著作権侵害の賠償金はどのくらい?ポイント・請求手順・対処法も徹底解説
最終更新日: 2025年01月31日
- 自分の著作権が侵害されている。請求する賠償金の額はどれくらいが妥当だろう?
- 著作権侵害を理由とした賠償請求の流れや解決方法を知りたい
- 著作権侵害を理由に賠償請求されているが、どのように対応すべきかわからない
自分の作成した記事原稿や画像が無断で転載されている場合、無断転載した相手方に損害賠償請求できる可能性があります。
著作権侵害による賠償金の額はいくらくらいなのか、気になる方も多いでしょう。
損害賠償を求めるときは、前もって著作権に関する一定の条件に該当しているかどうか、請求の手順なども確認しておく必要があります。
そこで今回は、著作権問題の解決に実績のある専門弁護士が、著作権侵害の賠償金相場、著作権侵害の賠償金を請求する流れ等について詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 著作権侵害の賠償金相場は数十万円~100万円程度だが、ケースによっては数億円に上るケースもある
- 著作権侵害の賠償金を請求する流れは、相手の特定、賠償請求の通知・交渉、調停・訴訟となる
- 著作権侵害を理由に賠償請求された場合は、速やかに専門弁護士と相談しよう
著作権侵害の賠償金相場
著作権侵害の損害賠償金額は、具体的に法令で明記されていませんが、相場は数十万円〜100万円程度です。
ただし、著作権侵害の重大性や損失・販売能力等を考慮し、賠償金額が数億円に達するケースもあります。
賠償金額は著作権侵害のケースごとに、慎重な算定が必要です。
たとえば、著作物である漫画が違法にアップロードされた場合の損害賠償金額を見てみましょう。
侵害された著作物が漫画であれば、1冊あたりの値段に複製された漫画のダウンロード数を乗じた金額が、被害者(著作権者)の損害額になります。
ただし、被害者(著作権者)の販売能力に応じた金額を超えて請求はできません(著作権法第114条第1項)。
- 漫画1冊の値段:450円
- 違法にダウンロードされた回数:50万回
- 販売能力:10万部
1冊450円×違法にダウンロードされた回数50万回=2億2,500万円
計算上は2億2,500万円が損害額になるものの、販売能力は10万部にとどまるため、
1冊450円×販売能力10万部=4,500万円
請求できる損害賠償金額は、4,500万円までとなります。
著作権侵害の賠償金を決めるポイント
そもそも侵害されたものが、保護の対象となる著作物か、保護期間を超えていないか等について、冷静に確認しましょう。
著作権侵害の要件である「著作物に該当する」「著作権の存在が認められる」「依拠性がある」「同一性または類似性がある」「利用権限の有無」、これら全てを満たす必要があります。
著作物に該当するか
著作物とは、文芸や学術、美術、音楽の範囲に属し、思想または感情を表現しており、創作性の認められるものが該当します。
具体的には次のようなものが著作物です。
- 言語:小説や論文、脚本等
- 音楽:楽曲や楽曲を伴う歌詞
- 舞踊や無言劇:日本舞踊やバレエ、ダンス等
- 美術:絵画や版画、彫刻、漫画等
- 建築:芸術的な建造物
- 地図または図形:地図や学術的な図面、模型、設計図等
- 映画:劇場用映画やテレビドラマ、ネット配信動画、ビデオソフト、ゲームソフト等
- 写真
- プログラム
- 二次的なものや編集、データベース
著作権の存在が認められるか
著作権の保護期間は、著作権者が原則として死亡や公表・創作した年の翌年1月1日から70年間です。
外国人が創作した著作物の保護期間も基本的に70年間ですが、当該外国人の母国が日本より保護期間を短く設定している場合、その短い期間が保護期間となります(相互主義)。
たとえば、外国人の母国が保護期間を50年と設定している場合は、日本での保護期間も50年です。
依拠性があるか
既存の著作物を参考に創作したことが、著作権侵害の要件の1つとなります。
他者が独自で創作し、たまたま自分の著作物と内容が類似していても、著作権侵害には該当しません。
裁判では、双方の著作物の実質的同一性が認められるか、既存の著作物を知る機会があったかどうかなどで、依拠性があるか否かを判断します。
同一性または類似性があるか
双方の著作物の表現上、下記のような部分が同一または類似していると、著作権侵害の要件に該当します。
著作権が侵害されたとする著作物をA、著作権を侵害したと疑われている著作物をBとして、次の判断基準にあてはめてみましょう。
- BにAと同一性のある部分が認められるか
- 同一性のある部分がBの創作的表現か否か
- Aが表現している本質的な特徴を、Bから直接つかみとれるか
- Aの創作性の部分をBにどの程度取り入れているか、取り入れたAの特徴部分をBから直接つかみとれるか
AとBには同一性のある部分や類似性も目立ち、BはAを模倣したものだと解される場合、本件を満たします。
利用権限があるか
無断で著作物を掲載していた場合等は、著作権侵害の要件に該当します。
著作物の掲載等を行った個人(法人)に著作物利用の権限があって、著作権者の許諾を得ていたときは、著作権侵害にはあたりません。
著作権侵害を主張する側は、契約書等を確認し、要件を満たしているか否かについて、慎重に判断する必要があります。
著作権侵害の賠償金を請求する流れ
著作権侵害を発見し、侵害した相手に損害賠償請求を行うためには、相手の特定が必要です。
相手が特定できれば、いきなり調停・訴訟の手続きを行うことも可能ですが、通常、内容証明郵便による賠償請求の通知をしたうえで、交渉から進めていきます。
相手の特定
著作権侵害をした相手を特定できなければ、損害賠償請求はできません。
ネット上で著作権侵害をみつけたときは、速やかに「発信者情報開示請求(プロバイダ責任制限法第5条)」または「発信者情報開示命令(同法第8条)」の手続きを進めましょう。
それぞれの手続き方法は、次の通りです。
- 発信者情報開示請求:著作物を無断で掲載しているサイトの運営者に対して、侵害した相手に関係するIPアドレスの任意開示請求を行う。IPアドレス情報の開示でプロバイダが判明するので、裁判所に「発信者情報開示請求訴訟」を提起し、プロバイダに相手の個人情報開示を求める。
- 発信者情報開示命令:裁判所に個人情報開示を申し立てる。裁判所を通して、著作物を無断で掲載しているサイトの運営者・プロバイダに、まとめて相手の個人情報開示を求める。
発信者情報開示命令の方が直接裁判所に対して申し立て、開示手続きを進められるので、簡易・迅速に相手の特定ができます。
情報開示が認められると、相手の情報を管理するプロバイダから、相手の個人情報(氏名・住所・電話番号・メールアドレス等)が得られます。
内容証明郵便
発信者情報開示請求・命令で相手を特定できたときは、損害賠償請求の通知を行いましょう。通知書には次のような内容を記載します。
- 著作権侵害の内容
- すでに侵害者(相手)の個人情報を特定している旨
- 慰謝料を請求する旨、請求金額
- 話し合いを持ちたい旨
- 期限内に返答がなければ法的措置をとる旨
通知は「内容証明郵便」にした方がよいです。内容証明郵便によって相手に対し賠償金支払いや交渉の強制はできませんが、損害賠償請求や交渉を申し出た証明になります。また、相手に心理的なプレッシャーを与える効果も得られるでしょう。
著作権侵害を行った相手は、法的措置をおそれて交渉に応じる可能性があります。
交渉
示談交渉の成立を目指しましょう。話し合いで和解できれば、裁判手続きを進める必要はありません。
示談では、相手に著作権侵害を謝罪させ、二度と侵害しないと誓わせる、著作権を侵害している画像や動画等の削除、賠償金(示談金)の額や支払い方法・期限を取り決めます。
示談の合意ができたときは、示談書(合意書)を2通作成し、示談当事者が1通ずつ大切に保管しておきましょう。
合意内容を書面化しておけば、当事者が示談内容を忘れるおそれもありません。
調停・訴訟
示談交渉が不成立の場合は、裁判所に場所を移し調停で解決を目指しましょう。調停では、裁判官と調停委員が仲立ちして当事者の和解を図っていきます。
調停ではなく、いきなり損害賠償請求訴訟を提起して賠償金の支払いを求めることも可能です。
訴訟では著作権侵害をされた側が原告、著作権侵害をした相手が被告となり、著作権侵害に関する主張・立証を行います。
裁判官が原告・被告の意見・証拠等を考慮し、賠償金の支払いを認めるか否かの判決を言い渡します。
著作権侵害で賠償金を請求されたらすべきこと
著作権侵害で賠償金を請求された側も、請求内容を冷静に確認し、今後の対応を検討しましょう。
速やかに弁護士と相談し、有益なアドバイスやサポートを得た方がよいです。
請求内容の確認
損害賠償請求の通知内容をしっかり確認しましょう。
請求した側に、著作権侵害を行った事実の誤りや勘違いがないか、賠償金額が法外に高いかどうかを判断します。
著作権侵害をした事実がなければ、請求した側へ明確に反論しましょう。請求に対し何らの返答もしない、無視し続ける姿勢は、調停や裁判で不利な立場になる可能性もあるため避けた方がよいです。
損害発生の確認
著作権侵害により、損害が発生しているかどうかを確認しましょう。
著作権を侵害した事実が認められても、損害が発生していなければ損害賠償請求に応じる必要はありません。
そのため、請求された賠償金額に相当する損害が、実際に発生したのかどうかを把握します。
減額交渉
賠償金を請求した側の金額が、実際の損害発生に見合わないほど高額だった場合、減額交渉を行いましょう。
賠償金を請求された側も、適正な金額を算定して請求した側に提示します。
賠償金を請求された本人が減額交渉するより、弁護士を交渉役に立てて、交渉を進めた方が円滑な解決を図れるでしょう。
弁護士に依頼すれば、損害に見合った賠償金額を正確に算定するので、説得力のある減額交渉が行えます。
弁護士への相談
自分の力だけでは賠償金を請求した側との和解交渉が難しいと判断したときは、早く弁護士と相談しましょう。
弁護士は相談者の事情を聴き、次のようなアドバイスを行います。
- 相談者の行為が著作権侵害にあたるか
- 適正な賠償金額の算定
- 賠償金を請求した側との減額交渉のポイント
- 示談で問題を解決する必要性
- 示談不成立の場合の対応
相談をしている間に「この弁護士なら代理人として依頼できる」と思ったときは、弁護士に委任してもよいでしょう。
弁護士は代理人として賠償金を請求した側と粘り強く交渉し、和解に向けて全力を尽くします。
著作権侵害の賠償金を減額交渉するときのポイント
賠償金を請求した側との減額交渉に臨む場合、前もって減額できる状況であるか否かを確認しましょう。
減額できる根拠があれば、請求した側が同意する可能性があります。
著作物性が認められるか
「著作物性」の有無がポイントになります。たとえ他人の原稿記事や画像・動画を無断転載しても、著作物性が認められないときは、著作権侵害に該当しません。
著作物性が認められるためには、原稿記事や画像・動画等の表現に、表現した人の個性があらわれている必要があります。
個性を感じないありふれた表現であれば、著作物性が認められない可能性があります。
無断転載した部分についてオリジナリティが低い点を指摘し、賠償金の減額交渉や、支払いそのものを拒否する主張も可能です。
損害が発生しているか
著作権侵害により、損害が発生しているかどうかを確認しましょう。
損害が発生していなければ、そもそも損害賠償請求は認められません。
また、賠償金を請求した側の提示金額が、実際の損害と比べて高額であれば、適正な金額を算定し減額の交渉が可能です。
過失があるか
著作権侵害に関して無過失であった場合、損害賠償責任を負う必要はありません。
損害賠償請求ができるのは、故意(わざと)または過失(不注意)により、著作権を侵害した場合です。
たとえば、自社のWebサイトの制作を外部に委託したとき、委託先の会社が他社の著作権がある漫画やアニメを無断転載してしまったケースを考えてみましょう。
この場合は、委託先による無断転載の事実を自社が全く知らなかったのであれば、自社ではなく委託先に損害賠償請求をするよう主張できます。
著作権侵害の賠償金でお困りなら弁護士にご相談を
今回は多くの著作権問題の解決に尽力してきた専門弁護士が、著作権侵害の賠償金相場や算定のポイント等について詳しく解説しました。
著作権侵害が判明したときは、大きな損害を被らないうちに弁護士と相談し、今後の対応を協議しましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。