫婦がすでに別居していた、離婚協議中だったという事情があれば、婚姻の平穏を侵害したとは言えず、慰謝料が認められない、または大幅に減額される可能性があります。

③ 既婚者と知らなかった・知れなかった

相手が独身だと信じて交際したケースで、その信頼に相当の理由があった場合(プロフィール詐称、独身と明言していたなど)は、支払い義務が否定されることがあります。

「身に覚えがない」「相手が独身と偽っていた」という状況で慰謝料を請求された場合の具体的な対処法は、以下の記事で詳しく解説しています。

不倫冤罪で慰謝料請求?身に覚えがない時の対処法と証拠集め

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2021/10/14

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④ 証拠が弱い・肉体関係の立証ができない

慰謝料請求の根拠となる「不貞行為(肉体関係)」が証拠で立証できなければ、裁判では認められません。連絡の頻度や食事の回数だけでは不十分な場合が多く、弁護士が証拠の有効性を精査することで、請求を退けられるケースがあります。

慰謝料を減額させるための交渉術や具体的な事例については、以下の記事でさらに詳しく解説しています。

不倫で慰謝料請求された…どう対応する?弁護士が減額・拒否の可否を解説

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2021/08/24

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内容証明が届いた後の初動|やること・やってはいけないこと

請求通知が届いたとき、感情的な対応や誤った初動が後の交渉を大幅に不利にします。

やってはいけないこと4つ

NG行動リスク
①無視する・放置する訴訟・差押えに発展。「認めた」とみなされる場合も
②感情的に謝罪・認める連絡をする証拠として使われ、支払い義務・金額が確定しやすくなる
③金額を確認せず振り込む過払い。後から取り戻すのは極めて困難
④示談書・合意書を確認せずサインする不利な条件(高額・分割不可・違約金など)を受け入れることになる

最初にすべきこと

  1. 請求書・内容証明の内容をすべて保管する(原本・封筒・消印も)
  2. 請求額と支払い期限を確認する(ただし即断しない)
  3. 弁護士に相談する(初動の方針を決める前に)

期限が記載されていても、すぐに支払う必要はありません。法的に有効な請求かどうかの確認が先決です。

示談に向けて進む段階では、示談書に盛り込むべき必須記載事項と弁護士なしのリスクを事前に把握しておくことが重要です。

不倫の示談書の作り方|記載必須の6項目・注意点・弁護士なしのリスク

コラム

2020/01/24

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ダブル不倫の慰謝料相場と交渉の実際

請求額と裁判での実際額は大きく異なる

内容証明で請求される金額は300〜500万円台が多く見受けられますが、これは「吹っ掛け」に近いケースも多いです。

状況裁判判決の相場
離婚なし・関係が短期間50〜100万円程度
離婚なし・関係が長期間(1年以上)100〜200万円程度
離婚あり200〜300万円程度
ダブル不倫(双方既婚)上記からさらに減額される傾向

ダブル不倫の場合、裁判でも「双方に帰責性がある」として相場より低く認定される傾向があります。

慰謝料の計算方法や判例をもとにした適正額の考え方については、以下の記事も参考にしてください。

不倫慰謝料の計算方法と相場:判例で知る適正額

コラム

2021/08/31

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交渉で下げるためのポイント

  • 「相手方夫婦関係の破綻」の有無を確認する
  • 相手不倫当事者の婚姻状況・慰謝料支払い状況を把握する(相殺交渉の材料)
  • 分割払いの交渉余地を探る
  • 求償権放棄条項を必ず盛り込む(後から不倫相手に求償されないよう)

自分のケースで慰謝料がいくらが妥当なのか、ケース別の相場と増減要因を以下でご確認いただけます。

不倫の慰謝料、いくらが妥当?ケース別の相場と増減要因を弁護士が解説

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2021/10/05

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四者間交渉の進め方

ダブル不倫の最終的な解決として最も合理的なのが「四者間交渉」です。

双方の不倫当事者とその配偶者、計4名が合意することで、

  • 互いに慰謝料請求しない(支払いゼロ)
  • 求償権を相互に放棄する
  • 以後の連絡・接触を禁止する

という形での完全解決が可能になります。

弁護士が入る意義

四者間交渉は当事者だけでは感情的に難しく、また合意書の法的有効性も重要です。弁護士が間に入ることで:

  • 双方の配偶者との窓口を一本化し、直接連絡を遮断できる
  • 相手方弁護士との交渉を対等に進められる
  • 合意書に「再請求不可・求償権放棄・守秘義務」を適切に盛り込める
  • 自身の配偶者に知られるリスクを最小限にしながら解決できる

万が一、慰謝料の支払いが難しい状況にある場合の対処法については、以下の記事をご覧ください。

不倫の慰謝料が払えないときは?対処法を解説

コラム

2019/10/18

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弁護士に相談するタイミング

以下のいずれかに当てはまれば、すぐに弁護士に相談することをお勧めします。

  • 内容証明・弁護士名の通知書が届いた
  • 直接電話・LINEで連絡がきている
  • 示談書・合意書にサインを求められている
  • 相手の配偶者が職場や家族に連絡してきた
  • 訴訟・調停の申立てを示唆されている

「まだ動かなくていい」という段階はありません。特に示談書へのサイン前は、必ず弁護士の確認を受けてください。

交渉がまとまらず調停・裁判に発展しそうな場合は、どちらの手続きを選ぶべきかについて以下の記事で確認しておきましょう。

不倫の慰謝料請求は調停と裁判どちらを利用すべき?弁護士が解説

コラム

2021/09/29

不倫の慰謝料請求は調停と裁判どちらを利用すべき?弁護士が解説

よくある質問

Q:お互い既婚者だったのに、なぜ慰謝料を払わないといけないのですか?

A:慰謝料請求権は「被害を受けた配偶者」固有の権利であり、相手も既婚者だったという事情は自動的に免除事由にはなりません。ただし、双方に帰責性がある点は減額要因として機能します。弁護士が交渉することで、支払い義務を否定・大幅減額できるケースも多くあります。

Q:300万円の請求が来ましたが、本当にそれだけ払わないといけませんか?

A:裁判での相場は離婚なし・短期間なら50〜100万円程度です。ダブル不倫ではさらに低く認定される傾向があります。請求額はあくまでも「要求」であり、交渉次第で大幅に下がります。まずは弁護士に相談し、金額の妥当性を確認してください。

Q:配偶者に知られずに解決できますか?

A:弁護士を通じた交渉では、直接連絡を弁護士が引き受けるため、自身の配偶者に情報が漏れるリスクを抑えられます。また合意書に守秘義務条項を盛り込む対応も可能です。

Q:内容証明を無視していたらどうなりますか?

A:無視を続けると、訴訟や仮差押えに発展する可能性があります。また「黙認した」とみなされるリスクもあります。無視は最悪の対応です。早期に弁護士に相談し、対応方針を決めてください。

Q:示談書に既にサインしてしまったのですが、取り消せますか?

A:原則として困難ですが、錯誤(重大な誤解)・強迫・不当な圧力があった場合は無効・取消しの余地があります。また内容によっては公序良俗違反として一部無効になる場合も。サイン済みでも一度弁護士に相談してください。

Q:不倫相手から求償権を行使されるリスクがあると聞きました。どうすればいいですか?

A:示談書に「求償権放棄条項」を盛り込むことで防ぐことができます。この条項がないと、慰謝料を支払った後に不倫相手から「自分の分も負担して」と請求される可能性があります。弁護士が交渉・作成する示談書では必ず確認します。

まとめ

ダブル不倫で慰謝料を請求されたとき、「お互い様では?」という感覚は正当です。ただし、法律上それは自動的に免除事由にはなりません。

  1. 支払い義務の有無は個別の事情によって異なる。自動的に払う必要はない
  2. 四者間交渉・相殺による支払いゼロ解決は現実的に可能
  3. 内容証明が届いたら、無視せず・即断せず、まず弁護士に相談

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