フォークリフト事故の労災、会社への賠償はいくら?相場を解説
2026年05月25日

工場や物流倉庫などで欠かせないフォークリフトですが、接触や転落など重大な労働災害(労災)につながる事故が後を絶ちません。フォークリフト事故の被害に遭った場合、労災保険から給付を受けることができますが、それだけでは十分な補償とは言えないケースがほとんどです。会社側に安全配慮義務違反などの責任がある場合、労災保険とは別に会社に対して損害賠償を請求できる可能性があります。本記事では、フォークリフト事故による労災で会社に請求できる賠償金の相場や手続きの流れについて詳しく解説します。
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フォークリフト事故で会社に請求できる賠償金の相場
フォークリフト事故によって負った損害について、会社にいくら賠償請求できるのかは、ケガの程度や後遺障害の有無、被害者の収入などによって大きく異なります。
賠償金の総額は「損害額の合計 – 労災保険給付額」で決まる
会社に対する損害賠償の総額は、被害者が受けた「すべての損害額」から、すでに「労災保険から給付された金額(二重取りになる部分)」を差し引いて計算されます。これを損益相殺と呼びます。ただし、労災保険からは支払われない慰謝料などは、そのまま全額を会社に請求することが可能です。
【項目別】フォークリフト事故で請求できる賠償金の内訳と相場
会社に請求できる主な賠償金の項目と相場は以下の通りです。
治療費・通院交通費など
事故によるケガの治療にかかった実費です。診察代、手術代、入院費、薬代のほか、通院にかかった交通費や、入院中の雑費も請求対象となります。
休業損害
事故によるケガの治療で仕事を休んだために得られなかった収入の補償です。「基礎収入(1日あたりの給与)×休業日数」で計算されます。
入通院慰謝料(傷害慰謝料)
ケガをして治療や入通院を余儀なくされたことに対する精神的苦痛への補償です。入通院の期間が長くなるほど金額は高くなります。
後遺障害慰謝料
治療を続けても完治せず、後遺障害が残ってしまったことに対する精神的苦痛への補償です。認定された後遺障害等級(1級〜14級)に応じて相場が決まっており、重度の障害であるほど高額になります。
逸失利益
後遺障害が残ったこと、あるいは死亡したことによって、将来得られるはずだったのに失われてしまった収入のことです。被害者の年齢や収入、後遺障害等級によって計算され、数千万円単位の高額な金額になることも珍しくありません。
【状況別】賠償金のモデルケース
具体的なイメージを持つためのモデルケースを紹介します。(※金額はあくまで目安であり、個別の事情により変動します)
ケース1:骨折で後遺障害12級が認定された場合
フォークリフトにひかれて足を骨折し、後遺障害12級が認定されたケース。入通院慰謝料が約100万円、後遺障害慰謝料が約290万円、さらに休業損害や逸失利益を含めると、総額で1,000万円前後の損害賠償額になる可能性があります。労災保険からの給付を差し引いても、会社に対して数百万円〜1,000万円規模の請求ができるケースが多いです。
ケース2:死亡事故の場合
フォークリフトの転倒に巻き込まれ死亡したケース。死亡慰謝料の相場は2,000万円〜2,800万円程度です。これに死亡逸失利益(将来稼ぐはずだった収入)などが加わるため、賠償金総額は5,000万円〜1億円を超えることも少なくありません。
そもそもフォークリフト事故は労災認定される?
業務中に起きたフォークリフト事故は、原則として労災として認定されます。労災認定されるためには、以下の2つの要件を満たす必要があります。
労災認定の2つの要件
業務遂行性:会社の支配下で業務に従事していたか
労働者が労働契約に基づき、事業主の支配下にある状態のことです。作業中はもちろん、休憩時間中であっても事業場内にいる場合などは業務遂行性が認められやすいです。
業務起因性:業務が原因で事故が発生したか
業務と事故(ケガや死亡)との間に因果関係があることです。フォークリフトの運転中や、周囲での作業中に事故に巻き込まれた場合は、業務起因性が認められます。
フォークリフト事故の典型的な発生パターン
フォークリフト事故の労災では、以下のようなパターンが多く見られます。
- 荷物やパレットの落下による激突
- 後退してきたフォークリフトとの接触・ひかれ
- 過積載やスピードの出しすぎによる横転・転落
- 無資格者による運転での操作ミス
労災保険だけでは不十分?会社に損害賠償請求すべき理由
労災保険が適用されれば治療費などは無料になりますが、それだけで損害のすべてがカバーされるわけではありません。
労災保険では慰謝料が支払われない
労災保険の給付には「慰謝料(入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料)」が含まれていません。精神的苦痛に対する補償を受けるためには、会社に対して損害賠償請求を行う必要があります。
休業損害も全額は補償されない
労災保険の休業補償給付は、特別支給金を含めても給付基礎日額の80%にとどまります。不足する残り20%の休業損害は、会社に対して請求することができる場合があります。
会社の責任を明確にし、再発防止につなげるため
会社に損害賠償を請求することは、会社側の安全管理体制の不備を指摘し、責任を明確にすることにつながります。これにより、職場環境の改善や同種事故の再発防止を促す社会的意義もあります。
会社への損害賠償請求が認められる2つの法的根拠
会社に対して損害賠償を請求するためには、会社側に法的な責任があることを証明する必要があります。主な根拠は以下の2つです。
安全配慮義務違反
労働契約法第5条により、会社は労働者が生命、身体等の安全を確保しつつ労働できるよう配慮する義務を負っています。資格のない者に運転させた、誘導員を配置していなかった、通路の確保が不十分だったなどの事情があれば、安全配慮義務違反に問われます。
使用者責任
民法第715条に基づく責任です。フォークリフトを運転していた別の従業員の過失によって事故が起きた場合、その従業員を雇用している会社も連帯して賠償責任を負います。
フォークリフト事故発生から賠償金受け取りまでの流れ
フォークリフト事故に遭ってから、会社から賠償金を受け取るまでの基本的なステップは以下の通りです。
事故直後の対応と証拠の保全
まずは治療を最優先とします。同時に、事故当時の状況を示す証拠(写真、目撃者の証言、ドライブレコーダーや防犯カメラの映像など)を可能な限り集めておくことが重要です。
労災保険の申請手続き
労働基準監督署に労災保険の給付申請を行います。治療費や休業補償などの支給を受けながら治療を継続します。
治療と症状固定、後遺障害等級認定
治療を続けてもこれ以上症状が改善しない状態(症状固定)になったら、主治医に後遺障害診断書を作成してもらい、労働基準監督署に後遺障害の等級認定を申請します。
損害額の計算と会社との示談交渉
労災保険の給付額や後遺障害等級が確定したら、慰謝料や逸失利益を含めた全体の損害額を計算します。そこから既払い分を差し引いた金額を会社側に提示し、示談交渉を行います。
交渉が不成立の場合は労働審判・訴訟へ
会社側が責任を否定したり、提示額に納得しなかったりして示談がまとまらない場合は、裁判所に労働審判を申し立てるか、民事訴訟(裁判)を起こして解決を図ります。
フォークリフト事故の賠償請求を弁護士に相談するメリット
フォークリフト事故の労災で会社に賠償請求を行う場合、早い段階で弁護士に相談することを強くおすすめします。
適正な賠償額(弁護士基準)での請求が可能になる
慰謝料などの計算には、自賠責基準、任意保険基準、弁護士(裁判)基準の3つがあります。弁護士が介入することで、最も高額で法的に適正な「弁護士基準」で計算・請求できるため、賠償金が大幅に増額する可能性が高まります。
会社との交渉や手続きの負担をすべて任せられる
ケガの治療中に、会社と直接交渉を行うことは多大な精神的ストレスを伴います。弁護士に依頼すれば、証拠収集や複雑な書類作成、会社側との示談交渉まですべて代行してくれます。
適切な後遺障害等級の認定をサポートしてもらえる
後遺障害の等級は賠償金額に直結します。労災案件に強い弁護士であれば、適正な等級を獲得するための診断書の書き方のアドバイスや、必要な検査の指示など、医学的な観点からも的確なサポートを受けることができます。
フォークリフト事故の労災と賠償に関するよくある質問(FAQ)
Q:自分がフォークリフトを操作していてミスで事故を起こした場合でも、会社に賠償請求できますか?
A:被害者ご自身の操作ミスが原因であっても、会社に賠償請求できる可能性は十分にあります。たとえば、「フォークリフトの整備不良があった」「会社が適切な安全教育を行っていなかった」「無資格での運転を指示していた」といったケースでは、会社の安全配慮義務違反が問われる可能性があります。ただし、ご自身にも過失(不注意など)がある場合は「過失相殺」となり、ご自身の過失割合に応じて請求できる賠償額が減額されるのが一般的です。
Q:派遣社員として働いていてフォークリフト事故に遭いました。派遣元と派遣先のどちらに賠償請求すればいいですか?
A:派遣社員の場合、労災保険の申請は雇用関係にある「派遣元」の会社を管轄する労働基準監督署に行います。一方で、慰謝料などの損害賠償請求については、安全配慮義務や使用者責任を負う「派遣元」と、実際に業務の指揮命令を行い、作業現場の安全管理を行う責任がある「派遣先」の双方に対して請求できる可能性があります。実務上は、事故の直接的な原因となった現場の管理責任を問うため、派遣先企業に対して賠償請求を行うケースが多く見られます。
Q:会社から「労災を使わないでほしい」「治療費は会社が払う」と言われたのですが、どうすればいいですか?
A:いわゆる「労災隠し」と呼ばれる行為であり、絶対に応じるべきではありません。業務中の事故であるにもかかわらず労災申請を行わないことは違法です。会社が直接治療費を支払うと言っても、後に後遺障害が残った場合や仕事に復帰できなくなった場合に、適切な補償や賠償金(慰謝料など)を受け取れなくなるリスクが非常に高いです。会社が手続きに協力してくれない場合でも、労働者自身で労働基準監督署に労災申請を行うことができますので、早急に労働基準監督署や弁護士に相談してください。
Q:同僚が運転するフォークリフトにひかれてケガをしました。運転していた同僚個人にも賠償請求できますか?
A:はい、事故を起こした同僚個人に対して、民法上の不法行為責任(民法第709条)に基づき損害賠償を請求することは法的に可能です。しかし、個人では高額な賠償金を支払う能力(資力)がないことが多いため、実際には同僚を雇用し、業務として運転させていた会社に対して「使用者責任」や「安全配慮義務違反」を根拠に賠償請求を行うのが一般的です。会社と個人の両方に請求することも可能ですが、二重に賠償金を受け取れるわけではありません。
まとめ
フォークリフト事故による労災は、重傷化しやすく、後遺障害や死亡に至るケースも少なくありません。労災保険の給付だけでは慰謝料などは支払われないため、安全配慮義務違反などの責任がある会社に対して適正な損害賠償を請求することが被害者やご家族の生活を守るために重要です。会社との交渉には専門的な法律知識が必要となるため、適正な賠償金を受け取るためにも、まずは労働災害に精通した弁護士に相談することをご検討ください。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。
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