築40年のアパートで立ち退き問題!ポイントを専門弁護士が解説

最終更新日: 2023年11月28日

築40年のアパートで立ち退き問題!ポイントを専門弁護士が解説

  • 築40年のアパートでも立ち退き料は必要になるのか?
  • 立ち退き交渉を行う時のポイントを押さえておきたい
  • 立ち退き交渉が難航した時にはどうすればいいのだろう?

現在の耐震基準(震度6〜7程度の地震で倒壊しない)は1981年6月1日に以降に適用されており、それ以前に建築確認を受けた建物は旧耐震基準(震度5強でも倒壊しない)に該当します。また、法定耐用年数は、木造22年、軽量鉄骨造19年です。

築40年のアパートは旧耐震基準に該当しています。

また、法定耐用年数を過ぎた古いアパートは入居希望者が集まりにくい場合もあり、可能であれば建て替えを検討したいと考える大家も多いのが実際です。ただし、建て替えには住民の立ち退きが必要になります。

そこで今回は、多くの立ち退き交渉を解決に導いてきた実績のある専門弁護士が、立ち退き料の相場や、大家と住民双方の側における立ち退き交渉のポイントなどについて解説していきます。

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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築40年のアパートでも立ち退き料は必要

立ち退きには、借地借家法に基づき契約期間満了の1年前から6ヶ月前までの間に更新拒絶通知をすることが必要です。また、法律で定まられてはいませんが、立ち退き料を払うことが通例です。このことは、築40年のアパートにおいても変わりません。ここでは、立ち退き料の相場と立ち退き料に含まれる費用を紹介します。

立ち退き料の相場

立ち退き料は、法律で計算式が明確に定められているわけではなく大家と住民との交渉で決定されます。

大家の立場では住民一人当たりの立ち退き料を抑えたいところですが、大家の一方的都合で退去に協力する住民の負担を考えると、引越し代などの経済的負担を全額補填できるだけの金額ほどは必要になります。

アパートの立退料は概ね100万円から200万円ほどが相場と言ってよいでしょう。

立ち退き料に含まれる費用

立ち退き料には、主に以下の3つの費用が含まれます。

  • 新居の費用
  • 退去し新居に移り住む費用。礼金、1ヶ月分の家賃、仲介手数料、火災保険など。

  • 引っ越し費用
  • 新居への引っ越し費用。荷物の量や引っ越し先への距離によって異なってくる。

  • 家賃差額
  • 現在の家賃と新規家賃との差額(1年分から3年分ほど)

また、6ヶ月以内の急な立ち退きを依頼するなど、立ち退きの理由によっては迷惑料・慰謝料を上乗せする場合もあります。さらに、住民が立ち退き料の金額根拠を資料にまとめて、住民が納得できるように提示するなどの準備をして交渉すると良いでしょう。

築40年のアパートで立ち退き交渉をスムーズに行う大家側のポイント

住民と立ち退き交渉を行うには、事前通告と立ち退き料が必要になりますが、立ち退き交渉をスムーズに行うには他にもポイントがあります。ここでは、立ち退き交渉をスムーズに行うポイントを3つ紹介します。

  • 立ち退き理由の明確化
  • 引っ越し先の情報を提供
  • 長く立ち退き期間を確保

立ち退き理由の明確化

日本では、賃貸借契約では住民に有利な法律になっています。そのため、住民の納得が得られない時には大家の意向で立ち退きを実現することはできません。

そのため、アパートの耐震性能が低いため建て替えを行うなど、立ち退き理由を明確化して納得いく理由を住民に示した上で立ち退き交渉を行う必要があります。これを疎かにして、住民が納得しないと立ち退き交渉は難航します。

また、立ち退きに応じた住民には立ち退き料の支払いや後述するサポートも行うことも説明すると、より立ち退き交渉がスムーズに行えることでしょう。

引っ越し先の情報を提供

住民にとっては、立ち退きを行った後に住む場所も不安要素になります。その不安を解消するには、引越し先の情報を提供することが大切です。

この時、住民が現在のアパートの近所で同等の賃貸条件の新居を見つけられるかがポイントになります。

住民が問題なく引越し先を決定できるよう、立ち退き交渉に入る前に不動産会社に相談しておくと良いでしょう。

長く立ち退き期間を確保

1年など、ある程度長く立ち退き期間を確保することで、住民は余裕を持って新居を探せます。また、他の手続きも余裕を持って行えるので、住民に余計なストレスを与えずに済みます。

立ち退きは住民に大きな負担になりますが、大家が丁寧な対応をすることでスムーズな立ち退きを期待できます。

築40年のアパートの立ち退き交渉で住民側が押さえておくべきポイント

ここでは、住民側が立ち退き交渉を有利に進めるために押さえておくべきポイントを2つ紹介します。

立ち退き料を貰うことは一般的

法律で定められていないものの、大家の都合で立ち退き交渉をされた時には、立ち退きする時に立ち退き料を貰うことは一般的です。今まで大家と良好な関係を築いていたとしても、遠慮は必要ありません。

大家側の都合で転居を強いられるのですから、正当な補償と考えましょう。

これまでに契約違反をしていると不利

立ち退きする時に立ち退き料を貰うことは一般的ですが、これまで賃貸借契約の違反をしていると立ち退き交渉で不利になります。

例えば、ペットの飼育が禁止されている物件でペットを無断で飼育していたことや、家賃の滞納などが該当します。

これらの賃貸借契約の違反があると交渉にはマイナスで、契約違反がなかった場合よりも立ち退き料を安く抑えられるだけでなく、最悪の場合は立ち退き料を貰えず契約解消される恐れもあります。

築40年のアパートで立ち退き交渉が難航した時の大家側の対処方法

先ほど大家がスムーズに立ち退き交渉を行うポイントを紹介しましたが、立ち退き交渉がいつもスムーズに進むとは限りません。ここでは、立ち退き交渉が難航した時の対処方法を紹介します。

住民が立ち退きに非協力的な時

住民が立ち退きに非協力的な時でも、立ち退き交渉が長引いて期限内に立ち退きして貰えなければ面倒なことになります。

そのため、立ち退き料を上乗せしてでも早期の立ち退きを目指すことが賢明です。ただし、立ち退き料を上乗せする時は他言無用としましょう。もし他言した時には立ち退き料を支払わない、返金してもらう旨を記した覚書を交わしておくと安心です。

住民が居座った時

立ち退き料を提示しても住民が退去してくれない時には、法的手続に進む必要があります。以下にその流れを紹介します。

契約更新しない旨の通知

立ち退きしてもらうには、期限の6か月前までに住民に対して契約更新しない旨の通知を行う必要があります。これをしないと、法定更新が成立してしまい、従来の契約と同じ条件で更新したとみなされます(ただし、賃貸借の期間についてのみ、「期限の定めのない契約」となります。)。

裁判所に提訴

専門家と相談し、立ち退きにおける正当事由の有無を判断してもらいましょう。正当事由がない状態で住民に立ち退きを要求することは困難です。ただ、正当事由があっても、大家から住民を直接立ち退かせることはできません。

交渉を重ねても、どうしても住民が退去してくれない時は裁判所に提訴することになります。裁判所で勝訴した場合は判決に基づいた強制執行が可能になります。

提訴は、アパートのある住所を管轄する裁判所か、賃貸借契約書に記載のある管轄裁判所で行います。

裁判・強制執行

裁判期日に原告=大家と、被告=住民が裁判所に出廷します。ここで、いつ住民が立ち退くか話し合いが行われます。この時、裁判所を交えた話し合いでも決着がつかなければ裁判所が判決を下します。

また、被告が裁判所に出廷せず答弁書の提出もなければ、原告の主張が全面的に認めまれます。

裁判の後、和解した場合は和解調書が、裁判所の判決が下された場合は確定判決が作成されます。これをもって、住民が期日までに退去しなければ強制執行が可能になります。強制執行を行うには、まず裁判所に強制執行の申立を行います。強制執行の申立てが適法になされれば、いかに賃借人が退去を拒否したとしても、強制的に賃借人を建物から退去させるための明渡しの断行手続きが行われることになります 。

断行日当日は、裁判所の執行官と荷物を運び出す業者が現地に入り、部屋から住民と荷物を外に出します。その後に鍵を交換して強制執行が完了します。なお、強制執行によって運び出された荷物は裁判所によって暫く保管されます。

築40年アパートの住民が立ち退き料を少しでも多く貰うには

ここでは、住民が立ち退き料を少しでも多く貰うために気をつけるべきポイントを2つ紹介します。少しでもわからないことがあったら、弁護士に相談をすることをお勧めします。

安易に契約書にサインしない

例えば、立ち退きを見据えて、更新時に普通借家から定期借家への切り替えなど大家から契約内容の変更を事前に相談されるケースもあります。この場合に限らず、立ち退く住民にとって不利な内容が書かれていても、安易に契約書にサインすると立ち退き料がもらえなくなる恐れがあります。

そのため、書面の内容は十分に確認し、安易に契約書にサインしないようにしましょう。なお、契約書で押さえるべきポイントについては、以下の記事をご覧ください。

弁護士に相談する

立ち退き問題に精通している弁護士に相談しましょう。立ち退き問題のプロに任せた方が、機会損失を出さずに済む可能性が高まります。

例えば、大家が立ち退きの「正当事由」と主張する事由を弁護士に精査して貰ったり、過去の裁判例などを基に具体的な立ち退き料を提案して貰ったりできるため、立ち退き交渉を有利に進められます。

また、住民だけで交渉するよりも弁護士をつけた方が、大家は足元を見て交渉しづらくなるものです。さらに、引越し先の確保や資金繰りなど、住民だけでは気づかない落とし穴にも気づいてアドバイスしてくれます。

弁護士に依頼するには高い費用が必要なイメージがあるかもしれませんが、弁護士に依頼することで立ち退き交渉を有利に進めて、結果的により多くの立ち退き料を貰うことができれば、経済的にもメリットのある選択肢になることでしょう。

まとめ

今回は、立ち退き料の相場や、大家と住民双方の側における立ち退き交渉のポイントなどについて解説してきました。立ち退き交渉を行う時には、大家側も住民側もお互いの考えを理解することでスムーズに交渉が進むことでしょう。

立ち退き料は法律で定められていませんが、住民の立場を考えると支払うことが必要です。住民が納得できる根拠に基づき立ち退き料を算出しましょう。

また、立ち退きの正当事由の判断や立ち退き交渉は、大家や住民だけではなかなかうまくいかないものです。少しでも疑問に感じることがありましたら、一度専門の弁護士に相談してください。

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